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後日談3 恋を知った日 -エレナが語りますね-

「具体的なお題を貰った! これで書いてみよう」とのノリで書きましたが、思った以上に難しい_:(´ཀ`」∠):_


もっと簡単なお題をください! (えっ? 人任せにするな?)

「リョージ様。お気を付けて」


 カレナリエンがリョージ様を見送るために代表して喋っている。世界が崩壊するかもしれないとチビオスさんが言っていたのに、私は目の前では『テンプレだー』と言って楽しそうな顔をしている旦那様がいる。


「始めてあった時も、そんな感じだったわね」


 小さく呟きながら出会った事を思い出していた……。


 ---


 あれは私の愛犬白雪が誘拐された日。一瞬、目を離した隙に誘拐された白雪。辺境伯ユーハン様が総出で探索したにもかかわらず見付けられず、カレナリエンが指揮を執ってギルドの力も使って探してくれようとしていた。


 私が地方を廻るのに寂しくないようにと、二年前から一緒に生活をしている白雪の無事を祈る事しか出来なかった。じりじりと焦りだけが私の心を苛む(さいなむ)状態が続いていた時に、ギルド職員から『白雪様を発見!』との吉報が届いた。はやる心を抑えながら馬車に乗り込み現地に到着したら、私以外には懐かないはずの白雪が美味しそうに食事をしていた事にビックリしたのを覚えている。


「貴方が白雪を救ってくださったのですか?」


「はい。私が姫様の白雪を救出させて頂きました。ただ、白雪が姫様のご友人とは知らずに勝手に食事を与えてしまったことにかんしては謝罪を申し上げます」


 私の問い掛けにリョージ様が申し訳なさそうに答えて下さった。あの時は名前も知らずに単に礼儀の正しい少年としか思わなかったけど……。


「そう言えば名前を聞いておりませんでした。その方の名は?」


「はっ! リョージ・ウチノと申します。試練の洞窟において牛人を打ち取り、ユーハン様より名誉騎士の称号を授かっております」


 あの時に私は大きく心臓が跳ねる(はねる)音を聞いた。前日にカレナリエンから聞いたドリュグルの英雄と呼ばれる人物が目の前にいたのだから。思わずテンション高く話し掛けた事を覚えている。


「貴方がドリュグルの英雄のリョージ様! 憧れの英雄が白雪を助けて下さるなんてイオルス神のお導きなんでしょう! 私達は会うべくして会う運命だったのです!」


 確かこんな感じで言い切ったと思う。慌ててカレナリエンが止めに入ってくれて正気に戻ったけど恥ずかしかったのを覚えている。目の前のリョージ様は私の発言に呆気に取られているのか、私をジッと見ていた気がする。カレナリエンになにかを呟かれて焦ったような顔になってたけど。


 ◇□◇□◇□


 白雪誘拐事件からリョージ様とお目にかかる機会が増えた。リョージ様は私の知らない料理やでざーとをご存じで、しかも全てを作る事が出来る。ぷりんにあいすやぱふぇ。それにぜりーにちょこ、うどんにたこやき……。あぁ! 思い出しただけでもヨダレが……。


 カレナリエンとメルタがリョージ様と婚約した時は、カレナリエンを利用してリョージ様の知識と能力をサンドストレム王家に取り込もうと考えていたけど、同時にリョージ様への恋心が生まれたのはこの頃かもしれない。け、決して胃袋を掴まれたからではありませんよ? 


 ふとした時にリョージ様の事を考えている自分を発見した。会えば甘いすいーつに癒やされ、彼の表情にドキドキする。夢でも王子様として登場し私を抱きしめてくれる。そんな状態が数ヶ月続いた時にお父様からリョージ様と婚約する話がでた。二つ返事で了承した私をお父様は寂しそうにしながらも、領地持ちの伯爵となったリョージ様の特別監査官として派遣して下さる事を決められた。


 謁見の間で伝えられた時のリョージ様は普通にされていた。事前にお父様が手紙を送っていたのでしょう。でも、その後で完全武装したお父様が現れた時はビックリ。昔にお父様に読んでもらった物語で、姫を救いにくる勇者の話を思い出し、ワクワクしながら姫の台詞を言おうとした矢先にリョージ様に台詞を言われてしまった。だから腹いせにお父様を叱ったら一瞬悲しそうな顔をしたけど、表情を改めて冗談めかして話し始める。


「いや、ミスリル装備で固めているリョージと張り合おうとしたら、建国王の装備しか無いじゃん? 久しぶりに取り出したら痛みや汚れがあって、修理したら金貨二枚も費用が掛かったから払っといてね」


「『払っといてね』じゃありません! 取り敢えず、金貨二枚はお父様のお小遣いから引いて下さい! リョージ様。特別監査官として赴任するエレナ=サンドストレムです。末永くよろしくお願いします。いつでも、夜でも、お部屋に来て下さいね」


 ごめんなさい。お父様。私はどうしてもリョージ様の元に嫁ぎたいの。ドリュグルの英雄でなくても、領地持ちの伯爵じゃなくても、高ランク冒険者じゃなくなったとしても、サンドストレム王国(・・・・・・・・・)の人間(・・・・)でなくなったとしても。


「リョージ様が『お前の事は心底嫌だ』と言われれば、枕を涙で濡らしながら身を引きますが?」


「嫌な訳がないでしょう。エレナ姫って強引ですね」


「あら? 強引でない女性はおりませんよ?」


「ゆるさんぞ! リョージ! エレナを娶ると言うなら儂と尋常に勝負だ!」


 私とリョージ様のやり取りを聞いていたお父様が英雄王の装備でポーズを決めながらリョージ様に言い放つ。私は一度は言われてみたい台詞を今度は自分から言い切った。


「分かりましたわ! リョージ様を娶る為に勝負させて頂きます。お父様! 尋常に勝負!」


 宝物庫から内緒で持ってきた建国王の妻であるエリナ=サンドストレム様の疾風のレイピアを抜いて、お父様に攻撃を始めた。呆れた表情で謁見の間を出て行くリョージ様を見ながら私は笑みを浮かべる。


「覚悟して下さいね。リョージ様。サンドストレム王家の女性はお淑やか(おしとやか)ではありませんわよ!」


 巻き上がる竜巻を見ながら、お父様の悲鳴を聞きながら私はこれから楽しくなるであろうリョージ様との未来に思いを()せた。もう私は止まれません。だって恋を知ってしまったのですから。

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