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394話 謁見の間での大宴会 -色々と考えますね-

イオルスの行動にはいつも驚かされます。

文字通りもの凄い勢いで飛んでいったイオルスに唖然としていたラッチスだったが、ぎこちない笑みを浮かべると亮二に話しかけてきた。


「あ、あの。リョージ殿? 今のイオルス神のお話は冗談ですよね? ですよね? 嘘だ! 嘘と言って下さい!」


「いや。俺に言われても……。当人に確認して下さいよ」


亮二の返答にラッチスは頭を抱えながら叫んだ。


「他人事? なぜですか! イオルス神は魔王の復活を感じ取り、顕現されたのではないのですか! 教皇! 貴方なら分かるはずだ!」


「いや。それを僕に言われても……。声を掛けられて儀式をしただけだから。その辺はイオルス神に確認して下さいよ」


「そんな二人揃って他人事みたいに……」


「だってなあ」


「ねえ」


亮二とオルランドの返答にうなだれるながら崩れ落ちたラッチスを、周りにいた枢機卿達が慰めだした。


「諦めましょう。ラッチス卿」「そうですよ。イオルス神の表情を見れば、恐れ多いですが恋する乙女の顔でしたよ」「リョージ殿にお願いすればいつでもお会いできるのでは?」


皆から慰められていたラッチスは、『亮二にお願いすれば』との発言に勢いよく顔を上げると、()がりつくようにしながら必死の表情で頼み込み始めた。


「お願いです! リョージ殿! リョージ様! 貴殿から……。いや! 貴方様からイオルス神にお願いをしてもらえませんでしょうか? 神が顕現しているのに神都に居ないなど、信徒達にどう説明すればいいのかも分かりません。本当にお願いします! このままではリョージ様のお屋敷が神都になってしまいます」


「「「我らからもお願いします!」」」


ラッチスだけでなく周りにいた枢機卿達にも頭を下げられた亮二は、その勢いに若干押されながら頷いた。


「わ、分かったから。取りあえず、イオルスが戻ってくるまで待とうよ。俺も自分の領地はともかく、屋敷まで信徒達に押し掛けられたら困るから」


「そうだね。その方がいいだろうね。じゃあ、休憩も兼ねて学院の時みたいにリョージ君が飲み物とかを用意してくれるかな? 無理ならこちらで用意するけど? イオルス神について話でもしようよ」


亮二からは言質を得たと思った一同が安堵のあまりヘタり込んでいると、オルランドが休憩を宣言してきた。飲み物を用意するようにとお願いされた亮二は、学院時代を思い出しながら軽く頷くと土属性魔法を使い、次々とテーブルや椅子を作り出しながら飲み物や食べ物を並べていくのだった。


◇□◇□◇□


「なんの騒ぎですか?」


カレナリエンやメルタ、エレナを始めとする婚約者達が謁見の間に戻ると大宴会が始まっていた。意気消沈した表情で入ってきたイオルスも驚いた顔をしており、一同が硬直していると亮二が笑いながら話しかけてきた。


「遅かったね? こっちは盛り上がってるよ」


「盛り上がっているのは見れば分かりますが、これは一体?」


カレナリエンが代表して質問すると、亮二が経緯を説明してくれた。イオルスが亮二の元に嫁ぐとの発言に、ラッチスが錯乱状態になった事。引き留めようとお願いをしていたが、イオルスが決める事と言われて崩れ落ちた事。


「ラッチスさんが錯乱? そ、それは凄い話ですね」


「でしょ? それで、取りあえずはイオルスが戻ってくるまでは『休憩でもして待とう』となって、オルランドから『飲み物用意できる?』とお願いされたから用意した感じ」


亮二の説明を聞いたカレナリエン達は改めて謁見の間を見渡していた。そこには所狭しとテーブルと椅子が用意されており、テーブルには亮二が今まで作って料理やスイーツ、旅先で購入した様々な物が置かれていた。


「あれ? これはスイーツなのですか?」


「おっ! さすがソフィア! 気付いてくれた? オルランドの結婚式ではウェディングケーキを用意するだろ? それだけじゃなくて、他にも色々と用意しようと思ってさ! 果物に見えるスイーツを作ってみたのだよ! どうだね!」


