コミカライズ記念SS 連載が始まるそうですね
もうすぐ始まるコミカライズが嬉しくて思わず書いてしまいました。
メタ発言がメインなのでご注意ください。
「ふははははー! ついに俺の時代がやって来た!」
亮二の高笑いが屋敷内に響き渡る。
いつも通りの奇行に、妻となり全てを受け入れる懐の深さを習得したカレナリエン達が集まってきた。
「リョージ様? 今度はなにがあったのですか?」
「おお、カレナリエンじゃん。ふっふっふ。ついに『異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている』がコミカライズ化され、そしてWeb連載が始まるのだよ! まさか書籍化だけでなく漫画にまでなるなんて! 俺の野望が全速力で走り始めた! もう、これは全力で走ってGoだぜ! まあ、論より証拠って言うからな。見て欲しい」
続々と集まってくる妻達にテンション高く説明しつつ、亮二はストレージからスマートデバイスを人数分取り出すと手渡していく。
カレナリエン達が渡されたスマートデバイスをのぞき込むと、そこにはカラフルな絵姿の亮二がおり、イオルスやカレナリエンが描かれていた。
「これは……。凄い絵姿ですね」
「リョージ様が可愛く描かれていますね」
「誰が書いたのかしら? こんな書き方が出来る絵師が王国にいるなんて知りません。それにとても不思議な魔道具ですね」
「シーヴ。あなたも私もいない」
「なんでだろうね?」
カレナリエンとメルタが感心している横で、エレナが驚愕の表情を浮かべていた。そしてクロがアイスクリーム片手に魔道具を使いながら自分を探すが、自分の姿を見つけられなかった。
「まだ、出番じゃないんだよ。1話なんて俺とイオルスくらいしか出ないんじゃないか?」
「ふっふっふ。やはり私が真のヒロインってことですね。分かってましたよ! 亮二さんをセーフィリアに連れてきたのは誰だと思っているんですか? 私だよ!」
スマートデバイスを一緒に見ながら亮二とカレナリエンたちがワイワイしていると、イオルスがドヤ顔で会話に参加してきた。
「でも、こうやって改めてみると、俺ってイオルスに強制的に連れてこられているよなー」
「な、なにを言っているんですか! 決して無理やりじゃないですよ! だって、扉も開いたし、チート能力だって渡したし、ストレージにたくさん入れましたよね? ミスリルの剣とか服とか腕輪とか、それに宝石もたくさんあげたじゃないですか。あれでカレナリエンさんとかメルタさんに婚約指輪を送れたんですよ? ほら! 私悪くない。むしろいい人! いや、人じゃないですけど」
亮二の何気ない一言にイオルスが焦った顔で自分をフォローし始める。
「冗談だよ。俺は感謝しているぞ。イオルスが呼んでくれたおかげで、可愛い妻たちに囲まれているからな。それに封印されていたイオルスとの思い出も蘇ったからな」
「やめてー。あれの封印が解けたのは大誤算なんです。まさか5巻のSS特典で書かれるなんて思ってませんでしたよ! しかもそのせいで私は――痛ぃ! なんでツッコみを入れたんですか!?」
イオルスが握りこぶしを作って力説していると、背後から鋭い一撃が襲い掛かる。
そう、マルコである。
その右手にはミスリルのハリセンが握られており、屋敷の窓から差し込む太陽の光を受けて幻想的なほど光り輝いていた。
「なにをネタバレしそうになっているんだよ! 読者の楽しみを奪うんじゃねえよ!」
「なっ! ついにマルコもメタ発言をするようになった! ……。痛ぃ! え? なんで俺まで叩かれるの? 痛ぃ!」
亮二の含み笑いをしながらの発言に、イラっとしたマルコが流れるよな手さばきでハリセンを振るう。
「うるせえ! お前さんが何度も作品の宣伝をするから、俺にも影響が出てきたじゃねえか! 俺は普通の門番で一生を終えたかったのに、お前さんのお陰で爵位持ちにになって、なぜか王国でも有名人になっちまったよ!」
「……。痛ぃ! 痛ぃ! 痛い! ちょっ! 最後のは銀のハリセンだろ! やめろよな! 本当に痛いんだからな。それと、マルコの出番は次か次くらいじゃないか? え? どうしたんだよ? ははーん。ちょっときになってるんだろう? 分かるぞ。1話なんて俺が……。痛ぃ!」
「だから、まだ見てない奴らがほとんどなんだよ! ネタバレすんじゃねえよ!」
懲りずにコミカライズ版1話の内容を告げようとする亮二に、マルコは右手でミスリルのハリセン乱舞を発動させながら、左手で銀のハリセンを取り出し全力で叩き込む。
「マルコ! それ以上は止めてあげて。リョージ様が白目剥いてるから!」
あまりに勢いよく叩きすぎたのか、さすがの亮二も気絶しており、慌ててカレナリエンが止めに入る。
「悪りぃ。銀のハリセンで乱舞をしちまった。え? 気分を落ち着かせるためにも俺にも読めって? ソフィア印のケーキも用意するから? 分かったよ。じゃあ、せっかくだからお言葉に甘えようか」
用意されたソフィアの新作ケーキとメルタが淹れた紅茶を飲みながら、スマートデバイスを操作しながら1話を読むマルコ。
「ふん。なるほどな。そんな流れでドリュグルの街にリョージがやってくることになるんだな。まあ、最初にたどり着いたのがキノコの森で正解だな。そこは褒めてやってもいいぞイオルス」
「はっ! 有難き幸せ!」
読み終わったマルコが声を掛けると、なぜか直立不動で最敬礼をしながら応えるイオルス。
そして気分良くしたイオルスが余計な一言を放った。
「転移先をランダムにしたのにマルコさんの元にたどり着いて良かったですよ。もし破壊王の元だったりしたら亮二さんの物語が始まる前に終わってましたからねー」
「ほー。転移先はランダムなのは本当だったんだな。そんなあやふや状態でリョージをこっちに呼んだのか?」
「……? え? ちょっと待って! なんでマルコさんの目からハイライトが消えてるの? ねえ、みんな助け……。えー。皆の目からもハイライトが消えてるー。止めて、マルコさん! そっちはお仕置き部屋ですよね!」
適当に転移させた疑惑を自ら吐露したイオルスの首根っこを捕まえ、そして引っ張っていくマルコ。
なんとか逃げようとするイオルスだが、亮二は両手を合わせてイオルスの無事を祈っており、カレナリエン達は亮二が危険な目にあったかもしれないとの事で誰も助けてくれないのだった。
「なんでー。このお話は『コミカライズが出来て良かったねー』とみんなでワイワイとする内容じゃなかったのー」
ワイワイとした話にするつもりだったんだけどなー。