4巻出版記念SS
本日(2018年4月10日)に4巻が発売されました! 本当に皆様のお陰です。感謝感謝です!
記念にメタ発言が混じっているSSを書きました。少しでも楽しんで頂けると幸いです。
「新たな物語が紡がれた! ……。痛ぃ!」
鼻息荒く叫んでいる亮二を、アイテムボックスからミスリルのハリセンを取り出したマルコが全力で叩きつける。
「とりあえず落ち着け」
「おい! マルコ! 落ち着かせるだけの為に、ハリセンで叩くなよ! 痛くないけどさ!」
「うるせえよ! 人んちに来といて、いきなり叫んでるんじゃねえよ! それでなにがどうしたって? また、なにかあったのか?」
頭をさすりながら勢いよく苦情を言ってくる亮二に、同じようにマルコがツッコむ。ここは王都に用意されたマルコの屋敷であり、サンドストレム王国の国王であるマルセルが、ツッコみ貴族として叙勲した際の褒美として、マルコに下賜されたのであった。
「なにか天啓が降りてきたから仕方ないだろ!」
「ん? イオルス神から啓示が?」
亮二の発言にマルコが色めき立つ。そんな様子を見ながら、亮二はストレージから一冊の本を取り出すとマルコに手渡した。
「これだよ! イオルスから送られてきたんだよ。見本誌だぞ! 発売前に作者に送られる、一般読者は見れない逸品だぞ。羨ましいだろ!?」
「前にも見たのと同じ綺麗な絵? ……だよな? やっぱり中の字は全く読めん。リョージの故郷で使われている文字なんだろ? 訳してくれ」
マルコが渡された本を確認しながら呟く。亮二から手渡された本はかなりの分厚さがあり、ここまで白い紙をが大量に使われている本は、セーフィリアの世界では高級なだけでなく貴重な品でもあった。
「イオルス神から贈られてきたんだよな?」
「ああ。これは歴史書だ。俺達が歩んだ道しるべが記載されている」
「歴史書? このカラフルな本が道しるべ? やっぱりお前さんの国はすごい技術をもっているな」
マルコが感心した様子で改めて本を眺める。知っている者からすると、イラストがふんだんに使われているライトノベルだったが……。
「そして、今回は婚約者が大量に増えるんだよ! なんでだよ! 俺の想定と違うじゃないか! 多くても5人だと思っていたのに! どう思うよ! マルコ!?」
「いや。それでも十分多いぞ? だが、お前さんの場合は王家が人数を調整する事になるだろうから、もっと増えるだろがな。増える分には王家も考慮するだろうけどな」
パラパラと本をめくっていたマルコに、亮二が予定が違っていると話しかけてくる。全く理解していない亮二を見て、呆れた表情で言い放ったマルコのセリフに亮二の動きが止まる。
「は? まだ増やす気?」
「お前さん次第だろ?」
「「話は聞いた」」
突然、2人が話をしている部屋の扉が開く。驚いた2人が扉に視線を向けると、そこにはカレナリエンとメルタが仁王立ちしていた。
「ナターシャさんに教えてもらいました」
「リョージ様の元に行かないと駄目な気がしました」
「わ、私はカレナリエンさんに引っ張られて……」
「私も同じく。あっ! リョージ様! 新作が出来ましゅ……。い、痛ちゃい。舌かみました……」
カレナリエンとメルタの後から、シーヴとソフィアが恐る恐るの感じで部屋に入ってきた。ソフィアは相変わらず、話の途中で舌をかんで涙目になっていた。
「リョージ。私の事を忘れてないよね?」
さらにライラとクロが部屋に入ってきた。ライラは頬を膨らませながらも、亮二に会えた嬉しさでブンブンと尻尾を振っており、そのツンデレぶりに亮二の頬が緩む。
「ライラ。自己主張しないと駄目。リョージ様。おはようからお休みまで背後で見続けている。そんな私はクロ」
「怖えよ! クロが本気出したら俺でも気付かないでしょ!」
ライラにお手本を見せるように自己主張をしてきたクロのセリフに、亮二が頬をひきつらせながら思わずツッコむ。
「まあまあ。表紙を飾っている2人は余裕があって羨ましいですわ」
「おお。メタ発言しながらエレナ姫も出てきたよ」
「いいじゃないですか! 私なんて1巻から表紙を飾っているのに、毎回帯で隠されるんですよ!」
「おい。なんでイオルスまで出てきたんだよ。出てくるなら、ストレージに本を入れなくてもいいだろ」
閉まっていた扉が再び勢いよく開く。そこにはエレナとイオルスが腕を組んでドヤ顔をしていた。
「だって! 出番がないんですよ! ひどいと思いません? 亮二さん」
「それだったら。私は婚約者にしてもらえる詐欺ですよ! いつまで待たせるんですか! しかも、私を使ってカレナは婚約者を増やしちゃうし!」
「お二人とも落ち着かれては……。ひっ!」
徐々に鬼の形相になっている2人にソフィアが声をかけると、睨みつけるように詰め寄った。
「なに? 自分は読者さんから『モブキャラにしないで』と言われてヒロインになった上に、私よりも先に婚約者になったからって! 悔しいじゃない! きー!」
「おお。初めてリアルに『きー』って聞いたよ」
エレナがハンカチを噛みしめながら叫んでいるのを、亮二が感心したように眺める。その隣ではイオルスがライラとクロに近付いて、舌打ちを連発していた。
「ちっ。ちっ! ちょっと表紙を飾ったからって調子に乗らないで下さい! ちっ!」
「いつも帯に隠れる駄女神は黙った方がいい」
「ちょ! クロちゃん。仮にも神様だよ!」
「きー! 『仮にも』ってなんですか! 神様が顕現してるのですから、もっと敬って下さい!」
「はいはい。凄い凄い」
「にゃー!」
クロの適当な返事にイオルスが叫びながら飛びかかる。軽やかにクロに避けられ、さらに逆上したイオルスが飛びかかろうとしたが、何かに気付いたようで同じ部屋にいる女性陣を見渡した。
「結局、ここにいる女性は全員が亮二さんの婚約者になるんですよね? ふふふ。いいでしょう。ここで私が力を解放すれば全てが無に……。痛ぃ! なにするんですか! マルコさん! そのハリセンは神であっても……。痛ぃ!」
「うるうせよ! さらっと世界を滅ぼそうとするんじゃねえ! ちょっとこっちに来い!」
「ちょっと待って! これって前と同じパターン! そんなテンプレは嫌ー!」
マルコがイオルスの首根っこを掴んで別の部屋に引きずっていく。それを見送った亮二が呟いた。
「能力解放しようとしたイオルスをハリセン一つで沈黙させるなんて、マルコは俺よりも主人公じゃね?」