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彼岸まで  作者: 若松ユウ
七両目「色欲と肉欲の国~A country of lust~」
32/33

#031「めでたし、めでたし」

@香澳島中央駅

小華「それで、大事な話は?」

中狼「それなんだけどさ。コホン。一度しか言わないから、よく聴けよ。いつもみたいに、聞き流すんじゃないぞ。良いな?」

小華「良いわ。覚悟は出来てるから」

中狼「言うぞ。――俺、いや。私、中狼は、小華のことを心より愛し、生涯をかけて幸せにすると誓います。一生のお願いです。結婚してください」

中狼、小華に片手を差し出す。

小華「わたくし、小華も、中狼のことを誰よりも深く愛し、一生を共にすることを約束します。結婚しましょう」

小華、中狼の両手で手を取り、強く握る。

中狼、反対の手を添え、激しく上下に降る。

中狼「ありがとう、小華」

小華「ありがとう、中狼」

紅月・白龍、物陰から拍手をしながら登場。

紅月「二人とも、よく言ったわ。最高よ」

白龍「ウム、ウム。若き血潮の息吹とは、何と素晴らしきものかな」

中狼「ゲッ。二人とも、見てたのかよ」

小華「ちっとも気付かなかったわ」

紅月「透明化魔法よ。物音を立てないよう、細心の注意を払ってたの。ねっ、白さん」

白龍「スマンのぉ。少年少女期の終焉。それに相応しい華々しいフィナーレを飾るには、恋の成就と愛の成立が必要じゃと思ってのぉ。真名で誓約し、それを許諾すれば、お互いに堅い契りに結ばれるんじゃぞ。良いな? 言霊の力は強いからのぉ」

中狼「何だよ。好意は見透かされてたのか」

小華「恥ずかしいわ。思いを寄せていることを見抜かれてたなんて」

紅月「隠し事は出来ないよ。魔女は全てお見通しなのさ。タロットにしても筮竹にしても、どんな占いをしても結果が一致してたんだもの。確信するなというほうが無理だわ。まっ、モリーに頼んで、裏付けも取ってあったけど」

白龍「それより二人とも、今日が何の日か覚えておるかのぉ?」

中狼「今日って、何か特別な日だっけ?」

小華「昨日から占いのことで頭がいっぱいだったから、急に言われても分からないわ」

紅月「そんなところだろうと思ったわ。今日は二人の、十六歳の誕生日よ」

白龍「あくまでも、戸籍に届け出た日付に過ぎないがのぉ。しかし、これで二人も、結婚・参政の権利と、勤労・納税の義務を得た訳じゃ。成人としての自覚を持たねばならんぞ」

中狼「ウヘェ。もう、大人の仲間入りなんだな」

小華「そうね。責任重大ね。――あっ、でも。大人になったのなら、お酒や煙草も解禁よね?」

紅月「もちろんよ。そのために、ワインを貰ってくるように頼んだんじゃない。そうそう、お赤飯も炊いてあるの」

白龍「祝盃に祝宴という訳じゃよ。ホホッ。酒精は、度が過ぎれば毒になるが、嗜む程度なら薬になるからのぉ」

中狼「ヤッタァ」

小華「それを聞いたら、急にお腹が空いてきちゃったわ」

白龍「食欲があるとは、五体健康である証拠じゃな」

紅月「でも、その前に。二人に渡すものがあるの。この前、血液採取に協力してもらったから、それを有効活用して、ちょっとした贈り物を作ったの。左手を出して」

中狼「また、痛い思いをするのは勘弁だぜ?」

小華「わたしも、それは遠慮したいわ」

紅月「違うわよ。いいから、左手を出しなさい」

小華・中狼、おそるおそる左手を差し出す。

紅月、二人に指輪を授ける。

中狼「ワァ、凄い。金色だ」

小華「わたしのは、深い紺色だわ」

紅月「どっちも元は無色透明の鉱石だったのよ、それ。術式と共に数滴垂らしたら、それぞれの瞳の色に変化したの。希少なものだから、失くさないように、大事にしなさいよ」

白龍「それぞれ、琥珀と瑠璃に錬成されたようじゃのぉ。すこぶる美麗じゃ」

中狼「ありがとうございます、紅さん」

小華「大切にするわ」

紅月「指輪だけじゃなくて、お互いのことも大事にするのよ。まぁ、狼は生涯ツガイを変えないっていうから、浮気の心配は不要そうね」

白龍「ホホッ。ミドルくんは勇敢な子じゃし、リトルくんは素直な子じゃから将来安泰じゃな。ハァ。肩の荷が降りた、好い気分じゃわい」


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