表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼岸まで  作者: 若松ユウ
七両目「色欲と肉欲の国~A country of lust~」
31/33

#030「吊り橋理論」

@エゼナビ

中狼「揺れる舟は平気なくせに、揺れる橋は駄目なんだな」

小華「揺れる舟は駄目なのに、揺れる橋は平気なのね」

中狼「ホラ。通行の妨げになるから、しっかり立てよ」

小華「待って。まだ、心の準備が。――ヒャッ」

中狼、小華を抱っこ。

中狼「アァア、届ける荷物が増えてしまったな」

小華「降ろしてよ、中中」

中狼「俺が、どれだけ待たされたと思ってるんだよ、小小。もう、我慢できない。ただでさえ、遠回りをしてるんだ。これ以上足止めを食らったら、汽車の出発に間に合わなくなるぞ」

小華「歩くのが早いわ。キャア」

中狼「怖いなら、目を瞑ってシッカリ掴まっとけ、小小。俺は平気だから」

小華「中中。ありがとう。(役に立たないときもあるけど、ここ一番では頼りになるわね。男の子だわ)」

中狼「どういたしまして。(こんなに怯える小小を見るのは、初めてだな。生意気な憎まれ口を叩いてても、やっぱり女の子なんだな)」

  *

@法国中央駅

小華「空いてて良かったわね」

中狼「あぁ。これなら、何とか夕飯に間に合いそうだな」

小華「あのね」中狼「あのさ」

中狼「小小から言えよ」

小華「わたしは良いの。中中から、どうぞ」

中狼「そうか。……なぁ、小小。俺から小小に、大事な話があるんだ。帰ったら、時間をくれないか?」

小華「奇遇ね。わたしも、中中に伝えたいことがあるの。帰ったら言うわ」

中狼「そっか。――それじゃあ、ひと休みさせてもらおうかな。弱虫な誰かさんのせいで、肩と腕がパンパンだからな」

小華「もぅ。駅に着いても起こしてあげないわよ? (お疲れさま、中中)」

中狼「そこまで熟睡するかよ。(何で、こういうことを言ってしまうかな、俺って奴は)」

  *

@香澳島中央駅

駅員「長旅、お疲れさまでございました。終点、香澳島中央駅、到着でございます」

売り子「月餅ひとつ、いかがっすかぁ」

小華「アッ」

中狼「ビックリした。急に大きな声を出して、どうした?」

小華「ソルティーさんの息子さんが誰か分かったのよ」

中狼「ソルティーさん?」

小華「そっか。中中は寝てたわね。舟乗りのおじさんのことよ」

中狼「ホォ。あのオジサン、子供が居たんだな。それで、誰なんだ?」

小華「あの駅員さんと、向こうの売り子さんよ」

中狼「ウゥン。全然、似てることが無さそうだけど」

小華「見た目じゃないの。構内アナウンスと呼び込みの声に、よく耳を澄ませて」

駅員「車掌が検札した乗車券と手荷物は、めいめいにお持ちください」

売り子「肉饅頭もありますよぉ」

中狼「本当だ。どことなく、あの歌声に似てる」

小華「わたし、ソルティーさんからの言付かってることがあるの。二人に伝えてなくっちゃ」

中狼「待てよ、小小。俺も連れて行け」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