クラス復讐
前回の異世界無双物語を完結済みにして、俺は新しい小説を書いていた。
やはり自分の書きたいものを書かなければ、感想一つで壊れてしまう程、脆いものが出来て当たり前だ。
俺は今『イジメられてえいた生徒が能力を得て、復讐する』という話を書いている。今、三部まで書いて、ブックマークが10。
中々、言い切りだしである。
これが書いていて、楽しい。三部までの内容は、能力を得て、四部から復讐の始まりだ。
「これ、書籍化いっちゃんじゃないの?」
そんな期待を抱いた。だって、三部でブクマが10だぜ? 7も多いんだぜ?
「では、四部といきますか」
まだ書き途中の四部を開く。瞬間、途轍もない眠気に襲われた。
「ハッ」
「おいおい、喋る猿、起きたぜ。息、くさ」
「へへ、お前の汚い寝顔、クラスの皆で鑑賞したんだぞ」
知らない奴らが俺の顔を覗き込んでいる。
「は? お前ら誰だよ?」
見慣れない光景に俺はつい、そんな口を利いてしまった。
「は? 何、すっ呆けちゃってんの?」
「頭、おかしくなったんじゃねえの?」
眼鏡を掛けた出っ歯が、俺の頭をノックした。舌先三寸という言葉を具現化したような顔だ。
「おい、殺すぞ。コラ」
覗き込む人の中でも、特に大きい図体の奴が前に出た。
「有野さんやっちゃって下さいよ」
有野?
「おらッ」
瞬間、俺の頬に激痛が走った。
「いってぇ」
俺は椅子から落ちて、地面と密着した。
「お前はそこがお似合いだよ」
「有野さん。やっぱ強え」
何だよ、こいつら。
状況を見るからに、ここは教室らしい。しかし、俺が通っている高校でないことは確かである。風景も違うし、まずこんな奴ら知らない。
「なんだよ。その顔、むかつくんだよ」
「おらッ。死ねよ、おらッ」
次は違う奴が、俺のことを蹴った。
「いて! 痛いって!」
「今日はやけに喋るな。お前。流石に喋る猿」
喋る猿? どこかで聞いたような。
「やめろって! いた! 痛いって!」
「何だ。お前、口答えかよ」
有野――とかいう奴が俺の髪の毛を掴んで持ち上げる。
「ていうか、今日のそいつ生意気じゃね?」
「有野殺していいよ。そいつ」
「マジぶっこだよね。そいつキャハハハ」
女子の声が三人分聞こえてきた。
なんだよこいつら。何? ここ何処だよ。
「オラァ!」
また頬に激痛が走る。
「お前、五十万な。明日まで五十万。持ってこねえと、てめえの薄汚い母親殺すからな」
「母親? 俺、母親と父親、仕事で世界行ってて居ないけど・・・」
「おい、お前の小さな脳味噌でももうちょっとまともな嘘言えるだろ。ねえ、有野さん」
「っざけたこと言ってんじゃねえぞ! ッらぁ!」
「うげぇ!」
今度は腹を殴られた。やばい、何か色々、出て来そう。
「こいつ吐くんじゃね?」
「うわっ。マジないわ。汚っね」
「早く死ねよ」
先程から妙に引っ掛かっていた。
まさか――俺の小説の中?
前の異世界転生の時も――あれは夢じゃなかったのか。
この光景に似た光景を三回ぐらい書いた気がする。そして四部もこの光景を書こうとしていた。
そして、此処で三部で授かった能力でこいつらを懲らしめるのである。
「なんだよ。その目。挑発的だな! こら!」
有野の眼力半端ねえ。怖え。
「やっぱ六十万な。持ってこいよ! 六十万」
よし。ここは俺の小説だ。
有野って言うキャラも居る。そしてこのデジャヴ。
ならば。ここで異能が出せるはずだ。
「っせえな。耳元でよ。喋るゴリラ」
言った瞬間、ぷつりと何かが切れた音がした。刹那、轟くガシャンと言う音。
どうやら有野が机を蹴ったらしい。
俺の髪の毛を掴む手を強めて、前後に揺らした。
「てめぇ! 今、なんつった!」
「そんな青筋たてんなよ」
後方にいる有野の友達は戦慄した顔で見ていた。確かこいつら雑魚は有野にイジめられていたが、標的を俺に仕向けた――という設定だったっけ。
有野は俺の髪の毛を掴んだまま、怒鳴る。
「ッッてめえ」
完全にキレているようである。クラスの皆もどうしたらいいか分からずに、黙って状況を見ている。
「っざっけんじゃねえって! おら! 減らず口叩いてみろや! コラァ!」
何故、他のクラスの生徒や先生は入ってこないのだろう。まあ、そこは小説だからな。
俺はちょんと、有野の胸を人差し指で触る。
「あ?」
短い声がしたと思うと、有野が後方へ机を巻き込みながら吹っ飛んだ。
俺は地面へどっと落ちる。
皆、状況が読み込めないのか、俺と机の中に突っ込んだ有野を交互に見つめた。
「は? 有野さん? 何した? お前、何した?」
「おい。お前らじゃ。俺に適わねえよ」
俺がそう言った瞬間、目の前が暗くなった。
「ハッ」
『小説が投稿されました』
赤い文字が無機質に浮かんでいた。
「どうだ? どうだ?」
投稿されていた。俺のした行動がばっちりと纏められていた。
翌日、感想が届いた。
『とても面白いです。主人公が妙に人間味があって、作者さんの愛情が感じられました。二部で出てきた大先輩も相当、ムカついたので、スカっと倒して下さい』
ああ、感想を貰うことがこんなに嬉しいなんて。
頑張って小説を書こうと思った。




