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385話 クライマックスは波のように何度もやってくる -決着は水物ですよね?-

これでなんとなる!

 亮二が振り下ろしたコージモの剣は雷属性が四重に掛っており、スピードに乗った剣先は輝きを放ちながらフランソワーズの右腕を一刀で斬り落とした。


「ガァァァァ」


 草原にフランソワーズの絶叫が響き渡る。亮二は斬り落とした右腕を念のためにストレージに収納すると、氷漬けになっている下半身を溶かし始めた。やっと自由を得たフランソワーズは崩れ落ちる様に倒れると、しばらくは荒い呼吸になっていたが、落ち着きを取り戻したようで静かな呼吸に戻った。


「ア、ア、ココハ? ワタシハイッタイ? リョ、リョージ? ソ、ソウか……。きみが……わ、私を救ってくれたんだな?」


 意識が混濁した状態だったフランソワーズが状況を理解したようで、視線だけを亮二に向けると確認をしてきた。


「ああ。俺が救ってやったんだから全力で感謝してくれよ。謝礼はどれだけでも受け取ってやるから安心しろ」


 意識が戻った事に安堵した亮二は、警戒を緩めると冗談めかして答える。そんなふざけた回答にフランソワーズは弱々しく微笑みながら頷いた。


「君らしい答えだね。もちろん君には十分に恩賞を弾むよ。感謝の気持ちを込めた魔王の座とかはどうだろうか?」


「さすがにいらねえよ! なんだよ魔王の座って! 世界の半分を貰っても遠慮するわ!」


 ダメージが残っているようで、苦しそうな顔をしながらも小さく微笑みながら報酬を伝えてきたフランソワーズの内容に亮二がツッコんだ。


「ふふふ。冗談だよ。だが、魔王は悪くないぞ。魔国全体に居る魔族すべてが忠誠を誓ってくれる。君達人族が大好きなハーレムを築く事も可能だ。その中には私も入っているぞ?」


「本当に冗談だな。すでに婚約者が八人もいる俺からすれば新たな婚約者など必要ない! おい! フラグじゃないぞ! なんで笑ってるんだよ! フラン!」


 自分の力説にフランソワーズが含み笑いをしている事に気付いた亮二が、頬を膨らませながら怒っている事を伝える。そんな様子を楽しそうに眺めていたフランソワーズが答えた。


「ふらぐとやらは知らないが、君のような英雄が八人程度の婚約者で終わるはずがないと思っただけだよ。数を増やさないなら、後は質を上げるしかないかな? 周りが納得できる女性は私かイオルス神ぐらいしか居ないのじゃないと思うがどうだろう?」


「やめて! それフラグ! フラグになるから!」


 二人しかいない草原に亮二の悲鳴が響き渡るのだった。


 ◇□◇□◇□


「ふふふ。実に楽しい時間だったよ。最後に君と話が出来て良かった」


「最後? なにを言ってるんだよ? 意識もはっきりしているから、後は回復するのを待つだけだろ?」


 楽しそうに笑っていた状態からの不穏当な発言に、亮二が眉を寄せながら問い掛ける。それまでは弱々しくも笑っていたフランソワーズだったが、真面目な顔になるとゆっくりと説明を始めた。


「いいかい。私は魔王の能力を第二段階まで出してしまったのだよ? この状態になったら元に戻る事は出来ない」


「そんな事はない! 俺が持っている秘薬なら一番元気だった頃に戻れる! そうすれば問題解決だ!」


 亮二がストレージからイオルス製のポーションを取り出すと、フランソワーズに飲ませようとした。


「貴重な薬なんだろね。君が差し出すくらいだ。その薬があったからこその君の決断だったのだろう? だが君の説明では『一番元気だった頃』に戻れるとの事だが、残念ながら私の一番元気なのはこの第二段階だ。その秘薬とやらを飲んでも、最初に会った姿には戻らないのさ。それに、今は傷を負った状態だからいいが、元気になったら破壊衝動を抑える事が出来ないだろう」


「だったら! どうするつもりなんだよ!」


「だから、リョージはここから離れて欲しいのだよ。せっかく意識が戻ったのだ。衝動を抑えながら自壊するよ。その時に爆発が起こる。無駄に君を傷つけたくはない……」


 話している途中で、フランソワーズの身体が黒く輝き始めた。亮二は慌てて光属性で相殺しながら叫ぶ。


「させるわけないだろ! なに自壊を始めてるんだよ!」


「だが、このままだと真の魔王として君を襲ってしまうだろう。リョージには言ってなかったが、私の変身はもう一段階あるのだよ」


「なんだよ! そのテンプレは! 俺は認めないからな! 例えお前がもう一段階変身しても救って見せる!」


 闇と光の属性が相殺しながら火花のように輝きを放ち続けていた。自壊しようとするフランソワーズと、それを止めようとする亮二の綱引きは続いていた。


「そろそろ諦めたらどうだい?」


「誰が諦めるんだよ!」


 苦笑しながら闇属性を強めているフランソワーズに、亮二が苦りきった顔で光属性で応えていた。ミスリルの腕輪に充填していた魔力はすでになく、自らの魔力も残りが半分を切り出していた。


(どうすんだよ? このままじゃ本気で魔力が無くなるぞ? マナポーションを飲む暇もないじゃないか!)


「何度も言うが諦められるか! こうやって悪あがきをしていたら、なんとかるのがテンプレなんだよ!」


「流石は亮二さんです! その通り! やっぱりテンプレっていいですよね! この場合だと『話は聞かせてもらった!』で良いですか? 亮二さん?」


 亮二が叫んだと同時に空から若い女性の声が届いた。突然の声に驚いた亮二が空を見上げる。フランソワーズも何事かと同じように見上げると、そこには宙に浮いた状態の女性がゆっくりと二人に近付いてくるのが見えるのだった。


「えっ? イオルス? なんでここに?」


 思わず呆然と呟いた亮二にイオルスは満面の笑みで手を振ってくるのだった。

えっ? なんでイオルスがここに?

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