399話 大団円(中編) -まだ引っ張るのですね-
本当にゴメンナサイ><
再び1ヶ月近く更新出来ませんでした。そして最終回は前中後編となりました。
「遅いですよ! リョージ様! そろそろですよ! 早くしてください!」
亮二達が部屋に入るとエレナとマデリーネが焦った表情で待っていた。やっと全員が揃った事を確認したエレナは、安堵した表情を浮かべながら軽く睨んできた。本気で怒っていないと分かっている亮二は、両手を合わせつつ軽く謝罪しながら話しかける。
「ごめん! 遅くなった。二人はなにをしてたの?」
「私はお父様と話し合いをしてきましたわ。この期に及んで『リョージに娘をやるのは我慢ならん!』と言い出すのですから。せっかくの衣装が乱れてしまいましたわ。安心してください。お父様は見えるところは無事ですから」
「え? エレナ姫? 『見えるところは無事』とは? え? 気にしなくていい? わ、分かりました。私も父上とお話しをしました。結婚式が終わった後は帝国の領土を数名の共と一緒に漫遊するそうです」
「えっ? 漫遊?」
話し合いと言いながらもエレナのウエディングドレスの裾に血の跡を見かけ若干引き気味だった亮二だったが、それよりもマデリーネの父親の元皇帝であるジェルマン=ザイツェフが帝国内に漫遊に出かける話に目を輝かせた。
「なにそれ! 俺も漫遊したい! 一緒に行っても……」
「リョージ様?」
「い、一緒には行かないよ? ダイジョウブダヨ。アンシンシテヨ。ハハハハハ」
いきなりハイテンションで一緒に行こうとしたのを察知したエレナが、咎めるように声を低くする。目が笑っていない事に気付いた亮二は、冗談である事をアピールしながら誤魔化すように乾いた笑いを出していた。
◇□◇□◇□
「では、新郎及び新婦達はこちらへ!」
結婚式場に現れた亮二達を見て、轟くような歓声が響きわたる。王都サンドストレムに建築された式場は、国庫の三パーセントを拠出して建築されており、その他にも帝国や他の諸国、平民など有志での寄付もあって莫大な金額が注がれていた。
「何度見ても絢爛豪華だよな。この金があったら別の事に使えばいいのに」
「神と魔王、王国と帝国の姫。それに伝説と言われている白狼の娘との結婚ですよ。それにエルフや魔族に人間と種族も豊富です。世界平和を象徴する式典として各国が期待しています。そこまで考えると豪華ではないのですよ。それに結婚式が終われば世界会議の会議場として毎年利用しますからね」
亮二の呟きにエレナが笑いながら応える。今後も利用されるとの事で納得し、集まっている群衆に視線を向けると多種多様な種族が老若男女問わず嬉しそうな顔でこちらを見ていた。
「えっ! ドワーフ? 獣人もいるじゃん! ひょっとして妖精もいたりする? ハーフリングも?」
「え? え、ええ。もちろんいますよ。会われた事はありませんか?」
仲良く肩を組みながら酒を飲んでいるドワーフ。嬉しそうに楽器を演奏しているエルフと、その横で踊っている獣人達やハーフリングを見て愕然とした声を上げる。突然、崩れ落ちた亮二に一同は驚きつつもカレナリエンが代表する形で答えた。
「会った事ないよ! なんてこった……。まさか俺とした事が……。こんなテンプレ三昧の状況に気付いていないなんて……」
「そ、そこまで落ち込む事ですか?」
カレナリエンの答えを聞いて心底落ち込んだ様子でブツブツと呟いている亮二に、メルタが問い掛ける。その声に亮二は勢いよく顔を上げると唾が飛ぶ勢いで熱く語り始めた。
「当たり前じゃん! 俺はテンプレ収集率は一〇〇パーセントと思っていたのに! ドワーフとの武器作りや獣人との仲良くなるイベント! ハーフリングとの冒険! 他にも色々あるじゃん! 分かる? ねえ、分かる? これらのテンプレを忘れていた俺の辛さを分かってくれるよね? ねぇ!」
「あまり分かりません。ですが、用心が必要な事は分かりました。みんなフォーメーションαよ」
「「「了解!」」」
「ちょ、ちょっと! なに? フォーメーションαって!」
亮二の叫び声を無視するように一同はお互いに頷き合うのだった。
◇□◇□◇□
「んん! そろそろ前に進んでもらっても?」
「「「ご、ごめんなさい」」」
