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異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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82話 最深部での攻防戦2 -決着を付けますね-

思い切った方が勝ちです。

 学者達が放った連続ファイアボールで魔物側の右翼はすでに崩壊して大半が死んでおり、残りも火傷によるダメージで動けずにいた。また左翼もマルコ達の救援部隊に強襲を受け数を減らし、陣形を組んで襲ってくるなど通常では考えられないやり方で亮二達を苦しめていた魔物の群れは戦線が崩れ始め、組織だった攻撃は無くなり徐々に防御中心としたものになり始めていた。中央で指揮を執るはずの牛人3体の内、2体はすでに亮二に討伐されており残りの1体も亮二と激戦を繰り広げている事も戦線崩壊に拍車をかけていた。


「こっちはもうすぐ終わるぞ!リョージ、後は頼んだ!」


 背後から部隊長に声を掛けられた亮二は「おう!」と振り返らずに答えると、牛人から放たれてきたファイアアローを【氷】属性を付与した”ミスリルの剣”で叩き落とすと返す刀で切り込もうとしたが、先を読まれた牛人に連続でファイアアローを打ち込まれたため一旦間合いを取る為に大きく飛び退った。


 -厄介だな、あの連続ファイアアローは。このままだとお互いに決め手がなくて膠着状態が続いてしまうな。思い切って学者達に後方からファイアボールを撃ってもらうか?いやいや、それは決闘のやり方からしたらまずいよな-


 大きく飛び退った亮二が一瞬考え込んだのを隙と見た牛人は、立て続けにファイアアローを撃ちながらな向かってきた初撃のように一気に間合いを詰めて上段からメイスを打ち下ろしてきた。


 亮二は連続して撃たれたファイアアローを”ミスリルの剣”で撃ち落とさずに受け流すと、間合いを詰めてきた牛人に対抗するように大きく間合いを詰めた。


 接近戦では身体の大きな自分の方が不利になると理解している牛人はそれを逆手に取り、亮二が潜り込むであろう場所にファイアアローよりも威力の大きいファイアランスを打ち出した。勝利を確信した牛人が見たのは亮二が居る場所に撃ち出した(・・・・・・・・・・)はずのファイアランスが何もない空間を虚しく通り過ぎていったところだった。


「「「リョージ!」」」


 左翼を徹底的に打ち倒して余裕の状態で亮二の激戦を眺めていたマルコ達の目には牛人が放ったファイアランスが亮二に当ったかのように見えた。


「これで終わりだ!」


 戦いを見ていた部隊長を始めマルコ、カレナリエンや学者など主な者たちの耳に届いたのは亮二の終了宣言だった。一気に間合いを詰めてきた牛人に対抗するように間合いを詰めた亮二は、戦闘で今まで一度も使用していない”ファイアランス”で勝負をつけようとした敵に対して、更に詰めた間合いと同じ距離を一挙に前進した。そうして、牛人の背後に回り込むと居合い抜きの要領で回転しながら”ミスリルの剣”を抜き放った。


「がぁぁぁぁ!」


 牛人は、背後から襲ってきた剣戟をバックラーで受けようとしたが間に合わず、左腕は切り落とされ脇腹にも致命傷になりえそうな傷を受けた。その場で片膝をつきながらもメイスを振るって亮二を遠ざけると、腰に有る袋からポーションのような物を取り出すと一気に嚥下した。液体の入った瓶を一気に飲みきった牛人の身体は変化を始め、流れていた血が止まると身体が褐色に変わって目は血走りだした。


「色だけじゃなくて感じも変わった?」


 亮二の呟きに呼応するように牛人は「ごぉぉぉ!」と叫ぶと亮二の居る場所にメイスを打ち下ろした。あまりの単調な攻撃に亮二は疑問に思いながらも躱して反撃を試みようとした時にメイスが地面に触れた。亮二は突然起こった地震に体勢を崩しながらも「不可視の盾形ガントレット」を使って地震を物ともせずに突っ込んできた牛人の一撃を受けた。


「なっ!地震の正体はこれか!」


 亮二はメイスの一撃を「不可視の盾形ガントレット」で受けて地震の正体が牛人からの攻撃であることが分かった。魔道具である「不可視の盾形ガントレット」だったからこそ受けきれていたが通常の盾だったら衝撃で盾を破壊され、そのまま殺されていたかも知れなかった。


 牛人は亮二に攻撃を防がれた事を気にせずに連続で攻撃を行ってきた。亮二は攻撃を逸らしたり捌いたり躱したりしながら反撃のチャンスを待っていたが、牛人の攻撃は止まること無く30合を越えようとしていた。


 -さっきのポーションのような物は狂戦士になる薬のようなものか。さっきまでの貴族然としたオーラが無くなって魔法も撃たなくなったもんな。さしずめ攻撃力を飛躍的に上げるが、それ以外は下がる両刃の薬なんだろうな-


 亮二は単調になった攻撃を躱しながら、牛人をそこまで追い詰めた事に少しだけ憐憫の情が出て来たが気を取り直すと今度こそ勝負を決めるために防御から攻勢に切り替えて行くのだった。


 ◇□◇□◇□


「かなり押されているように見えますがリョージさんは大丈夫なんですか?」


「リョージ様は次の攻撃で勝負を決めるようよ」


 ライナルトの呟きとも取れる言葉に反応したのは亮二の様子を見ながら納得した顔で頷いていたカレナリエンが答えた。亮二は相手からの攻撃は躱しながら、先程の牛人の攻撃のお株を奪うように連撃を行い【氷】属性付与を二重で行う離れ業をやってのけた。


 ”ミスリルの剣”に【氷】属性が二重で付与された刀身は周囲に白い氷の粒を撒き散らしながら広場自体の気温を下げ始め、危機感を持った牛人が亮二に襲いかかってきたがメイスと剣がぶつかった瞬間に牛人はメイスを取り落としてしまった。


 対戦中に武器を取り落とすなど巨大な隙を亮二が見落とす訳もなく一挙に間合いに入ると上段から兜割りを行った。すでに左腕もなく、主武器であるメイスも取り落としている牛人には為す術もなく両断され切断面から凍っていくに任せるしかなった。亮二は牛人を討伐した事を確認すると”ミスリルの剣”をストレージに仕舞って大きく両腕を天に向けると「牛人討ち取ったり!」と勝鬨を上げるのだった。

今回はしんどかったです……。

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