380話 謁見の間の前でバタバタ -中に入るのも一苦労ですね-
作戦会議完了です。
「本当に、それを実行するのだな?」
「当然! チャンスは最大限に利用しないとね! こんなチャンスは、早々お目に掛れるものじゃないぞ」
打ち合わせをしていた部屋から、謁見の間に向かっている四人は周りからは楽しく話しているようにしか見えなかった。フランソワーズのため息を吐きながらの再確認に、嬉しそうに頷いた亮二は拳を振って力説する。
「いいか! これはオルランドの為にするんだぞ。教皇猊下を守るためには、派手にして意識を別の方向に向ける必要がある。なんせ、魔族が変装か擬態して謁見の間に潜り込んでいるんだからな。意外性をもって対応すると、大概の人間は行動が止まる。そのチャンスに各自は行動開始だ」
「必要性は理解したが、どう考えても君が楽しむために動いているようにしか感じないな。私も、そういったのは嫌いではないので構わないが」
フランソワーズが苦笑しながらも亮二の熱弁に賛同している間に謁見の間に到着した。扉の前には先ほどの騎士が警護を続けており亮二達に一瞬笑顔を向けたが、フランソワーズの姿を見ると険しい目で詰問を始める。
「職務ですので失礼します。リョージ様が謁見の間に戻られるのは、問題ないとマルコ様から聞いています。申し訳ありませんが、そちらの女性はその中に入っておりません」
「俺の連れだと言っても?」
「もちろんです。エレナ様とカレナリエン様は問題ありません。ですが、そちらの女性をお通しする事は出来ません」
職務に忠実な騎士を頼もしそうに見ながらも、困った表情を浮かべる亮二にフランソワーズが話し掛ける。
「入れないようだね。どうする? 作戦を変更するかい?」
「仕方ない。これだけはしたくなかったんだけど……。マールーコー! あーそーぼー!」
謁見の間へと続く扉の前で、亮二の大音量の声が響き渡るのだった。
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「それに、どんな意味があるのか教えてもらってもいいだろうか?」
「大丈夫。すぐにでも分か……。痛ぃ! 待ってたよ! マルコ! やっぱり期待を裏切らないマルコって……。痛ぃ! ちょっ! もう……。 痛ぃ! だいじょ……。痛い! 金のハリセンは駄目だって!」
「何回言えば分かるんだよ! 厳粛な場なんだぞ! お前のお蔭で枢機卿たちの視線が俺に集中したじゃねえか! 『なんとかしてもらえませんか? 保護者でしょ?』と、ラッチス枢機卿からは言われるし、オルランド猊下からも『彼を止めるのが、貴方のお仕事ですよね』とか言われたんだぞ! 俺の仕事はお前のツッコミ担当でも保護者でもねぇ!」
「なるほど。素晴らしいな。私と同等の強さのはずのリョージを、ここまで一方的に打ちのめすとは。その奇妙な道具も興味が……。痛ぃ! なっ! 私にダメージを与えるだと!」
「誰だか知らんが、お前も黙れ! 厳粛な場だと言ってるだろ!」
謁見の間から出てきたマルコは、背後で扉が閉まったと同時に亮二に対して連続でハリセン乱舞を披露した。亮二が頭を押さえて唸っているのを感心していたフランソワーズにも、ミスリルのハリセンで一撃をお見舞いしたマルコは側にいた騎士に話しかける。
「なにがあった?」
「はっ! 実は我々も分かっておりません。リョージ様が見知らぬ女性を連れて来られたので、謁見の間には通せないと伝えたところ。突然、叫びだされまして……」
「叫びだしたなんて! 俺はちょっとマルコと遊ぼうと……。痛ぃ!」
「エレナ様。こいつらと違って俺に教えてくれますよね?」
マルコの問い掛けるような視線にエレナは肩をすくめると、謁見の間を出てから今までの出来事を語り出した。
「……。と、言うわけです。流れとしては一通り説明はしました。これから彼女の紹介をしますから、絶対に叫ばないで下さいね。彼女の名はフランソワーズ=ルニャール。魔王赤髪フランよ」
「おぉ。まじか。リョージが魔王と一緒に居るのは理由があっての事だよな? 『面白そうじゃん』って、理由じゃないと信じてるぞ」
「と、と、と、当然だ。冗談半分で魔王と一緒に居るわけないだろ! マルコを呼び出すのも理由があっての事だよ」
動揺しながら伝えてきた亮二に胡散臭げな表情で頷くと、話を続けるように促すマルコだった。
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「ほう。そういったことか。今までの不可思議な出来事は全て説明出来るわけだな。だが、本当にそんな作戦で問題ないのか? 確かに意表は突けるだろうが、その後はどうするんだよ? 取り押さえるのか?」
「そこは臨機応変で柔軟に最善手を選びながら、流れるように行動をするんだよ」
「つまりは行き当たりばったりなんだな。だが、相手に取ったら意表を突かれるよな。よし。リョージの作戦に乗ってやる。絶対に成功させろよ」
マルコは亮二の説明を聞いて呆れたような顔になったが、感想を述べると一つ頷いて側に居た騎士に命令を出す。
「広場に居る信徒で、話を聞ける状態の奴だけでも避難させろ。『大公であるリョージが城門前ですいーつの配布をしている』とでも言っとけ! それと腕の立つ奴を五人ほど、こっちに回してくれ。枢機卿達の護衛として踏み込めるように、この場で待機するように」
「はっ! 早急に対処します」
「おい。手ぶらだと暴動になるだろ。これを持って行け」
マルコから指示を受けた騎士が走り出そうとするのを亮二が引き留め、ストレージからスイーツの入ったアイテムボックスを五つほど取り出して手渡した。
「はっ! 感謝します! ご武運を!」
アイテムボックスを受け取った騎士は、亮二とマルコに敬礼をすると広場に向かって走って行くのだった。
よし! 次こそは突入だ!