「凄いです! 見た目は果物にしか見えません! 器は果物の皮を使って中身はゼリーにしているのですね! これは流行りますよ!」


ソフィアが興奮したように感想を述べると、アイテムボックスからスケッチブックを取り出して写生を始めた。亮二がのぞき込むと、恥ずかしそうにしながらも見せてくれた。


「どうですか?」


「上手いじゃん! これ全部ソフィアが描いたの?」


「はい! スイーツを作るときは色合いも大事ですので。リョージ様にもらった色鉛筆とスケッチブックは私の宝物なんですよ!」


亮二の賞賛に照れくさそうにしながらも、ソフィアは嬉しそうに説明を始めるのだった。


◇□◇□◇□


「それで、イオルスはなんでそんなに落ち込んでるの?」


「ああ。それはですね……」


婚約者達の最後尾で顔に縦線が入るくらいに落ち込んでいるイオルスを見た亮二がカレナリエンに確認すると、苦笑しながら説明をしてくれた。


「イオルスさんから『私も婚約者の中に入れて下さい』とお願いされたのですが、婚約者連盟会議の緊急議題として扱い全会一致で却下したからです」


「なに! その婚約者連盟って! 前も似たような事を言ってたよね? えっ? またスルー?」


亮二のツッコミに周りはスルーしていたが、イオルスは勢いよく顔を上げると、亮二に近付いて涙目で話しかけてきた。


「聞いて下さいよ! 亮二さん! 私のお願いに『イオルスさんは不老不死だからリョージ様が魂になってからでもいいですよね』と、皆さんが爽やかな笑顔で全会一致で拒否するってどう思います!」


「当然です! イオルスさんは神ですよ! 若さをそのまま保てるじゃないですか! じゃあ、私たちが居なくなってからでもいいでしょ? ねえ、みんな……。あれ? どうしたの?」


カレナリエンから回答があったが、それ以外の婚約者達は微妙な表情をしていた。


「じゃあ、カレナも補欠でいいかな?」


「突然の裏切り! 酷いじゃない! 私が第一夫人は確定なのに、急になにを言うのよ!」


「だって、カレナはエルフじゃない。私たち人族と違って長命でしょ? だったら、イオルスさんと同じ扱いでいいと思うの」


「計ったわね! エレナ! それに皆もグルなの?」


カレナリエンの悲鳴にエレナが悲しそうな表情を浮かべながらも、口元には小さく笑みを浮かべていた。他の婚約者達もあからさまな賛同ではないが、同意しているようで小さく頷いていた。


「ぐっ! じゃあ、リョージ様が成人を迎えるまで、あと一年あるから話し合いましょう! 結婚式の準備もあるからね」


「そうね。それにしても残念ね。リョージ様が成人なら、すぐに結婚の準備に入らないと駄目だから検討する余地もなかったのに」


「でも、エレナ様は順番で言ったら三番が二番になるだけなのに気付いてないのかな?」「それを言ったら駄目。本人は全く気付いてないから。一番のつもりなのよ」「だからメルタさんは黙ってるのか」


カレナリエンが悔しそうにしながら提案すると、エレナが勝利を確信して高笑いをしていた。その様子を他の婚約者達がヒソヒソと話をしていると、イオルスが話しに参加してきた。


「なるほどですね! リョージさんが成人を迎えれば良いのですね! 『我、創造を司る者。万物に命を与えし者。彼の者への間違いをここに正す。我はイオルス。全てを統べし者』」


突然、詠唱を始めたイオルスの身体が輝き始め、一同が息を飲んでその様子を眺めていた。


「おい。イオルス。なにをしようと……。な、なんだ?」


「ふぅ。これでバッチリです! やはり、私にかかれば全てが上手くいくのです! さあ! 亮二さん。『ステータスオープン』と唱えて下さい」


「え? あ、ああ。ステータスオープン! これがどうかしたのか? えっ? なっ!」


亮二がイオルスに促されるままにステータスを表示させた。出てきた内容を上から下に確認を行い、なにげに視線が止まった事に首を傾げて考えていると、その理由が分かって叫び声を上げるのだった。

ゆっくり何度も確認しよう。

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