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390話 そして一同は神都に向けて -わきゃわきゃしながら進みますね-

念のためにイオルスに確認です。

「お、おい。イオルス? もう一回聞くけど『徐々に慣れていければ』と言ったか?」


震える声で確認してきた亮二に、不思議な者を見るような目でイオルスが返答してきた。


「だから、さっきも言ったじゃないですか。フランソワーズさんの力を封じるために神の力を使ったと。だから、このままでは神域に戻る事は出来ません。力を回復させないと。しばらくはかかると思いますので、よろしくお願いしますね」


「ちなみに力が戻るのに、どのくらい掛かるのか聞いても良いだろうか?」


絶句している亮二の代わりにフランソワーズが確認をする。亮二の様子を心配そうに見ながらも、イオルスは説明を始めた。


「えっとですね。普通にしていれば三〇年もあれば回復できると思いますよ?」


「長いわ! それだけ長くセーフィリアに居てどうするんだよ! 神域に誰も居ないのは駄目じゃん!」


指折り数えていたイオルスから年数を聞いた亮二は、元気を取り戻したように叫んだ。亮二の叫びにキョトンとした顔になっていたイオルスだったが、安心させるようにゆっくりとした口調で話す。


「大丈夫ですよ。神域には私の本体が居ますから! 言ったじゃないですか。『頑張って練習したのです! 力を落とすために練習をしたのです!』と。力を落としても顕現できない私は気付きました。神域に力を残して行けば大丈夫だと! そこで必殺技の分裂です! 一〇体に別れた私達! 誰が亮二さんに会いに行くのか! 血で血を洗う激しい争い! そこを勝ち残った私がやってきたのです!」


「は、はあ。ソレハスゴイデスネ。よし。フラン。そろそろ行こうか。カレナリエンやマルコも心配しているだろう。オルランドにも説明しておかないとな。魔王は安全ですと」


「そ、そうだとは思うのだが、イオルス神を放置しておいていいのだろうか?」


明後日の方向を見ながら拳を振り上げつつ力説しているイオルスを無視して、亮二はフランソワーズと歩き始めた。完全に陶酔した表情である幸福の神を放置して歩いている亮二の後を追いながら、フランソワーズが問い掛けたが呆れたような表情で返事がきた。


「ほっとけ。その内に気付いて追いかけてくるさ。それよりも早く神都に戻ろう。疲れてないか? 疲れているようならお姫様だっこしていくが?」


「お姫様だっこ? なんだいそれは? 聞いた事もないが……。きゃぁ! な、なにをするんだい突然! は、恥ずかしいじゃないか」


お姫様だっこを知らなかったフランソワーズが首を傾げていると、亮二が勢いよく抱き上げた。突然の抱きかかえられた事に軽くパニックになりながら抗議するフランソワーズに、亮二は笑いながら気にする事なく歩き始めた。


「ちょっとぉぉぉ! なんで私を無視して話を進めているのですか! 酷いじゃないですか。ふと我に返って周りを見渡したら誰も居ないし。泣きそうになりましたよ!」


「おぉ。やっと気付いたか。あまりにも遅すぎないか?」


亮二とフランソワーズが神都に向けて歩き始めてから三〇分ほどが経過していた。楽しく会話をしながら戻っていた二人に背後からイオルスの絶叫が聞こえた。亮二は振り返りながら軽い感じで語り掛ける。イオルスは亮二がフランソワーズをお姫様だっこをしているのを見て口を尖らせた。


「ずるい! 私もお姫様だっこを所望します! ぷりーず! 私も! 交代して下さいよ。フランさん。次の電信柱で交代しますから! それに神の力を使ってフランさんの右腕を作りましたからね。私が神域に戻れないのは、その右腕を創り出したからですからね」


「ねぇよ! この世界に電信柱なんてないからな! それにフランの右腕が原因かよ! 神域に戻れないのって絶対に確信犯だろ!」


地団駄を踏みながら叫んでいるイオルスから、爆弾発言が聞こえてきて亮二は怒り顔でツッコミを入れるのだった。


◇□◇□◇□


「いいか! これから大公リョージの救援に向かう! 俺達が行ったところで役に立たないかもしれない! だが、我々はいつまでも英雄の力だけに頼っているわけではない! それを証明する。いいか! 我らサンドストレム王国に住し者として魔王と戦うぞ!」


「我らはイオルス神を信仰する者として、神が顕現している状態である事を理解している! これは聖戦である! ()のイオルス神もリョージの事は気にしていた! ドリュグルの英雄であり、救国の英雄でもある彼を助けるのだ!」


神都の広場にマルコ率いるアラちゃん騎士団と、オルランドと神聖騎士団が完全装備で集まっていた。マルコの檄にアラちゃんを始めとする騎士団から鬨の声があがり、オルランドの宣誓には武器を鳴らす音が響き渡っていた。


「よし! 気合いを入れて行くぞ!」「「「おぉ!」」」


「イオルス神の御名の元、恐れる事無くすすめ!」「「「はっ!」」」


一糸乱れぬ統率の取れた動きで出発し始めようとした一同に、気の抜けたような声が聞こえてきた。


「あれ? どうしたの? なにか重大イベントが発生するの?」


「違いますよ! これは神である私を出迎えるためのメインイベントですよ! そう思いませんか? フランさん」


「いべんとの意味は分らないが、二人の発言は確実に間違っていると思うぞ。時間の流れからしても、魔王との決戦に向かった英雄のリョージと、その援護に向かったであろうイオルス神の救援だろう。そうだろう? そこの指揮官殿?」


声を掛けられたマルコは唖然とした表情のまま固まっていた。これから救援に向かおうとしていた亮二がのんきに戻ってきた上に、魔王の姿になって飛びたったはずのフランソワーズをお姫様だっこしているのである。


「それで、お前さんが抱えれているのは魔王赤髪フランで間違いないよな?」


「ああ! 間違いないぞ! ちなみに隣に居るのは多分だけどイオルスだ。神の力をほぼ使ったらしくて、回復するまで三〇年は掛かるらしいけどな」


なんとか動き出したマルコの問い掛けに、亮二は無邪気に頷きながら説明を始めるのだった。

マルコの顔が徐々に無表情になっていくのだけど?

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