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異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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41話 迷い猫を探します2 -順調だと思ってましたけどね-

敵はサクッと倒せました。

 スラム街の一角にある小屋の中で亮二は考え込んでいた。5名の制圧は比較的にスムーズに行えた。最後の1人は今だに「終わりだ。儂の人生が終わってしまった。マークはどこに行った?マークはどこだ?」と焦点の定まらない目で呟き続けているが放っといても特に問題は無さそうだった。


「それにしてもどうすっかなこれ?このまま放置するのもダメだろうしな。取り敢えず外の2人も中に入れとくか」


 人目の付かない場所に転がしていた2人を小屋の中に入れると、5人を背中合わせの車座にしてストレージからイオルスに貰ったロープを取り出してグルグル巻にしておいた。亮二は巻かれている5人を眺めていたが、ロープだけでは心許いと感じたので【土】属性魔法を発動させると両足をしっかりと固めておいた。


「よし、これで一安心。じゃあ、サクッと黒猫さんを探そうかね」


 亮二は先程の戦いに巻き込まれないように部屋の隅で震えている犬に近づくとしゃがんで手を差し伸べてみた。最初は2匹とも威嚇の唸り声をあげていたが、ふと気付いた亮二がストレージから“生肉”を取り出して渡すと、1匹は警戒しながらも一口食べて問題ない事を確認すると一心不乱に口に運び始めた。それを見た残りの1匹も先に食べだした犬に負けない勢いで“生肉”を食べ始めると亮二に対してしっぽを振りながら「もっとくれ!」と言わんばかりで吠えるのだった。


「よし!そこで大人しく肉を食べといてくれよ」


 犬の催促に亮二は笑顔でストレージから肉を取り出すと大人しく食べるように話しかけ、奥の部屋に続く扉を開いて中に入った。奥の部屋に入った亮二は獣の匂いが鼻を充満していくことに顔をしかめながら、檻に入れられている犬や猫などを1匹づつ確認していくとうずくまって震えている猫を見付けた。


「いた!やっと見付けたよ。安心しろ、お前をおばあちゃん家に連れて行ってやるからな」


 檻に入れられている黒猫を取り出すと亮二は優しく背中を撫でた。亮二に対して怯えた状態だった黒猫は背中を撫でられている内に緊張が溶けてきたのか、亮二に身体を預けると目をつぶって喉をゴロゴロと鳴らすのだった。


 ◇□◇□◇□


 取り急ぎ、黒猫を依頼人の年老いた女性に届けると女性は涙を流しながら亮二に何度もお礼を言った。依頼料とは別にお礼を渡そうとするのを何とか断って署名をもらうと、その足で応援を頼むためにギルドに向かうのだった。


亮二がギルドの扉をくぐるといつもの喧騒とは違う状態になっていた。普段なら酒を飲みながら陽気に騒いでいる冒険者が完全装備で指示を出していたりするなど、物々しい雰囲気を醸し出していた。


「あれ?どうしたの?カレナリエンさん?なんか物々しい雰囲気だけど?」


「リョージさん、丁度良かった。探しに行こうと思っていたんですよ」


「何かあったの?」


「今、視察に来ている姫様の犬が何者かに連れ去られたんです」


「へー、それでギルドからの緊急依頼って感じ?」


 カレナリエンに詳しい事情を聞いていた亮二は「ん?」と首を傾げると再度、犬の特徴について質問を投げかけた。


「ねえ、カレナリエンさん。もう1回犬の特徴を教えてくれる?」


「大型で白色のオスですね。結構、人懐っこいですよ。ひょっとしてリョージさん、何か心当たりが有るんですか?」


「たぶん、その犬の居る場所知ってる」


「そうですか。知ってるんですか。え?えっ!リョージさん場所知ってるんですか!」


 亮二が何気に答えた事にカレナリエンが驚きながら叫ぶと全員の視線が亮二に集中した。


「で!で!リョージさんお犬様はどこですか!」


「いや、お犬様って。カレナリエンさんはちょっと落ち着こうか」


「落ち着いている場合じゃないんですよ!ドリュグルの街で姫様の犬が拉致されて、行方不明なんですよ。色々な所からすればユーハンへの格好の攻撃材料じゃないですか!傷を最小限に抑えるためにも一刻でも早く救出する必要があるんですよ」


 カレナリエンの剣幕に押され気味の亮二はコクコクと頷くと、ギルドにいた動ける冒険者達を引き連れてスラム街の一角にある小屋に案内するのだった。


 □◇□◇□◇


「え?エーランド=エイセル様?それにマーク?なんで彼らは縛られてるんですか?」


 亮二が案内したスラム街の一角にある小屋に入ったカレナリエンの目に入ってきたのは車座でロープによって縛られ、さらに両足には石で枷が掛けられている状態の男5人であった。


「知り合いなの?カレナリエン」


「あまり嬉しい知り合いではないですけどね。エーランド=エイセル様からはずっと妾になれって言われてるし、マークは受付にいる時も冒険者として活動している時も何かとちょっかいをかけてきてましたからね」


 カレナリエンの声を聞いてブツブツと呟いていたエーランド=エイセルは沢山の人数に囲まれている事で我に返ると怒り声を出し始めた。


「おい!誰をロープで縛っているか分ってるんだろうな!ドリュグル前領主の従兄弟である儂に対してこのような扱いをして無事で済むと思うなよ。特にリョージ!貴様だけは絶対に許さん!儂だけでなくマークまで襲ったんだからな。いくらユーハン伯のお気に入りとは言え儂らに手をかけた事を後悔させてやるぞ!」


 エーランドの叫び声を聞いて亮二は恩賞を受ける前に1回目の【雷】属性を纏わせた時に絡んだ上に嘲笑を浴びせて来た男だと思い出した。


「あっ!パレードの後の恩賞の時に意味不明なことを叫んでたオッサンじゃん!」


「誰がオッサンか!この礼儀知らずが!!」


 エーランドが更に大声で叫ぼうとした時に「それまでです!」と凛とした声が小屋に響き渡るのだった。

突然の乱入は誰ですか?

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