#000「ようこそ、裏地球へ」
@香澳島中央駅
――諸君、お初にお目にかかる。ワシの名前は白龍。この島の守り神をしておる竜王じゃ。普段は、この逓信局の局長をしておる。
と、申したところで、諸君にはピンと来ないじゃろうから、この島の概要を説明していこうかの。
この島の名は香澳島。諸君の住む地球とやらで例えるなら、香港と澳門を足して二で割ったような一国二制度の島国じゃ。地理的条件も、諸君らの地球と酷似しておるが、人外生物が闊歩し、魔法と科学が混沌と渦巻いておるところが大きな違いじゃろうな。一言で申せば、何でもござれのローファンタジー世界じゃ。
さて。それでここはどこなのかと申せば、島のほぼ中央部に位置する香澳島中央駅じゃ。何のひねりも無いネーミングじゃな。はやり言葉を使えば、シンプル・イズ・ベストという奴じゃ。
駅舎は大きなドーム状で、内側は蒸気機関で常春状態になっておる。そのお陰で、年中快適に過ごすことが出来るようになった。いやはや。長生きはするものじゃな。至れり、尽くせり。極楽、極楽。
ウォッホン。何の話じゃったかな? そうそう、駅の説明の途中じゃったな。あだしごとは、さておき。駅と線路の配置を説明しよう。ちょいと頭の中にコンパスを思い描いてほしい。断っておくが、ぶん回しや分度器のことではないぞ? 方位磁針、羅針盤のことじゃ。
イメージ出来たかの? それでは説明に移ろう。
いま、ワシがいるのは駅の中心部にある塔。コンパスの例えで申せば、針を乗せる支柱に該当する部分じゃ。ここには、島の様々な機関が集約されておる、らしい。
ん、何じゃ? 仮にも島の守り神でありながら、らしいとは何かという目じゃな。そう責めるでない。この島には、数多の生き物が、日がな夜がな往来しておるんじゃぞ? ワシの千里眼をもってしても、すべてを把握し切れんわい。アァア。歳を取りたくないものじゃの。
ウム。話を戻そう。それで線路じゃが、この塔を中心にして放射状に並んでおる。そして、塔に接する形で車止めがあり、線路の両側にホームがある。東が一号線、南東が二号線。以下、北の七号線まで続くという次第じゃ。線路は、そのまま島の外に向かって真っ直ぐに伸びており、それぞれ、七本の橋で大陸に接続しておる。
と、ここまで申せば、勘の良い諸君のこと。鬼門にあたる北東に駅と線路が無いことに気が付くじゃろう。別に、この方位に大陸が無い訳ではないんじゃ。何度も橋を架けようとしては不吉な事故が起こるものじゃから、いまだもって船便が往復しておる。その事故の原因じゃが。
中狼「配達、終わったぜ、老師。だが、要らない荷物が付いて来た」
小華「誰が荷物よ、失礼ね。こんにちは、老師」
白龍「ご苦労、ミドルくん。リトルくん、ようこそ。まぁ、あがりなさい」
――これは先に、二人の説明をした方が良さそうじゃな。