36話 パレード後のお願い2 -駆け引きは大事ですね-
何を食べたか覚えてません……。
- ユーハン伯の3つ目の頼みたいことってなんだろうな?「最初の2つは受けて上げてるんですから、3つ目の頼み事は受けるのは難しいですよ」オーラを出してるつもりなんだけど、上手く伝わってるかな?剣に属性付与をする件については頼まれなくてもするつもりだったし、イオルスから貰った薬は作れるかどうか現時点では分からないから手持ちを10個ほど渡すとして、高級ポーション販売についてはこの前取ったスキル「創薬 5」でどこまでの質のポーションが作れるかだよな。必要素材も確認しとかないといけないし -
ユーハンから3つ目の頼み事を伝えられる前に亮二は牽制をするように姿勢を正すと話し始めた。
「ちなみに、3つ目はどんな頼み事になるんですかね?最初の2つに対して了承するだけでも頂いた恩賞と同じくらいの価値があると思っているんですが」
「そんなに構えなくても大丈夫だリョージよ。3つ目の頼み事についてなんだが、3ヶ月後にドリュグル代表として王都に有る王立魔術学院に入学して欲しいんだ。期間は2年間となるな」
「え?なんで、そんな所に入学?」
全く思っていない内容の頼み事だったので思わず素に戻ってユーハンに聞いてしまった。ユーハンはそんな亮二の態度を特に気にすること無く事情の説明を始めた。
「リョージは今11歳だよな?王立魔術学院の入学は11歳を超えていることが必要最低条件となる。3ヶ月後が入学時期になるんだが、最近は学問よりも政治の場に利用されつつある状態なんだよ。学院を優秀な成績で卒業した者を配下に持っている貴族は王都での発言権も強くなる。個人的にはそんな権力争いなんて興味は無いんだが、そうも言ってられなくてな」
「それって、ひょっとして派閥争いに巻き込まれてます?中立派として貴族派、教皇派との力の差を少しでも詰める必要があるってとこですかね?」
ユーハンの説明に対して余りにもサクッと貴族世界の内情について答えた亮二に思わず固まってしまったユーハンに対して、マルコとカレナリエンは達観した表情で亮二を見つめていた。そんな三者三様の表情を見ながら亮二は首を傾げるとユーハンに語りかけた。
「あれ?違いました?」
「い、いや。そうなんだけどな、余りにもズバッと答えられると、どう対応したらいいのか分からなくなってな」
「だから、ユーハン。リョージに対して常識を持って話をしてたらダメなんだよ。切れ者のお前が考えた斜め上くらいの事を言って丁度だと思うぞ」
「そうそう、異国の貴族なんだからその辺の事情にも詳しいのかもしれないじゃない」
不思議そうな顔で答えた亮二に少し呆けた顔をして答えたユーハンの肩をいつの間にか移動したマルコが悟りの境地に辿り着いた顔と同情した顔で叩き、カレナリエンが慰めるかのようなフォローを入れた。
- あれ?なんか2人して俺の扱いが酷くない?まだ出会ってから1週間も経ってないよね?ただ、異世界モノのテンプレって三竦みがデフォだから適当に派閥を言ったらまさかビンゴだっただけじゃん。簡単に言ったら帝国と同盟の狭間で生きるって感じなんだろ? -
ユーハンの最後の頼み事に対して亮二は少し考えると、自分にとっても魔法について学べるのはメリットが有ると判断して3つ目の依頼を引き受ける事にした。
「ユーハン伯の事情は理解出来ましたのでお受けさせていただきます。ちなみに、昨日今日でドリュグルにやって来た人間にそんな名誉を授けてもいいんですか?」
「あぁ、確かに家臣団からは物凄い文句が出るだろうな。そこで、3つ目の頼み事をするためのお願いがある。後3ヶ月で冒険者ランクを【D】までは最低でもあげて欲しい。マルコから剣技の実力は【B】を超えるとは聞いているが、冒険者はそれだけでは務まらない。そこで、人を率いて育てることが出来る【C】ランクの手前までの【D】ランクの実績を作って欲しい。その年齢で【D】ランクなら推薦もたやすい。その実績を持って五月蝿い家臣たちを黙らせて欲しい」
「俺の事をそこまで買って下さるなら、やるしか無いですね。任せて下さい!3ヶ月を待たずして【C】ランクまで上げてみせますよ。それと、ポーションについても実績を作っておきますね」
条件付きで問題ないことをユーハンに伝えた亮二は自信を持って請け負うのだった。
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「取り敢えず、ドリュグルの代表が確保できてホッとしているよ。今までは人材が居なくて困っていたからね。マルコのお陰で本当に助かったよ」
「だろ。俺の門番業務も無駄じゃなかったってことだよ」
「”試練の洞窟”からの報告をもらうまでは「クソ兄貴くたばれ!俺ばっかりに仕事を押し付けやがって!」って思ってたけどな」
ユーハンの感謝の言葉にドヤ顔で答えたマルコの顔が気に食わなかったので亮二ばりに毒の効いたツッコミを入れてみた。
「なんで、お前まで毒を吐くんだよ!いいじゃねえか結果的に最高の人材が手に入ったんだから」
「まあな。リョージのような希少種と言っていい人材なんて100年に1人も居ないだろう」
若くして辺境伯に任命されたユーハンに取って人材は喉から手が出るほど欲しい状態であり、リョージがドリュグルの街に偶然来てくれた事について心の中でイオルス神に感謝の祈りを捧げるのだった。
まあ、今回の対応は及第点かと。




