#009「猫屋敷」
@エドワード邸
夫人「一晩、アルコールを滲みこませたガーゼで応急処置したけど、何とか腫れは引いたようね」
小華「ごめんなさい。取り乱しました」
中狼「エドワードさんも」
エドワード「私は、すぐに避けたから平気さ。そもそも、カジノ行きと提案したのは、この私だからね」
夫人「そうね。それに、あたしも、ちょっとばかりミドルくんを調子に乗せすぎたわ」
小華「いいえ。勝手に調子付いた中中がいけないんです」
中狼「えぇえぇ、ツキに乗じましたとも。だからって、いきなり平手打ちすることは無いだろう、小小?」
エドワード「まぁ、まぁ。リトルちゃんは、ミドルくんがビギナーズラックに浮かれてるから、負けが嵩んで擦られないうちに目を覚まそうとしたんだ」
夫人「ちょうど良い社会勉強になったんではなくて?」
小華「はい。すごく勉強になりました」
中狼「手痛いオマケが付いてきたけどな」
エドワード「ハッハッハ。賭け事というのは、続けるほど胴元が勝つように細工されているというのが、身を以って理解できたようだね」
夫人「胴元が儲からなきゃ、あんな豪奢な施設は維持できないわ。そうそう。あの建物の中では、ちっとも疲れたり眠くなったりしなかったでしょう?」
小華「言われてみれば」
中狼「結構、長時間いたのに、全然そう感じなかった」
エドワード「それにも、れっきとしたカラクリがあってね」
夫人「建物全体が高濃度エーテルで満たされてるの」
小華「エエッ」
中狼「そんなことしてるのか」
エドワード「大事なことだから、繰り返すよ。いいかい? ズルイ大人にとって、何も知らない旅人は、絶好のピジョットなんだ。上辺の華やかさに騙されないようにしないと、底無しの闇に誘い込まれ、二度と光を見られなくなるんだ」
夫人「甘い言葉を囁く人には、気をつけなさいね」
小華「はい」
中狼「心得ます」
エドワード「よぉし。それでは、駅まで送ろう」
*
@美国中央駅
小華「お世話になりました」
中狼「ありがとうございます」
エドワード「瓶を割らないように気をつけて。また遊びにいらっしゃい。歓迎するよ」
駅員「発車いたします。窓をお閉めください。お見送りのかたは、列車からお離れください」
*
@エドワード邸
夫人「無事、見送れたみたいね」
エドワード「あぁ。それにしても、最後まで尻尾を出さなかったな、あの二人」
夫人「フフッ。それは、あたしたちも同じじゃありませんか。猫又さん」
エドワード「そうですね、化け猫さん」




