40話 迷い猫を探します -それだけでは無かったですね-
外見が子供である武器を使わないと
「こんにちは!今日もいい天気ですね」
陽気な感じの笑顔で話しかけてきた亮二に対して、一瞬呆気に取られた後に怪訝な顔をした男達は自分たちの仕事を思い出すと威嚇するように凄んできた。
「何だお前は。ここはガキの来る所じゃねえんだよ。さっさとどっかに行きやがれ!」
男達にとって不幸だったのは先日のパレードを見ていなかった事であろう。もし、遠目から少しでもパレードを眺めていたら小綺麗な服装で馬に乗っていた子供が”ドリュグルの英雄”と言われていた事に気付いていただろう。少なくとも最大の警戒を持って対応したはずだった。
「こんな言葉を知ってる?「油断大敵」って」
亮二は両手に【雷】属性を纏わせて男達の露出している肌の部分をしっかりと握った。男達は何が起こっているかを理解出来ないまま警戒も回避もする暇なく痙攣すると、崩れ落ちるかの様に倒れて動かなくなった。
「死んでないからOKだよね!でも、不意打ちでごめんね」
男達が気絶しているのを確認すると、男達の武器や所持品を全てストレージに回収して亮二は2人を人目につかない場所に移動させた。一連の騒動を誰にも気付かれてない事と、建物の周りに気配がない事を確認した亮二は玄関口の前に静かに立つと、中の状態を確認するために検索範囲を5mに絞って検索を始めた。
「玄関を入って大きい部屋に5名と2匹。奥の部屋に30匹が居て黒猫に絞って検索すると5匹か。よし!5人くらいなら何とかなるよな。そうと決めたら突入!」
亮二は扉に手をかけると蹴り飛ばすかのような勢いで押し開けると中に突入した。
「誰だテメエは!」
「僕はリョージだよ。迷い猫を探しに来たんだ。可愛い黒猫で尻尾の先が白いんだけど、どこに居るか知らない?」
突然突入してきた亮二に男達は慌てた様子で叫ぶと掴みかかろうと近寄ってきた。男達の叫び声を特に気にする様子でもなく近所の知り合いに気楽な感じで話しかける感じで答えた亮二は、両手に【雷】属性を纏わせて掴みかかってきた男の手首を握りしめると気絶させ、もう1人に対してはみぞおちを思いっきり殴りつけた。【雷】属性で殴りつけられた2人が気絶している事を確認すると、ストレージから”ミスリルの剣”を取り出して呆然としている男達に向かって走りだした。
亮二に一撃をもらっただけで崩れ落ちて動かなくなった男達を見て、残った3名の内の2名は無言で抜剣すると、左右に分かれて時間差をつけて亮二に襲いかかってきた。
「やるね!」
亮二は連携の取れた動きに意外さを感じながらも、余裕を持って右側の男から繰り出された剣を右手に持った剣で軽く受け流した。左側の男は亮二が右側の男に集中していると考え力強く上段から渾身の一撃を打ち下ろした。
「なっ!」
男は血まみれで地面に倒れ伏す亮二を思い描いて勝利を確信していたが、自分の剣が亮二を切断するどころか体に触れる手前で止まっているのを見て男の顔は驚愕に彩られた。亮二は“不可視の盾形ガントレット”で受け止めた剣で傾斜を作って受け流すと、驚愕の顔をしたままの男の隙を逃さずに【雷】属性を纏わせた左手で顔面を殴りつけた。亮二の拳をモロに顔面に受けた男はもんどり打って倒れると、先の2名と同じ様に動かくなった。
「なんでそんなにデタラメな強さなんだよ!」
亮二の理不尽な強さに対して男が上げた叫び声に亮二は首を軽くかしげると「ノリと勢い?」と言いながら”ミスリルの剣”を縦横無尽に振りかざして男を翻弄する様に壁際に追い詰めると、最終的には剣を叩き折って剣先を喉元に突きつけた。
男は信じられないような顔で折られた剣と喉元に突き付けられた亮二の剣を交互に見つめると、実力の差を感じ取ったのかその場に腰が抜けたようにへたり込んで戦意を喪失するのだった。
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「後は、おじさんだけになったけどどうする?」
息1つ乱すこと無く涼しい顔で、1人呆然としている男に話しかけた。
「貴様、リョージだな。儂が誰だか分かっての狼藉か!」
我に返った男は亮二に対して踏ん反り返って「マーク!何をしておる!早く来い!」と叫びだした。
「え?おじさん誰?俺おじさんのこと知らないけど?もしかしてマークって玄関口に居た男の人のこと?」
「そうだ!いくら貴様がユーハン伯のお気に入りの冒険者と言っても所詮は【H】ランク。牛人を倒したってのもユーハン伯の作り話だろう。儂の息子のマークにかかれば貴様なんぞ瞬殺だ!マークは【D】ランク冒険者だからな!」
つばを飛ばす勢いで叫んでいる男に対して、亮二は申し訳無さそうに答えた。
「ゴメン。そのマークって人なら、多分あっちでお休み中」
「は?」
「大丈夫だよ!殺してないから!ちょっと気絶させて身ぐるみを剥いで転がしてるだけだから」
余りにもあっけらかんと説明した亮二の言葉にやっと理解が追いついた男は力が抜けるように膝をつくと、「お終いだ。やっと計画を実行したのに。こんな所で阻止されるとは。せっかく儂が築いたこの地位も名誉も終わりだ」と呆然とした様子で呟き続けるのだった。
ちょっと張り切り過ぎました




