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398話 大団円(前編) -えっ? 最終回じゃないのですね?-

公私ともに色々とバタバタしており1ヶ月近く更新が出来ておらず申し訳ありません。

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次で終わりと書いたが、あれは嘘だ! 前後編になったのだ!

「あれから1年か……」


 亮二がバルコニーから外を眺めながら呟いていると、呆れたような(いそ)がすような声が耳に届いた。


「早くしてください! リョージ様! みんな待ってますよ!」


「えぇ……。準備で頑張ったから、あとはユックリしてもいいじゃん……」


「駄目です! これからが本番の結婚式ですよ!」


 疲れ切った表情の亮二に婚約者にカレナリエンが声を掛ける。翠の民族衣装を着て腰に手を当ててつつ、頬を膨らませながらこちらを睨みつけている様子に、亮二は愛おしげに見ながらユックリと腰を上げた。


「よっこいっしょ! じゃあ、結婚式場に向かおうかね」


「ふふっ。年寄り臭いですよ」


 ふくれっ面から笑い顔になったカレナリエンが手を差し出してくる。亮二も笑いながら差し出された手を繋ぐと、式場に向かって歩き始める。亮二達の結婚式は神都と王都で大々的に行われると世界各国に公布されており、神都で行われた教皇オルランドとの合同結婚式は各国主賓や枢機卿、集まった信徒達から盛大な祝福をされ終了した。


「神都で盛大にしたからいいと思うけどな」


「神都はイオルスさんが主役でしたからね。オルランドさん達は『注目を浴びなくて助かった』と喜んでましたね」


 合同結婚式の前にイオルス顕現と亮二が使徒である事も伝えられており、結婚式では祝福を授ける役としてイオルスは大活躍していた。


「あの時ほど群衆が怖いと思った事はない……」


「ふふっ。そうですね。でも、皆さんの顔は本当に嬉しそうでしたよ」


 セーフィリアの神であるイオルスの姿を一目見ようと集まった信徒達で神都の宿泊機能はパンクしており、一般信徒の家も開放して対応をしていた。亮二達もオルランドの要請を受け、食や住居の提供を行っており、特に食事は人が集まりすぎて抽選になるほどだった。

 最終的にはイオルスが登場して神との握手か、亮二の食事を取るかの選択制となったが、半分以上が亮二の食事を選んでおり、結果を知ったイオルスが屋敷に引きこもって出てこない小さなイベントも発生していた。


「あの時はイオルスを引っ張り出すのが大変だった……」


「そうですね。『どうせ私は食事に負ける神ですよ』と言ってましたが、リョージ様がリンゴアメをチラツかせたらすぐに出てきましたよね」


 当時の事を思い出しながら笑っていたカレナリエンだったが、一年前の記憶を辿って苦笑を浮かべてた。


「先ほどのリョージ様の台詞ではないですが、あれから一年経ちましたね。よく無事に今日が迎えられたと思います」


「だろ? やっぱり、神都での出来事はインパクトが大きかったよな」


 カレナリエンが少し遠い目をしながら呟いたのを聞いて、亮二も笑いながら賛同していた。神都で発生した神と魔王の同時降臨は各国に衝撃を与えていた。緊急で首脳会議が開かれ、その結果『イオルス神の導きにより魔王フランソワーズは魔族とその他の種族との融和に目覚めた』とされ、その証として魔王自身が使徒である亮二と結婚する事が発表された。


「フランとの結婚も本人が望んだとはいえ、魔族側が了解するとは思わなかったよなぁ」


「他人事みたいに言わないでください。リョージ様が魔国に乗り込んで『俺とフランの邪魔をしたら殲滅するぞ!』と啖呵(たんかを切ったじゃありませんか」


 自分の事ではないような話し方に、カレナリエンが呆れたように応える。『あの時は一緒にいて生きた心地がしなかった』と話す婚約者に亮二は笑いかけながらツッコんだ。


「俺は知ってるぞ。倒されている魔族を見てカレナリエンはもの凄く嬉しそうな顔をしていた」


「それはもう! 昔にやりあった魔族が次々と瞬殺されていくは爽快でした!」


「殺してないからね! 人聞きの悪い事を言わないで!」


 楽しそうに亮二とカレナリエンが話していると、前方から頬を膨らませたメルタが近付いてきた。


「リョージ様! カレナリエンとばかり話をすのはずるいですよ。私との時間も作ってください!」


「ごめん! メルタの準備は終わったの?」


 胸元から肩までを大胆に露出させている純白のウェディングドレスを着ているメルタだが、当初は大胆すぎるデザインに拒絶を示していた。だがドレス作成には亮二が生地選びとデザインを担当している事。それと自分の拒絶した顔を見て心底落胆している亮二の姿を見て、メルタはため息を吐きながら着る事を受け入れたのだった。


「くっくっく。あの時の自分の演技力に最優秀男優賞を渡したい」


「なにかおっしゃられました?」


 悪い顔をしている亮二にメルタが問い掛けたが『なんでもない』と伝えると、メルタの全身を記憶に残すように眺める。絡みつくような視線を感じて若干赤くなったメルタは、誤魔化すように亮二の腕に抱きつきながら出会った時の事を話し始める。


