37話 ギルドに向かう道での再会 -出会いは突然ですね-
2015.08.23追記
シーヴがギルドに依頼したのをポーション作成ではなく、薬草取得に変更しました。
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考えが中々まとまらないですね
-それにしても今回の報酬は規格外だよな。それとも牛人ってそんなに脅威だったんだろうか?それほど強くは感じなかったから、やっぱり王都に行かせるための先払いってことだろうな。取り敢えずはユーハンの頼み事を1つずつ片付けていくか-
亮二はギルドに向かいながら先ほどの出来事を振り返っていた。家を渡すには準備が必要との事で1週間後となった。亮二としては宿屋に1ヶ月分を先払いで押さえているのでどちらでも良かったが。
「まずはシーヴの依頼完了報告だよな。それからストレージに収納している魔物の買い取りだろ。ポーションについてもどんな材料が必要か調べないと行けないし買う必要もあるしな。買う時はアウレリオの所でまとめて買えばいいか」
「あっ!リョージ君!」
「魔物の買い取りってどの位になるんだろうな?ポーションの材料費くらいにはなってくれたら良いけど、魔石だけでも別に除けとくか?」
「リョージ君!ねぇ!リョージ君ってば!」
今後の行動を考えながら歩いていた亮二は話しかけられていることに気づいておらず、耳元で叫ばれて始めて自分への声だと気づいた。
「おぉ、シーヴか。今からギルドの依頼完了報告をしに行くとこだったんだよ。お父さんの具合はどうだ?」
「うん。ギルドの人が薬草をくれて、それに依頼報酬も払わなくていいって。伯爵様が代わりにリョージ君に払ってくれるんだってさ。でもね、お父さんに薬草を渡して飲んでもらったんだけど傷が治らなくて、今までみたいに鎚が振るえないんだって」
亮二の質問に暗い顔をして答えたシーヴの顔を見て亮二は少し考えるとギルドに行くのを後回しにしてシーヴの父親に会いに行くことにするのだった。
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「初めまして、君がリョージくんだね。今回はシーヴが迷惑を掛けてみたいで申し訳なかった。それにしても君は物凄く強いんだね。広場での演舞を見たけど素晴らしかったよ。もし良かったら君が武器を新たに作る時が来たら私にも声を掛けてくれないか?かなり勉強させてもらうよ」
シーヴの父親が経営する店の扉をくぐると店の奥から若い男性が出てきた。その男性は亮二を見ると駆け寄ると、一気にまくし立てる様に挨拶を行った。その勢いに亮二は「初めまして。出来ればお名前を教えて頂けますか」と苦笑いと共に答えると、若い男性は怪我をしている方の手で頭を掻こうとして痛みに顔をしかめながら名前を名乗り始めた。
「いきなり失礼な事をしたね。”ドリュグルの英雄”である君に会えて気分が高揚し過ぎた様だ。シーヴの父親のコージモだよ。ちなみに今日はなぜここに?」
「シーヴに聞いたんだけど、薬草を飲んでも傷が治らないんだって?」
亮二に質問に一瞬悲しみの表情を浮かべたが、シーヴが見ていることに気付くと無理やり笑顔を作って「大丈夫だから」とシーヴの頭を撫でながら亮二の方に向いて疑問を口にした。
「ああ、確かに傷は治ってないけど鎚を振るうには問題ないよ。何か依頼かい?」
「今の所は、お願いしたい事は無いんだ。でも、コージモさんの様子を見ていたら鎚を振るえるって言っても“取り敢えずは”って感じだよね。そんな状態で俺が仕事を頼んで何が出来るの?」
コージモの回答に少しからかう様な口調で答えるとシーヴが怒りの口調で話に割り込んできた。
「ちょっと!リョージ君!お父さんになんて事を言うの!お父さんはドリュグルの街で一番の武器屋で鍛冶師なんだからね!」
「でも、今の状態じゃどう見ても無理だろ?」
「無理じゃないもん!お父さんはドリュグルの街で一番なん…「じゃあ、腕が治ればドリュグルの街一番の鍛冶師に戻れるんだね?」」
「そうだよ!」
「分かった。コージモさん、これは俺が持っている秘薬です。飲めばその傷は間違いなく治ります。ただ、この薬は物凄く高価です。買いますか?」
目に大粒の涙を浮かべながら抗議してきたシーヴの話を途中で遮ると亮二はストレージからポーションを取り出すのだった。
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- この少年は何を言っているのだろう?私の腕が治ると言ったのか。医者でさえ『握力が以前の様に戻ることはないでしょう』と匙を投げた右腕が元に戻ると言ったんだよな?治るのなら多少高くても買いたい。でも本当に効果があるのか?だがシーヴの依頼を聞いてくれたのは彼だけなんだよな。無事で帰って来れたとはいえ、”試練の洞窟”にまで行ってくれたんだ。彼の事を信じてみるか -
コージモはしばらく考えると「分かりました買います。ちなみにお幾らですか?」と亮二に問いかけるのであった。そんな様子を見ていた亮二はシーヴの方を向くと人の悪い笑顔で金額の提示を行った。
「銀貨1枚」
「え?」
「だから、銀貨1枚!どうするシーヴ?買うかい?」
「え?わたし?銀貨1枚なら買う!今持ってるもん」
亮二はシーヴから銀貨1枚をもらうとポーションを渡してコージモに飲むように薦めた。ポーションを受け取ったコージモは半信半疑で一気に飲み干すと右手に鎚を持って近場にあった金型に軽く打ち付けてみた。今までは打ち付ける度に腕から響いてきた痛みが全く無く、素材を取りに行く前の状態に戻っている事が分かったコージモは感動に震えながら叫んだ。
「な、治っている!治ってるぞ。これで今日から鎚を思いっきり振るうことが出来る。リョージ君!有難う。この恩は一生忘れない!俺に出来ることならなんでも言ってくれ!シーヴも心配かけたね。お父さんはもう大丈夫だ!」
「本当?お父さん?リョージ君!ありがとう!」
シーヴに抱きつかれた亮二は困惑しながらもしっかりと受け止めるとコージモに話しかけた。
「今の言葉に嘘偽りは無いよね?じゃあ、お願いがあるんだけど」
コージモの感謝の言葉に亮二はニヤリと笑いながらお願い事を伝えるのだった。
コージモには何をしてもらおうかな?




