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388話 魔王は生まれ変わる -最初に会った姿に戻るようですね-

イオルスの気合いが乗ってきたようです。

「分かりました。では、フランソワーズさんの力を使って、亮二さんと会った時と同じ姿に戻しましょう」


「ちょっと待ってくれないかい? 元に戻すのはいいのだが、右腕だけはこのままにしてくれないかい?」


 イオルスが宣言しながら右手をかざしつつ詠唱に入ろうとすると、フランソワーズから待ったが掛かった。その内容に亮二は首を傾げながら確認する。


「どうして右腕をそのままにする必要があるんだよ? せっかくだから元に戻してもらえよ。神様だから、それくらいはサービスしてくれるぞ? なあ、イオルス?」


「いいですよ。それくらいでしたら誤差の範囲ですから。でも、フランソワーズさんにも理由はあるみたいですよ? ですよね? フランソワーズさん」


 亮二に確認されたイオルスは軽く頷きながら問題ない事を伝えつつも、フランソワーズの真摯なまなざしを見て理由を説明するように促した。


「ああ。もちろん理由はある。今回の暴走した件については完全に私の落ち度だ。その事を忘れないようにリョージが斬り落としてくれた腕はそのままにしておきたい。それと、片腕だと魔王たる資格なしと他の魔族も諦めてくれるだろう?」


「なるほどですね。たしかに力が全てである魔族の中には、フランソワーズさんの力が封印されたといっても信じない者がいるかもしれません」


 フランソワーズとイオルスが話し合いながらお互いに頷いていると、亮二が確認のために質問をしてきた。


「ん? 部位欠損はイオルスの力で元に戻らないのか?」


「そうですね。そこまで世界の理をねじ曲げるつもりはありませんよ。ただ、欠損した部位がある状態なら元に戻す事は出来ます。ですから亮二さんは、フランソワーズさんの右腕が世に出ないように、しっかりと封印しておいてくださいね。そのままストレージに収納して頂くだけで大丈夫ですから」


 亮二の問い掛けにイオルスが答える。二人の会話を聞いていたフランソワーズは問題が解消されたと確認すると、全身の力を抜いて静かに目を瞑った。


「話は(まと)まったようだね。じゃあ、さっそくお願いしよう。幸福の神であるイオルス様。どうか、この哀れな姿になった魔王をリョージと会った時に戻して下さい」


「分かりました。では、始めましょう。ところで亮二さん」


「なんだよ?」


 急にイオルスから話し掛けられた亮二が不思議そうな顔をしていると、満面の笑みでイオルスが言い放った。


「やっぱり、この場合だと『それを聞きたかった』を決め台詞にしたらいいですかね? ……痛ぃ!」


「どこの闇医者だよ! さっさと始めろよ!」


 イオルスのドヤ顔に、亮二は叫びながらミスリルのハリセンを全力で打ち込むのだった。


 ◇□◇□◇□


『我はこの世界を造りし者。また彼の者達に生命を与えし者。だが、我が力を望まぬ者に与えし事が分かる。我、ここに誤りを認め謝罪する。彼の者は望む力を返さんと欲す。我はその言葉を受け入れる』


 草原にイオルスの声が静かに流れていた。歌うように、さえずるように紡ぎ出される声は、聞く者が居れば涙を流して祈りを捧げたであろう。だが、亮二は違う感想を考えていた。


(上手く神気をまとわせながら詠唱しているけど、『私、世界を作ったイオルスなの。気に入らない能力になってごめんね。希望する内容にしてあげる』と、言ってるだけだよな。空気を読んでツッコまないけど)


「亮二さん。おかしな事を考えているでしょ? 駄目ですよ。名シーンですよ! 私が光り輝くシーンですよ! しっかりと感動しきった目で見てくだ……。痛ぃ!」


「悪かったよ! 確かにくだらない事を考えてたよ! だが、お前も大概だぞ! せっかくの気合いの入った詠唱をしたんだから、最後まで格好良く決めろよ!」


「二人とも大概にしてくれないかな。いい加減、口から砂糖を吐き出しそうだよ。それに人の事を待たせすぎだと思わないかい? 本当に早く頼むよ」


 亮二とイオルスが言い合いをしていると、げんなりした表情でフランソワーズが話を遮った。あれだけ事が深刻だと言っていた亮二と、神気を纏いながら厳かに詠唱をしてたイオルスの二人は、ばつが悪い顔をすると慌てて取り繕うように話し始めた。


「ん、んん。では、詠唱の続きを! 『我が名はイオルス。始まりを造り、終わりを告げる者。我が名において彼の者の力を封印する!』」


「ん! あぁ! くっ! ち、力が、ぬ、抜けていく……。だ、だめだ! ちょ、ちょっと待って!」


「もう少し我慢して下さい。それにしても口調がいやらしいですよ?」


 イオルスから指摘されてもフランソワーズは答える事が出来ない。神の力が身体を包み込み魔力を奪いながら身体の再構成を始めていたからである。永劫の時間が流れたように感じていたフランソワーズだったが、実際は数分しか経過していなかった。


「終わりましたよ。詠唱は問題なく完了しております。どうですか? 亮二さん。役得じゃ無いですか? でも、あまりジロジロと見るのはお勧めしませんよ?」


「そ、その。イオルス神の言うとおりだと思うのだよ。リョージに、この姿を見られるのは構わないと思いながらも、どうしても恥ずかしさが先に立つのでね」


 イオルスからはジト目と共に、フランソワーズは全身を真っ赤にして身体を隠すようにしながら、亮二に裸を見ないように伝えてきた。


「ご、ごめん! イオルス! 服ぐらい用意してやれよ!」


「えぇ。私はフランソワーズさんを亮二さんと会った時の姿に戻すのに、物凄く力を使ったのですよ。あぁ、疲れた。チカラガデナイヨォ」


「なんで最後は棒読みなんだよ! 絶対わざと服を用意しなかっただろ!」


 慌ててフランソワーズに対して背を向けると、イオルスからからかうように声がかかった。亮二は顔を赤らめながらストレージからローブを取り出すと、フランソワーズに手渡すのだった。

元の姿に戻る時に裸なのもテンプレ?

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