5巻発売直前記念SS 最後の本が発売されますね
2019年1月10日に「異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている」の5巻が発売されます! それに合わせてのSSです。相変わらずメタ発言出まくりなのはお約束です! 物語に脈略がないのも特別SSなテンプレです! おおらかな気持ちで、大きな余裕を持ってお読みください。
「ふははははー」
亮二の高笑いが王都にある屋敷で響き渡っていた。相変わらずの突然の行動に婚約者から妻へとジョブチェンジしているカレナリエン達は、お互いに顔を見合わせて小さく頷くと亮二に近付いた。
「どうかされたのですか? いつもの様に楽しそうですが?」
「ふっふっふ。ついに『異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている』の5巻が発売されるのだよ! これで完結として物語は一区切りになるんだよ。まあ、俺の物語はこれからだけどもね!」
続々と集まってくる妻達に亮二は機嫌良くしつつ、手元にある書籍を渡す。カレナリエン達が渡された書籍を眺めると、そこには青年の姿になっている亮二と、お姫様抱っこされているイオルスが描かれていた。その他にも、ちびオスが楽しそうに飛んでおり背景も桃源郷のような爽やかな青さが広がっていた。
「これは凄いですね」
「ええ、本当に。私とカレナリエンが手を繋いでるわね」
「シーヴ。次のページに私達がいる」
「本当だ! でもクロちゃんがウェディングケーキを食べようとして、それに気付いたソフィアが激怒したんだよね」
カレナリエンとメルタが感心している横で、シーヴが自分の姿を探していると、クロがクッキー片手に器用にページをめくりながら教えていた。その横ではソフィアがライラとスイーツを作りながらも自分たちがどこにいるのか気になるようであった。
「はわわわわー。私の姿がこんなに大きく描かれてましゅ!」
「私は裏にいるのね。リョージ様が『ケモミミに尻尾なら「みこふく」が至高だよね』と言ってくれた時のだね。あれから定期的に着るようになったよ」
ソフィアとライラが話していると、マデリーネとフランソワーズも亮二から手渡された書籍をみて微妙な顔になる。
「これは……。私とリョージ様の絵……です……か? なぜ!? リョージ様が間違ってプロポーズした時と、あの時の恥ずかしい絵が描かれているの!」
「まだいいじゃないか。私なんて油断して、真の魔王として強制的に覚醒させられた時の絵だよ……」
背景に「ずーん」と縦線が入ったような二人を見ながら高笑いをしつつエレナが登場する。
「おーほっほっほ! ついに婚約者になった私の登場ですわね! どうですか、リョージ様! 結婚式で着たウェディングドレスですわよ!」
「お、おう。よく似合って居るぞ。エレナ。ちなみに袖口に血糊みたいのが付いているけど? まさか? マルセル王と?」
かなりのハイテンションで入ってきたエレナに、さすがの亮二も引き気味になっていた。そしてエレナの右袖に血糊が付いており、亮二が恐る恐るな感じで確認する。そんな夫の様子にエレナはニヤリと笑うと、爽やかな笑顔を浮かべて否定してきた。
「嫌ですわ、リョージ様。私がそんな暴力的な事をするわけないですよ。ただ、お父様ったら『リョージの奴! カレナリエンやメルタとばかり仲良くなりおって! それになんじゃ! ソフィアとライラにクロのすいーつ3人娘を儂の元に派遣するように言ったら「いや、彼女たちが嫌がるので」じゃと! 大公とは言え許さん』ですよ。前半はともかく、後半なんて私怨じゃないですか。なのでO・HA・NA・SHIをしてきただけですわ!」
鼻息荒く一気にまくし立てるように伝えてきたエレナに気圧されるように頷いた亮二は、側に控えていた執事のセバスチャンに秘薬を渡すとマルセルに届けるように指示をする。
「は、かしこまりました。ちなみに私との戦いも書かれているようですな? それで、その時の戦いの場などは描かれていないのはなぜでしょうか?」
「そりゃあ、この書籍を作った神である『編集ルナさん』の好みの問題だろう。あの方は女性の絵が好きだからな。だが、マルコは別だぞ! ほら、ここを見てみろよ!」
「ほう。幸福の神であるイオルス様をハリセン乱舞で叩きのめした後の決めポーズが素敵ですな」
「だろ! やっぱりマルコはイオルスにさえ全力でハリセン乱舞を叩き込める逸材なんだよ。あいつが動けば、たとえ話がメタ中心でも問題ないんだよ。なんせプロローグでも……。痛ぃ! なにすんだよ! せっかく俺がお前の素晴らしい実績を異世界にいる読者に……。痛ぃ! 痛ぃ! 痛いぃぃぃぃ! やめろよ! 最後に銀のハリセンでトドメを刺すのは。本気で痛いんだからな!」
セバスチャンと亮二が書籍をめくりながら話していると、亮二の後頭部になじみのある音が響き渡る。
「うるせぇぇぇ! なんだよハリセン乱舞って! 俺はアマンドゥス騎士団長救出や、魔王フランソワーズ登場時に活躍したじゃねえか! そっちを描けよ!」
絶叫しながら右手にミスリルのハリセンを、左手には銀のハリセンを構えているマルコの姿があった。そして亮二がさらになにか発言しようとするのをハリセンで叩いて止める。
「それ以上はなにも言わせねえぞ! それと諸悪の根源であるイオルス神はどこ行った?」
キョロキョロと探しているマルコの背後にイオルスが立ってニヤニヤとしているのが亮二の視線に入った。神の力を使って気配を消しているようで、亮二にだけ見えるようにしている気合いの入りようだった。
「イオルスなら――なっ! マルコ見えるのか!?」
「痛ーい! 酷いです! マルコさん! せっかく私が少し戻った神力を使ってまで気配を――はっ! 『ここに至高の盾を与えん! ゴッドシールド!』きゃぁぁぁぁ! そ、そんな神の盾が……」
マルコの右手に握られている金のハリセンから放たれた威圧感に危機感を感じたイオルスが両手を掲げて薄透明のシールドを展開したが、あっさりと破壊されてしまう。愕然と両膝をついた状態で項垂れているイオルスの首根っこを掴むと、マルコは隣の部屋に引きずり始めた。
「いやー! お仕置き部屋はいやー! 謝りますから! 書籍の313ページにあるようなお仕置きは……。痛ぃ!」
「ちょっとお前さんはこっちに来い。神であろうと許す気はねえ! リョージは、この後だからな!」
悲鳴を上げながらバタバタとしつつも、抵抗空しく引きずられていくイオルスを眺めながら、亮二は次は自分の番かと諦めたようなため息を吐くのだった。