93話 森に突入2 -森の中での大冒険ですね-
アロー系の魔法って弓の存在価値が揺らぎますね。
魔ウサギを倒した一行は周りに敵が居ないことを確認して休憩に入った。カレナリエンとメルタは念の為に周りを警戒し、その他の者達が倒した魔ウサギを解体して料理を始めた。
「そう言えばリョージ様のアイテムボックスは色々と入っているそうですね」
亮二の付き添いとして同行している文官に話しかけられた亮二は嬉しそうにストレージに入っている道具を出し始めた。
「だろ?肉は魔ウサギを使うとして野菜に果物に調味料に包丁だろ。それにジュースもあるし酒は有るけどダメだぞ、やっぱり大事なのはカマドと調理台だよね。あっ、皿とかを出してなかったな」
文官はストレージから色々と出し始めたのを眺めていたが、カマドが出て来た時に腰を抜かしそうな表情をしていた。文官の持っている知識ではアイテムボックスはその口と同じくらいの物しか出し入れ出来ないからである。
「カ、カマド?リョージ様、今アイテムボックスからカマドを出されました?」
「え?もちろんカマドだよこれ?ひょっとしてカマドの数が足りなかった?そうか、魔ウサギは全部で5匹居るから燻製にもしたいか。分かった、ちょっと待ってて今から作るわ」
亮二は文官に対して頷くと、【土】属性魔法を使ってストレージから出したカマドの横に3つのカマドを並べて作った。
「これで燻製用2つに調理用2つで時間短縮になるな。後は調理用の水が要るよな、樽は3つ作って栓を捻ったら下から水が出るようにしといたから。水は今から入れるから足りなくなったらいつでも言って」
唖然としている文官を尻目に亮二は次々とかまどや瓶を作り【水】属性魔法で水を満たすと、栓を捻って水が出る事を確認すると満足そうに頷いて文官を見た。
「おーい!どうした?返事してくれ」
「は、はい!しっかりしております!これから調理に入ります」
ワタワタとして食事の準備に入った文官を見ながら首を傾げていると苦笑いを浮かべながらカレナリエンとメルタが近付いて来た。
「だめですよ、リョージ様。慣れていない人にリョージ様の非常識を押し付けるのは」
「そうそう。リョージ様は非常識の塊なんですから相手の事を分かってからご自身の無茶苦茶さを押し付けないと」
カレナリエンとメルタから「貴方は非常識だ」との大合唱を受けた亮二は地味に落ち込みながらも【火】属性魔法で点火をすると鍋に水を入れて調理を始めるのだった。
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「ちょっと気になることがあるんだよね」
思っていた以上に魔ウサギの肉は柔らかく、シチューや串焼きなどの料理や保存食として作った燻製を試食して満足した亮二達は食後のティータイムに入っていた。
「気になることって何ですか?リョージ様」
「いま、この森を索敵していたけど、ここみたいな広場があちこちに有るんだよね。それに何故かここの所有者が俺になってるんだよ」
「所有者がリョージ様なんですか?それよりもこの森を索敵するってどうやってるんですか?聞いたこともないんですが」
カレナリエンが首を傾げながら質問してきたが、亮二にもインタフェースの説明が出来ないので「ニホン国の魔法」で終わらせて荷物を片付けるように指示を出すと、次の広場に馬車を進めてみた。
次の広場になっている所は先程の広場よりも小さく、亮二達が広場に入ると魔ウサギが3匹襲ってきた。今度は亮二が先ほどの「ライトニングショット」で一気にケリをつけると、カレナリエンの探るような目を極力気にしないフリをしながらインタフェースを起動させて、今いる広場を確認するとやはり所有者は亮二になっていた。
「やっぱり、ここも俺が所有者になってる。この広場にいる魔物を全て倒したら所有者になるみたいだな」
「何の意味があるんですかね?」
「ここの森って名前とか有るの?」
亮二の質問に文官が文献を調べて答えてくれた。
「ここは昔から「盤面の森」と呼ばれていますね。なぜ「盤面の森」と呼ばれているかは記録には残っていませんが、広場に滞在すると魔物が出ますので一気に通り抜けるしか無いとの事です。ちなみに一気に通り抜けると唯一魔物が出ない広場が有るそうで、そこで1泊してから森を抜けるのが昔からの通例でした。現在は違う道が整備されていますので「盤面の森」については文献でしか残っていないですが」
「たぶんだけど、この森の広場が盤面と同じになってるんだろうな。何の盤面かは全然分からないけど大小の広場が後30個ほどあるよ」
「どうされますか?最短を目指して進んだほうが良いと思うんですが」
カレナリエンの意見にメルタや文官達も頷いていたが嬉しそうにしている亮二の顔を見て「あ、無理だこれ」と認識を一致させるのだった。
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最短で行けば2日で抜けられる「盤面の森」だが亮二達はすでに5日目に突入していた。周りの文官やカレナリエン、メルタが説得したが「後、2個で完全制覇できるんだから思いっ切り行こうぜ!」と亮二のハイテンションな返事しか返ってこなかった。28個目の広場は小さな広場で魔ウサギが3匹襲ってきたが、亮二の「アイシクルアロー」で攻撃する暇もなく凍らせられると、そのままストレージに収納されていった。
最初こそは亮二の戦いっぷりに驚愕や唖然としていた文官たちも3日目にもなると慣れてきたようで、馬車の中から「終わったら起こして下さい」と伝えると寝ているくらいであった。
「後2つだな。ちょっと飽きてきた。色々な魔物が出て来て楽しかったのは良いんだけどな」
カレナリエンとメルタは戦闘での無双っぷりを見せつける亮二を達観した思いで見つめていた。マルコがその状況を見たら「達観じゃなくて悟っただけだろ」とツッコミを入れたであろうが。一同が次の広場に進むと魔物は出てこず、ゆっくりと休憩が出来るようであった。亮二が検索した森は35個の広場があり、その内で亮二所有となったのは34個であり、一同が居る広間は最後の広間に行く前の休憩所になるようであった。
もうちょっとでクリアです!何か道をソレているような気がしますが気にしない!!