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382話 そして話はクライマックスに向かって -息を飲む展開ですね-

フランソワーズが颯爽と入ってきました。

「久しいな。四天王の業務を放棄して、なにをしているのか。それをここで君に聞いてもいいのだろう?」


 突然、謁見の間に入ってきた赤髪の女性に、一同の視線が集まる。本来なら狼藉者として取り押さえるのだが、亮二が紹介した事、王族のエレナに、高名な冒険者であるカレナリエンを連れている事で、理由があると参加している者は勝手に判断していた。

 ほぼ(・・)全員が成り行きを見守っている中、顔面蒼白で少しずつ後ずさりしつつ、腰が引けている枢機卿が居た。


「へ、陛下。なぜ、ここに?」


「ほう。まだ、私の事をそう呼んでくれるのか? てっきり『裏切り者!』と、呼ばれるものと思っていたよ」


 アロイージオが後ずさりした分、間合いを詰めながらフロンソワーズが話し掛ける。そこに、亮二が近付きながら嬉しそうに話しかけた。


「アロイージオ枢機卿。貴方は彼女の事を知っているのですか? 王族であるエレナでさえも、彼女からフルネームを聞かないと気付かなかったのに?」


「いや、その……」


「彼は言いにくそうだ。では、リョージから紹介される前に、自己紹介をしておこう。謁見の間に居る教皇猊下と、枢機卿の皆様方。我が名はフランソワーズ=ルニャール。ルニャール魔国を統べる者である。人は私の事を赤髪フランとも呼ぶ」


 フランソワーズの軽い感じの自己紹介に、最初はポカンとした空気が流れていたが、内容を理解するにつれ、ざわめきが起こりパニック状態になった。


「赤髪フラン? ま、魔王! 魔王赤髪フランか! なぜ、魔王がイオルス神のお膝元である神都にやって来たのだ!」


「衛兵! それよりも! リョージ殿! なにを考えて魔王を謁見の間に!」


「教皇猊下を安全な場所に避難させろ!」


 謁見の間は阿鼻叫喚に包まれ、フランソワーズは混乱ぶりを楽しそうに、亮二やカレナリエンにマルコなどは行動を開始するのだった。


 ◇□◇□◇□


「さて。今はアロイージオだったか? なにか弁明はあるか? 魔王の方針である『人間界とのいざこざを起こさない』との命を破った釈明を聞こうか?」


「魔王が戦わないと宣言した噂は本当だったのか……」


 フランソワーズの言葉に誰かが呟く。そして、一同の視線は魔王からアロイージオに注がれた。その顔は先ほどの顔面蒼白から、一気に真っ赤になっており、フランソワーズを射貫くように睨み付けた。


「もう少しで上手くいきそうだったものを! かくなる上は、陛下にはここで役立っていただきましょう。陛下の考えは、私には全く理解出来ない。大体、矮小なる人間と魔族が対等に暮らす? そのこと自体がおこがましいと思いませんか?」


「思わないな。そこまで大言壮語を並べても、お前の野望は大公リョージに阻止されたのではないか? 彼は君の言うところの矮小なる人間ではないのか?」


 一同から注目されている事にも気付かず、アロイージオは熱弁を振るう。目を血走らせながら叫ぶように、語り掛けるように、出来の悪い子供に諭すように。そんなアロイージオに冷めた目で眺めながらフランソワーズは言い放った。

 フランソワーズの指摘にぎこちなく視線を亮二に移したアロイージオは、歯を(きし)ませながら叫ぶ。


「こいつだ! こいつは、この世界に生まれたイレギュラーだ! こんな奴さえ居なければ……。私の計画は完璧だった! 神を自称するイオルスの信徒や枢機卿を操り、教皇には状況を理解させながら、なにも出来ずに絶望を味わわせる。あと一歩だった!」


「いや。穴だらけじゃん? なぜ早急に洗脳を使って、勝負を決めないか分かったわ。オルランドに絶望を植え付けるためだったんだな。残念だが、あいつはゲンナリしてても、絶望なんてしてないぞ。無駄な努力だったな」


「貴様が来たせいで全てが狂った! 貴様さえ! 貴様さえ来なければ! モニカ! 来い!」


 呼ばれたモニカは、無表情でアロイージオに近付く。一同が警戒している中、アロイージオはモニカの胸に手を突き刺した。


「「「なっ!」」」


「なにをしている!」


「ふはははは! これだから人間は凡人なのだ! この女は人間ですらない! 私の作ったゴーレムだ!」


 アロイージオはモニカの胸の中から魔石を取り出す。それまでは人間らしい動きをしていたモニカだったが、崩れ落ちると人形のように動かなくなる。


「こうなったら、最後の手段を取るまでだ! 魔石を暴走させて吹き飛ばしてや……。がぁ!」


「させると思うのかい? 魔王の命に背きし――よ。四天王の任を解き、魔王の名の下に断罪する」


 アロイージオが魔石に魔力を注ぎ込もうした瞬間に、口から血を吐きながら絶叫を上げる。無慈悲に告げながら一瞬で間合いを詰めたフランソワーズは、亮二達には聞き取れない魔族の真名を呼びつつ手刀でアロイージオの胸を貫くのだった。


 ◇□◇□◇□


「へ、陛下。そのゴーレムと同じ場所を貫いたのは……」


「少しは彼女の痛みを分かると良い。残り少ない時間で考えるのだな」


 フランソワーズの腕を(つか)みながら、絞り出すように話すアロイージオに冷酷な目を向けながら言い放つ。


「は、はっはっは。さすがは陛下です。そ、その甘さが身を滅ぼすのです。――。我は汝に命じるため、この身を捧げる」


「なっ! 失われし古代魔法!」


 アロイージオが崩れ落ちながらも、小さくなにかを唱える。その内容が分かったフランソワーズは、焦ったかのように離れようとする。だが、しっかりと掴まれた腕は抜き取ることが出来ず、アロイージオが唱えた呪文を受け入れてしまった。


「おい! 大丈夫か! フラン!」


「ぐっ! リョ、リョージ。早く皆をこの場から……。があ!」


 苦しそうに胸を押さえているフランソワーズに、亮二が心配そうに声をかける。だが、その声は届いておらず、絞り出すように声を出しながら、全員に避難するように伝えようとした。たが、台詞の途中で(うずくま)ると背中から羽が生え、体が黒く光り始めた。


「やばい!」


 亮二の声と重なるように、フランソワーズの体から黒い光が爆発するように広がっていくのだった。

魔王が暴走しそうです。

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