表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている  作者: うっちー(羽智 遊紀)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/435

84話 最深部での結論 -色々と分かりましたね-

色々と分かるのは楽しいもんです。

「リョージさん、大分と解明できてきましたよ。どうやら”試練の洞窟”は名前を変えることになりそうですね」


 ライナルトからそう告げられた亮二は疑問いっぱいになりながらマルコを見たが、マルコも首を傾げながら肩をすくめて「俺も聞きたいくらいだ」とライナルトに説明を求めた。


「説明の前に質問です。まずは部隊長、ベースキャンプから今までの最深部に魔物は居ましたか?」


「ん?居たぞ、ほとんど討伐してしまったがな。リョージに収納を頼んでいるから数は彼から聞いてくれ」


 ライナルトからの質問に部隊長が「全部倒したぞ」と答えた事に大きく頷くと「あくまでも推測ですが」と前置きをして説明を始めた。


「まず私が疑問に思ったのは”試練の洞窟”に居る魔物はどこからやって来ているのか?と言う事です。入り口が1つしか無い洞窟でなぜこんなに魔物が繁殖しているのでしょう?駐屯軍が軍事的示威活動をほぼ毎日しているにもかかわらずです。疑問の1つは我々が最深部と思っていた場所は中間地点で更に奥が有ることで、”試練の洞窟”で魔物が繁殖できるほど広大であり魔物の全体数も多いとの事で解消しました。


 では、牛人によるスタンピードはどういった原理で発生しているのでしょう。この10年で3回発生したスタンピードですが、牛人が魔物を統率して組織立って起こっています。そう言った意味ではスタンピードではないと言ってもいいでしょう。ユーハン伯に撃退された牛人が10年かけて勢力を回復させたと言っても時間がかかり過ぎているとしか思えません。たかだか200匹程度を産みだすのに10年も掛かるでしょうか?」


 ライナルトの長台詞に一同は四苦八苦しながら聞いていた部隊長が代表して答えた。


「確かに説得力のある考察だとは思いますが、それと”試練の洞窟”の名前が変わると仰った内容と先ほどの説明とはなにか関係があるのですが?」


「いい質問です。私が先ほど”試練の洞窟”の名前が変わるとお伝えしたのはこの魔法陣になります。この魔法陣は召喚に使われていましたが、向こうからの召還にも利用されているようですね。魔法陣の術式を確認した限りでは一方通行ではなく双方向性を持ってましたので」


「え?って事はこの瞬間にも何かがやってくる可能性があるの?」


 亮二の質問に思わず一同が周りを見渡したが、ライナルトを始めとする学者一同が微妙な顔で「大丈夫です」と一斉に答えた。


「なぜそう言い切れるんだ?まだ陣が生きている可能性あるんじゃないか?」


「大丈夫です」


 マルコの問い掛けに力強く問題ない事を答えるライナルトの顔を見ていた亮二は、何かに気付いたがようにライナルト近付いた。


「なあ、ライナルト。ちょっと質問いいか?この最深部の広場は暑いか?」


「なぜ、そんな質問を?適温どころか少し寒いくらいですよ?」


「じゃあ何で額や頬に汗をかいてるんだ?」


 亮二の指摘に一同はライナルトが頬に汗をかいていることに気付いた。よく見ると彼だけでなく他の学者達も一様に額に汗をかいており、中には真っ青な顔で今にも倒れそうな者もいた。


 亮二がさらに近付こうとすると何かを隠すように少しずつ後ずさりを始めようとし、あまつさえ逃げの体勢に入ろうとした。いち早く気付いた亮二はライナルトの足を引っ掛けて転ばすと逃げられないように馬乗りになってマルコに視線で「他も逃がすな」と指示を出すと軍曹モードになって詰問を行った。


「おい、魔法陣壊したな」


「い、いえ。魔法陣を壊したのではなく…」


「俺に嘘を付くのか?いつからそんなに偉くなったんだ?」


「あのですねリョージさん。今はそのノリはやっちゃダメだとおも…」


「イエスかノーかどっちだ?」


 ライナルトは亮二の行動を冗談で済まそうとしたが誤魔化しきれなくなったようで顔中から汗が溢れんばかりに流れ始めた。


「最後だ、イエスかノーか」


「イ、イエッサー!調子に乗って色々と触っていたら壊れました!サー!」


 亮二はライナルトから降りるとマルコに向かって力強く頷いた。


「壊れたって。ワザとじゃないから仕方ないよね?」


「仕方ないで済ますなよ!お前、どんだけの国家損失か分かっているのか!」


 広場にマルコの叫び声が響き渡るのだった。


 ◇□◇□◇□


「はい、全員正座」


 カレナリエンの号令のもと学者6名と亮二が正座をしていた。


「え?カレナリエンさん、なんで俺まで?」


「当たり前です。部下の責任は上司の責任です」


「いや、それはノリと勢いでやっちゃった感じで…「そんな!軍曹!俺達を見捨てないでくださいよ!!」


「う、五月蝿い!俺まで巻き込むんじゃねえよ!カレナリエンさんの説教受けたことないだろ!本気で怖いんだからな!!」


 亮二とライナルトを始めとする6人の学者が正座をしながら言い合いをしているのを眺めつつ、カレナリエンはマルコと部隊長と今後の方針について話し合った。


「どうします?ありのままを報告なんて出来ませんよ?」


「そうだな、ありのまま報告したらリョージや学者達に処分が下されるよな」


「特にリョージの噂を聞きつけている貴族連中からしたら、格好の攻撃材料を手に入れたも同然だろうしな。それに学者達を免責代わりに取り込もうとする奴も出てくるだろうな」


「よし!じゃあここは牛人が最後の力を振り絞って魔法陣を破壊したって事で」


「それは簡単すぎないか?」


「そこがいいんじゃん。誰も確認できないんだから」


「そうだな、他の冒険者や駐屯兵達も学者達が誤って魔法陣を壊したって知らな…なっ!」


 亮二が参加している事に気付かなかったマルコは、いつの間にか会話に参加している亮二に向かって一瞬驚いたが、いつもの事と諦めて代わりにため息を吐いた。ため息を吐かれた亮二は、諦め気味の顔をしたマルコに対して話を纏めに掛かるのだった。


「いや、今回はそれしか無いだろ?さっき聞いたら学者達はある程度の術式を解析できたみたいだぞ。さらに踏み込んで解析しようとして壊したみたいだから、そこだけは伏せといて、結果だけを土産にしたら多少の事は許してもらえるんじゃないか?」


「術式を解析出来たのか!それなら上手くいきそうだな。亮二の案ってのが物凄く癪だが仕方ないな」


「そうですね、それにしておきましょう。ここに居る皆さんと学者さんもそれでいいですね」


 カレナリエンが纏めのように伝えた所、部隊長やマルコ、亮二は軽く頷き、学者達は正座した状態でコクコクと頷いていた。それを見届けながらカレナリエンは亮二の方を向くと満面の笑顔で話しかけた。


「で、リョージ様は何で正座を止めて会話に参加しているんですかね?方針が決まりましたからお説教の続きを始めましょうか」


 亮二だけでなく学者達も青い顔をしながら背筋を伸ばしてカレナリエンの前に並んで正座するのだった。

何で俺まで正座?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