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幼馴染との幸せな日常Ⅱ

「歩! 起きて! 起きて!」

「わぁ」

 唐突な声に俺は吃驚して、身体をを起き上がらせた。


「わぁ」

 少女が転んで青と白が交互に並ぶ縞々のパンツが露になる。

「やっ」

 少女は可愛い声を出して、それをスカートで覆った。

 勿論、こんなラッキーなイベント現実世界ではありえない。なにせ、ここは現実世界ではないからである。

「歩。今の見た?」

「イヤミテナイヨ」

「なんでカタコトなの?」

「そんなことより早く学校へ行かなきゃ」

 俺はベットから転がるように落ちて、少女をすり抜け、自室を退出した。


「歩!」

 という声が後方から聞こえた。


「なんだよ」

 俺は後ろ歩きで、部屋まで戻る。


「チェンソー忘れてる!」


「は?」



 平凡な日常な風景は俺の手に持つ、禍々しいもののせいで、ぶち壊しだ――と思っているのは恐らく、俺だけだろう。


 この作中のキャラは全員、頭のネジが一本ぶっ飛んでいるのだろうか?


「歩、そろそろ走らなきゃ」

「いや、そんなこと言っても――」

 手に持つ物を見る。


 走りにくい。


 ゴッツンコ☆


 なんて可愛い擬音を出しながら、俺は誰かと衝突した。

「いててっ・・・」

「ごめーん――ってアンタはっ!」

 何事だろうと、俺が目を開くと、黒いスパッツが目に入った。しかし、少女は気にしないのか、それともまず見られていることに気がついていないのか、高らかに声を上げた。

「殺す」

 刹那、少女の拳がこちらに飛んでくる。

 俺は間一髪で避けた。

「は? はあ?」

「エロテイオウ。アユム。死ね! 女性ノ敵!」

 俺は反射的にチェンソーを少女の腰辺りに当てていた。

 

 ヴィィィィィィン。

 

 鈍い音がして、鮮血が舞った。

 紐のような物が脇腹から飛び出して、地面にぼとりと落ちた。

「ぐええっ」

 俺は何もしていない。

 何も構っていないのに、勝手に操作されたのである。


「歩――好きだった」

 

 肩に寄り掛かる死体がそう呟いた。

 ああ。

 これもリアス同様、俺が勝手に作り出して、殺してしまったのだ。

「すまん」

 もうこの声は聞こえてないのだろう。

 

「どうでもいいけど、二人ともこのままだと学校送れちゃうよ」

 幼馴染が無機質に言った。


 

 学校につくと、校門の前に風紀委員が立っていた。

「歩サン!」

 様子が明らかにおかしい。

 

 血に染まったチェンソーを見る。

 次のこいつの獲物はこの少女らしい。


 泣きそうだ。

 自分で書いた物語のキャラに哀れみを感じる。

「ああ、すまない」


俺はチェンソーを風紀委員の脇腹に当てる。


「歩さん。風紀委員として、メイレイします。私と付き合って――」

 少女が静かに言った。

 

 ヴィィィィィィィィィン。



 俺は今、どんな状況下に置かれているのだろうか。

幼馴染である由比に押し倒されているのである。窓から差し込む月光が俺の上に覆いかぶさる由比の額を掠っている。


 俺と由比の家は本当に近くて、由比と俺の部屋のベランダは隣しているのである。両親の悪ふざけと言ったところか。だから少しの隙間を跨げば、そこはもう自分の家ではないのである。

 夜遅くに入ってきたから何事かと思ったが、いきなり押し倒されるとは思わなかった。


「由比?」

「ねえ、歩って誰かとキスしたことある?」

 月光が少女の顔を照らし始める。静寂な空間。両親は寝ているだろう。

「ない」


「ファーストキス――奪っていい?」


「なっ!」

 素っ頓狂な声を上げてしまった。

「いや?」

「そりゃ」

「そりゃ?」

「そりゃあ」

 なんと言えばいいのか。


「だめだ」

 俺はきっぱりと言った。


「な、何で」

「だって――俺たち恋人とかじゃないしさ」

「じゃあ、恋人になろ」

 同級生たちが殺されていくのをこいつは何とも思わないのだろうか。

 

「何をぼうっとしてるの! 返事頂戴よ」

 幼馴染の顔は真っ赤だ。本当に。


「あ、あ」

 何も言えなくて――何を言ったらいいか分からなくて。それでも何か言おうとするから、意味の分からない言葉が発せられた。

 

「ちゃんと返事して。私、これでも真剣なんだよ」

「な、なんで。いきなり」

「だって歩。色々な女の子とイチャイチャして・・・いつ取られちゃうか分からないし」

 由比は今にでも泣きそうである。

「私、きになっちゃうよ」


瞬間、俺の上に居た少女が木になった。


「はぁ」

 俺は予想できた展開にチェンソーを木に押し当てた。


 ヴィィィィィィン。


「歩! 昔から好きだったんだよ?」

「あっそ」


「なんで私だけ、躊躇ないの?」

 木が喋っている。普通に不気味である。

「いや、普通に木だから」

 

 俺は冷徹に言って、チェンソーを投げ捨てた。瞬間、目の前が真っ暗になった。 

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