「リョージ様との最初の出会いはお金の受け渡しでしたよね?」


「ああ。もちろん覚えているよ。冒険者ギルドでの宴会のお釣りの小銭を渡されたよね」


「小銭と言ってはいけない金額でしたけどね」


 亮二の返事にメルタが苦笑する。一般家庭数ヶ月分の収入を小銭と言い切たのを聞いて、メルタは悪い顔を作って話し始める。


「では、金貨を小銭と言い放つ素敵な旦那様は、いっぱい金貨をお持ちでしょうから、お小遣いを減らして問題ないですよね?」


「酷い! それとこれは話は別じゃん! 小遣いを減らされたら近くのダンジョンを殲滅して、小遣い稼ぎをするからね!」


「私の負けです。冒険者いじめをしないでください」


 負けを認めたメルタは亮二の腕に自らの胸を押しつけるようにしながら耳元で謝罪をするのだった。


 ◇□◇□◇□


「あー! メルタさんずるい! 私もリョージ様と話をしたい!」


「私も求める。メルタだけずるい」


 メルタと亮二がイチャつきながら歩いていると、シーヴとクロが駆け足で近付いてきた。シーヴは庶民である事をアピールするために町娘風のウェディングドレスを着ており、クロは子供バージョンでフリルをふんだんに使ったゴスロリ風のドレスになっていた。


「よく似合ってるよ。シーヴ」


「そ、そう? 貴族様みたいなドレスじゃなくて動きやすくていいね。私が庶民担当で本当に良かったよ」


 亮二の婚約者達は王族を始めとして多様な身分や種族の者がおり、今回の結婚式ではあえてそれらをアピールする衣装をウエディングドレスとして着る事が決まっていた。


「リョージ様。私はどの枠?」


「クロはどの枠だろ? 兄弟枠?」


「それはないですよ。クロは……。本当にどの枠なのでしょうね?」


 集まってた四人は首を傾げながら考えるのだった。


 ◇□◇□◇□


「リョージ様! 新作のすいーつを作りましたよ!」


「おぉ! どれどれ……」


「ソフィア! まだその格好なのですか! 早く着替えてきなさい!」


「ふぇぇ! す、すいません。どうしてもリョージ様に新作を見て欲しくて……」


 髪の毛がボサボサな上に、鼻の頭には生クリームを付けたまま、手にはスイーツを持った状態でソフィアがやってきた。亮二は新作のスイーツを見てテンションを上げたが、隣にいたメルタは汚れている服装に眉を上げながら叱責する。


「うぅ……。そ、そうでした。あっ! そうだ! 『まじかる装着変身!』」


「おぉ! 変身ペンダント! 今更だが、本当にそれで良かったのか?」


 突然叫んだソフィアが淡い光に包まれる。婚約者騒動の獣人装備とは違い、スイーツを作る時の服装をアレンジしたウエディングドレスだった。


「はい! 私はスイーツを作るのが仕事なので、これでバッチリです!」


「鼻の頭のクリームは付いたままだけどな」


 亮二が笑いながらソフィアの鼻についている生クリームをすくって食べた。突然の亮二の行動と、生クリームが付いたままだった事に気付いたソフィアは全身を真っ赤にしながら『はわわわ』と叫びながら走り出し、途中でつまずいて転ぶと亮二を涙目で見て再び走り出した。


 ◇□◇□◇□


「人間は結婚式を二回もするとは興味深いな」


「それは私も思った。結婚式をする事自体もビックリだけど。リョージと(つがいになるだけなのに儀式が必要だなんてね」


 なかなかやってこない魔王フランソワーズとライラが待機している部屋に入ると、二人はスイーツを食べながらくつろいでいた。亮二は好き放題に言っているのに同感しながら話しかける。


「俺もそれは思うけど、色々な種族や身分があると人間はややこしくなるんだよ。とりあえずスイーツはアイテムボックスに入れて渡すから式場に行こうか」


 亮二は出ていたスイーツを収納すると二人に手渡す。ため息混じりに立ち上がったフランソワーズは、気分を変えるように自分の服装を亮二に見せつけながらクルリと回る。


「どうじゃ? リョージが選んでくれたウエディングドレスは?」


「完璧! やっぱりフランは、なにを着ても様になるね!」


 亮二の率直な賞賛に頬を染めて嬉しそうに頷くフランソワーズの衣装は、赤と黒が入り交じった着物を基調としたウエディングドレスになっており、大人の魅力を十分に醸し出していた。


「リョージ。フランを見過ぎ。私も我慢して衣装を着てるからね!」


「分かってるよ。ライラもよく似合ってる。いつも二倍以上は可愛いよ。やっぱりケモ耳には巫女服だよね!」


「ふ、ふん。調子のいい事言って! 知らない!」


 怒っている表情をしながらもライラの耳と尻尾は機嫌が良い時の状態でピコピコと動いており、亮二はその様子を嬉しそうに見ていた。


「せっかくだから一緒に式場まで行こうよ。両手に華は男のロマンだからね」


「なにを言う。両手どころか両足を足しても足りないではないか。だが、しばらく一緒なのは悪くない。ユックリと時間を掛けて式場に向かおうか」


 艶やかに笑いながらフランソワーズは亮二と腕を組む。それを見たライラは反対側で手をつなぎながら身体を密着させて式場に向かうのだった。

今度こそ次で終わりです。本当に!

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