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異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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35話 パレードの後のお願い -美味しい話には裏がありますね-

式典は疲れます……。

「それにしても、思い切ったことをしてくれたな」


 マルコの笑いを堪えた真面目な口調でユーハンに話題を振っていた。いくら武勲が有ったとしても、どこの誰とも分からない者に名誉騎士とはいえ授与されるのは前代未聞の事だったからだ。さらに住居まで渡されるとあってユーハン伯の家臣団は軽い混乱状況になっていた。パレードと式典は終わりを告げ、一同が集まっている場所はユーハン伯の居城であり、通常なら配下や騎士が呼ばれるだけでも名誉とされる伯爵専用の食堂でもあった。


「そう言うなよ、マルコ。こう見えても、この仕事は結構重圧がかかってるんだぞ。少しくらいは俺の好きなようにさせてくれよ。ちょっとした遊び心を持って事を進めるくらいはいいだろ?」


「でも、私まで巻き込まないで欲しかったわ」


 笑いながら答えるユーハンに対してカレナリエンが頬を膨らませて抗議した。


「そう言うなよカレナ。悪い気はしなかったろ?あの場で宣言しとかなかったらリョージは明日の朝から街中の未婚女性に囲まれてるぞ?」


「それが、余計なお世話なのよ。リョージさんからの熱い視線は感じてるから成人するまでの2年かけてジックリと頑張る予定だったのよ!」


「出来ればそう言った話は俺が居ない所でしてもらえないかな…」


 マルコから始まった会話は、からかい全開のユーハンとすね気味のカレナリエンの掛け合いで終始しており、自分の扱いについてを真横で聞かされた亮二は流石に気恥ずかしそうに会話を別の方に持って行こうとした。もちろんマルコはニヤニヤとしながら会話をかき乱しては楽しんでいる。


「所で、マルコとカレナリエンはユーハン伯と個人的に親しい知り合いなの?」


「ああ、言ってなかったっけ?ユーハンは俺の弟なんだよ」


「へー、弟なんだ。え?お、弟さん?って事はマルコは貴族なんじゃないの?なんで門番なんてやっているの?出来が悪くて穀潰しじゃドリュグルの街に居づらいから?」


「誰が出来が悪いんだよ!そんな訳ねーだろ!」


 気楽な感じで行った亮二の質問に種明かしをしたとばかりの嬉しそうな顔のマルコに対して、驚愕した顔をしながら返ってきたふざけた内容にマルコが怒りながらツッコミを入れると、亮二は嬉しそうに親指を立てながら「さすがマルコ、その切り返しに憧れる!」と言いながら頷いた。


「素晴らしい!リョージはどうやらこちら側の人間のようだな。それにマルコに対する接し方は私なんか太刀打ち出来ない位に素晴らしい!私ではいつも軽くはぐらかされて終わるだけだからな。リョージよ、君の事を師匠と呼ばせてもらってもいいだろうか?」


「その心意気やよし!モチロン弟子として受け入れよう。だが儂の修行は厳しいぞ?ついてこれるかユーハンよ!」


「モチロンです!師匠!!」


 突然、席を立って亮二の前まで進むとその場所で跪き頭を垂れながら師事を申し出たユーハンを見た亮二は、その場で立ち上がり仁王立ちになると、右手を差しだして厳かに伝えた。ユーハンはその右手を取ると感極まった顔で力強く頷いた。


「なんでお前ら今日会ったばかりなのにそんな完璧に息が合ってるんだよ」


 見事なまでに息のあった2人の茶番劇を、まざまざと見せ付けられたマルコはげんなりした顔をしながら疲れた声でツッコミを入れるのだった。


◇□◇□◇□


「だって、マルコはどうせあれだろ?『俺は辺境伯の器じゃない。お前の方が間違いなく領地経営とか向いているから伯爵の仕事は頼むわ』って感じで丸投げしたんだろ。ただ、それだけだったら余りにもユーハン伯に押し付け過ぎだと思ったから冒険者としてドリュグルの街を守る為に魔物の討伐と、門番として怪しい奴の確認や有望な人材の発掘を担当してるってところだろ?」


「さすが師匠!なんでもお見通しですね。そうなんですよ。マルコは結局、自分だけ楽して人生を謳歌しようと考えて弟に面倒事を押し付ける鬼畜な兄なんですよ」


「なっ!誰が鬼畜な兄なんだよ!それにしてもリョージは、なんでそこまで知ってるんだよ?今までそんな事は誰にも話したことはないぞ!」


 余りにもズバリと当てられて焦っているマルコに「俺の国では常識みたいなもんだな」と言われて「どんな国なんだよリョージの国は」と引き攣った顔で手元のワインを一気に飲むマルコであった。


 □◇□◇□◇


「マルコを弄る茶番はさっさと終わらせて、実際の所は何で私に家まで恩賞として渡されたんですか?」


「あぁ、それは至って簡単な理由だよリョージ。君ほどの武勲を立てた者を放置しておく事が出来なかったんだよ。それに異国の子爵と聞いたんで、そっちとも縁を持ちたいと思って大盤振る舞いしたって訳さ」


 亮二の質問に対して「簡単な事だ」と事情の説明を受けたが、ユーハンの口調から別の目的もある感じがして亮二は軽く眉を寄せた。そんな亮二の態度に気付いたユーハンは「まあ、その内に話すことだしな」と苦笑いをしながら話を始めた。


「リョージには頼みたいことが3点有るんだよ。まずは式典の時にも話したが駐屯軍に属性付与のやり方を教えて欲しい。それと、”試練の洞窟”で使ったポーションを難しいのかもしれないが譲ってもらえないだろうか?あのポーションは王都でも見たことがない秘薬に属するものだとはマルコから聞いて分かっている。もちろん相応の金額は支払うつもりだ」


「まあ、その2つならいいでしょう。属性付与のやり方については元からお伝えするつもりだったので構いません。ポーションに関しては10本で宜しければ譲ります。あと、手持ちの秘薬の様な性能は無理ですが高級ポーションを作って卸してもいいです。それで、最後のお願いというのは?」


 余りにもアッサリと承諾をもらった事に驚いが、満足そうに頷くとユーハンは最後のお願いを亮二に伝えるのだった。

ノリと勢いは大切です!

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