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異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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81話 最深部での攻防戦 -戦況は水物ですね-

牛人がなんぼのもんじゃい!

 玉座に当たる場所に鎮座しながら彼は今起こっている状況に不快な気分が盛り上がってきていた。生まれた時から特別な選ばれた存在であると教育を受けた彼の目的は、音信不通になっている大多数の魔物を引き連れて人間界へ侵攻した牛人の調査が今回の目的だった。


 戦闘能力の高い奴隷種の牛人を2体配下に付け目的地に到着し、これから調査を始めようとした際に矮小な人間の存在に気付いた。そこで、攻撃命令を出したが、思ったような戦果を上げることも出来ずに膠着状態どころか全体的に押され始めていた。


「ごぉぉぉ!」


 たかが人間ごときに一刀で斬り伏せられた不甲斐ない配下と数合打ち合うだけで倒されたもう1体の配下を見ながら彼は更なる不快な気分に支配されていた。「人間の相手すらも出来ないから奴隷種なのだ」と言わんばかりに頭を振るったが、他の魔物達も先制で撃ち込まれた魔法に浮き足立っており彼の不機嫌さは頂点に差し掛かっていた。


「がぁ!ぶおぉぉぉ!」


「怯むな!人間など一瞬で殲滅せよ!」と押され気味の魔物達に命令を下し、隷種とは言え同族を2体も倒した矮小で小柄な人間に対して、自ら罰を与えんが為に立ち上がるとメイスを構えて向かっていくのだった。


 □◇□◇□◇


 2体を問題なく軽やかに倒した亮二は向かってくる牛人に対して油断なく構えていた。すると一回り大きい牛人は一足一刀の間合いまで入ったと同時にメイスを真っ直ぐに構え、軽く前につきだした状態で止まった。まるで決闘を行うような仕草に亮二は取得しているスキルの「礼節 7」を使って返礼した。亮二の返戻に牛人は頷いて少し間合いを開けてメイスを構え直すと戦意をぶつけてくるのだった。


 相対した両者はしばらく睨み合っていたが先に動いたのは牛人だった。


「なっ!」


 メイスを構えた牛人が少し腰を落とした瞬間に亮二の間合いに入ってきており、上段から降り注いできたメイスを”不可視の盾形ガントレット”を使って反射レベルで受けていなければ勝負は決まっていてもおかしくない一撃だった。


「あっぶね!油断してなかったのに!」


 亮二は大きく間合いをとり”ミスリルの剣”を構え直して牛人の間合いに入ると、わざとゆっくりしたモーションで左から剣撃を放ち牛人が左手に括りつけられているバックラーで防御しようとした瞬間に剣の勢いを止め、半歩下がると手首を返して胴をめがけて突きを放った。亮二の放った突きは回避し切れなかった牛人の左脇を擦り鮮血が舞った。生まれて初めて傷を付けられた牛人は叫びながら後方に飛びさると、右手を亮二に向けて炎の矢を連続で飛ばし始めた。


 -うぉ!連続で魔法を使ってきたぞ、魔物でも上位種となると厄介だな。さっきの決闘に関する礼儀作法といい、何をやってくるか分からないからその前に一気に決める!-


 亮二は牛人から放たれる炎の矢を躱しながら”ミスリルの剣”に【氷】属性を付与させると炎の矢を片っ端から撃ち落とし始めた。部隊長は固唾を飲んで亮二と体格の良い牛人との一騎打ちを眺めていた。礼から始まった独特の雰囲気は間に入る隙を与えてくれず亮二に任せるしかなかった。


 部隊長は一騎打ちを見守るしか出来なかったが、防戦している冒険者達は亮二が牛人の対応を受け持っているため、それ以外の魔物に専念する事が出来ていた。壁を背にして布陣された半月陣形は綻びを見せることなく強固な防御力を誇っていた。


「他の者達の気持ちは持ち直したか?」


 冒険者の1人からの問い掛けにカレナリエンは振り返って確認すると、3体目の牛人の動きを見て呆然としているライナルトの胸倉を掴むと殴り付けた。


「お、おい」


 冒険者からの躊躇いがちな制止を無視するかのように再度ライナルトを殴り付けるとカレナリエンは大きな声で叫んだ。


「しっかりしなさいよ!さっきの勢いはどこに行ったのよ!リョージ様が牛人を2体倒して3体目と戦ってるのに「軍曹」って慕っていたあなた達は呆然とする事しかできないの?」


 カレナリエンの叱咤に呆然としていたライナルトの焦点が徐々に戻り、意識を持ち直した事を確認するとカレナリエンは胸倉から手を話して「もう大丈夫よね?」と確認を行った。


「もう大丈夫です。カレナリエンさんに不甲斐ない所を見せてしまいましたね。これから戦局をひっくり返して、軍曹の戦いっぷりをゆっくりと見学させてもらいましょう」


 ライナルトはまだ固まったままの他の学者達に向かって大きな声で掛け声を発した。


「お前ら!『死ぬ気でやって死ななかったら大丈夫だ!後はノリと勢いで好き勝手やればいい!』との軍曹の言葉を思い出せ!ここをさっさと終わらせて、あの魔法陣を徹底的に調べたいと思わないか!」


 ライナルトの掛け声に意識が戻ってきた学者達は「そうだ!魔法陣が有るぞ!」「あの魔法陣は牛人のみ反応するのか?」「魔物が1回で出でくる数は?」などと話し始めた。


「魔法陣に関する話は後だ!今はこの戦況をひっくり返す為の攻撃を行う。全員右翼後方に”ファイアボール”を撃てる限り撃て!」


 ライナルトの号令を受けた学者達6人は亮二から教えてもらった”ファイアボール”を連続で打ち始めた。計算された時間差で放たれる”ファイアボール”は着弾するたびに魔物を巻き込み始め、3巡した頃には右翼は焔の海と化していた。


「凄え」


 あまりの景色に冒険者だけでなく魔物も呆然と焔の海を眺めていた。


「何をしている!今が総攻撃のチャンスだろう!」


 後方から聞こえてきたのは救援要請を受け、援軍を連れて全力で広場までやって来たマルコの声だった。


 戦局が更に動き始める。

いいところで援軍が来るなんてなんてテンプレな展開

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