咳払いをしながら声を掛けてきた神官に申し訳なさそうに謝罪をした一同は、イオルスが待っている場所に向かう。今回の結婚対象でもあるイオルスだったが、祝福を授ける役目を担う為に祭壇で待っており、入り口付近で楽しそうにしている亮二達に頬を膨らませていた。
「みなさん。ずるいですよ! 私も混ざりたかった! ぷんぷんですよ!」
「仕方ないだろ。神の使徒への祝福は神自身がする必要があると、テンション高く力説したのはイオルスじゃん」
「そうでしたね。私が言い出したんでした。美味しいところを持っていくつもりだったのに、冷静に考えたら祝福を与えるのはオルランドさんでも良かった気がします……」
亮二のツッコミにイオルスは分かりやすいほど落ち込んだ顔をする。一同は苦笑しながらも軽く流しつつ話しかける。無視された事に軽く気付いた風な顔をしながらも、気合いを入れ直しているイオルスにエレナが話し掛ける。
「それじゃあ、ちゃちゃっと始めましょう。イオルスさんは祝福の言葉をお願いします」
「そうですね。早くしてくださいイオルスさん」
「えっ? 軽く流しすぎじゃないですか? 本気で泣きますよ?」
「あとで身内でスイーツパーティーをするから泣くなよ。それよりも全員がイオルスの言葉を待ってるぞ?」
一同の対応で泣きそうになっているイオルスに、亮二がフォローしながら注意を促す。慌てて周囲を見て自分達の視線が集中しているのに気づいたイオルスは軽く咳払いをし、群衆に向かって語りかけた。
「では、これより我が使徒である亮二さんの結婚式を行います。あっ! 私も結婚するメンバーの一人ですからね! その辺りは譲れませんよ! 皆さん分かってますね! 亮二さん達みたいに軽く流したら激おこですよ!」
「おい。素が出てるぞ。みんながキョトンとした顔になってるじゃないか」
イオルスが結婚すると聞かされていなかった群衆は一瞬静まり返ったが、その後に天へも届くような大歓声と変わった。
「おぉ! 凄い大歓声」
「当然でしょう。イオルスさんが現人神として、セーフィリアに残ってくださるのですよ」
「亮二さんへの感謝の気持ちが、神の力になるのを感じます。さすがですね」
亮二の感想にカレナリエンが満面の笑みで答える。イオルスも群衆に手を振りながら笑顔で答えていた。そんな様子を遠目に見ていたマルコが近付いてきて話しかける。
「おい。そろそろ話を進めろ」
「えっ? 『話を進めろ』だって? まさかマルコからメタ発言が……。痛ぃ! なにすんだよ! 最後まで話してないだろ! まさかメタ発言の意味も知ってるのか?」
「『も』ってなんだよ! 知る訳ないだろ! だが、大体お前がそんな感じで喋るときは、ろくな事を考えていねぇ! さっさと式を進めろ! ここにいる全員が待ちわびてるんだよ!」
マルコの台詞に亮二が嬉しそうに応えたが、途中でミスリルのハリセンでツッコミを受ける。その二人の様子を眺めながらイオルスが感心したように話し始めた。
「相変わらずマルコさんのツッコミは冴え渡ってますね! 亮二さんが防御する間も与えずにハリセンを叩き込む。これほど素晴らしい技量をお持ちのマルコさんには神である私が称号を……。痛ぃ! 痛い! ちょっと! マルコさん! 左手に持ってるハリセンは銀製でしょ! それは反則です! 本気で痛いですよ!」
「うるせぇ! なにが称号だよ! お前がもっとリョージの手綱をシッカリと握っていたら、俺に迷惑が掛からなかったんだよ!」
「えっ? それは私と関係な……。いえ、なんでもありません」
銀のハリセンで叩かれたイオルスが涙目で抗議すると、マルコから理不尽な返事がある。さすがに抗議をしようとしたイオルスだったが、鋭い視線で金のハリセンに持ち替えたマルコに青い顔で後ずさった。
「おぉ! あれが教祖様の実力か」
「そうですね。あれは究極奥義の『金銀両刀ハリセン乱舞』の前触れかと」
「ハリセンなのに奥義名に『刀』と入っているのも教祖様らしいですな」
「私達も早くマルコ様にツッコミをもらえるようにならないと。そのためには信徒を集める必要がありますね」
壇上で亮二やイオルスを追い回しているマルコを見ながら、信徒と名乗る者達は羨ましそうに話しているのだった。
次の後編で遅くなった理由をお伝え出来ると思います。