365話 神都で活動開始 -色々とありますね-
結婚祝いは完成です。
「それじゃあ、さっそく話を聞こうか。クロからお願いできる?」
「神都の様子は普通。結婚の話は知ってる。でも時期まで知らない。みんな嬉しそうだった」
亮二に声を掛けられたクロは、ソフィアの作ったスイーツを満喫しながら報告してきた。亮二が結婚祝いを作り終えてから二時間ほど経っており、他の婚約者達もそれぞれに集めた情報を手に神都の屋敷に戻ってきていた。
「結婚相手が誰とかの話は出てた?」
「まだ決まってないって聞いた。エリーザベトが有力候補」
「俺はマルセル王からオルランドが結婚するって聞いたんだけどな?」
クロから結婚式が行われる時期は決まっていないとの報告を聞いた亮二が不思議そうに首を傾げていると、エレナが申し訳なさそうに話し始めた。
「それについては私から代わりに謝罪させていただきます。お父様に力ずく……優しく聞いてきた話では結婚時期は未定だが、エリーザベトさんと結婚したいと書かれていたそうです。ただ、教皇猊下からの手紙の内容が不自然だったので、時期をぼかしてリョージ様を派遣したとの事です。安心して下さい! ちゃんと反省をさせてますから。一週間は反省していると思います!」
「えっと。一週間反省ってなにしたの?」
最初は申し訳なさそうに謝罪をしていたエレナだったが、だんだんとヒートアップしたのか拳を振り回しながら説明を終えた。そんなエレナの様子を見ていた亮二が恐る恐るな感じで確認っすると、エレナは清々しい表情で問題ない事を伝えてくるのだった。
「大丈夫です! 王宮には優秀な治療魔術師が居ますから!」
きっぱりと言い切った様子を見てマルセル王の様子が気になった亮二は、必ず秘薬を届けようと心の中で誓った。微妙な空気が流れる中、気を取り直してカレナリエン達に確認を始める。
「冒険者ギルドの方はどうだった?」
「王都の冒険者ギルドは素材集めの依頼で賑わってましたね。教皇猊下の結婚祝いを作るための高級素材が必要みたいで、高ランク冒険者がフル稼働していました。他にも……」
カレナリエンとメルタの報告を聞いていた亮二が、ふと自分の冒険者ランクがBのままである事を思い出して確認する。
「そういえば、俺の冒険者ランクの件なんだけど……」
「それでしたらご安心下さい。リョージ様の冒険者ランクはSに変更になっています。こちらが新しいタグと証明書になります」
メルタから受け取ったタグはミスリルで出来ており、証明書にはSランクである事と、職業も戦士から魔法戦士になっていた。それと推薦者の名前が細かく記載されていた。
「おぉ! おお? ちっちゃ! 推薦者の名前がちっちゃい!」
「なんとか証明書の欄に収めるために文字が小さくなってしまいました。マルセル王に、公爵ハーロルト様、王立騎士団長のテオパルド様に宮廷魔術師のヘルマン様やラルフ枢機卿、辺境泊ユーハン様以外の王国の貴族の他に、帝国側の皇族を初めとする貴族一同の名前が書かれています。他にも商人や一般市民からも推薦状が届いてたそうですが、多すぎるので後ほどまとめてから手渡しされるそうです」
亮二は心の中で保険の約款みたいだなと思いながら小さく書かれた人の名前を確認していると、メルタが心配そうな表情で語りかけてきた。
「ギルドではリョージ様の職業を英雄にしようとの話も出ていたそうですが、魔法戦士を望まれていましたので、そちらに変更してもらいましたが問題なかったでしょうか?」
「いいよ。職業が英雄って意味分からないからね。やっぱりテンプレ的には魔法戦士が一番だと思うんだよ」
メルタの言葉に亮二は苦笑しながら答えた。周りの婚約者達も同意しているようだったのでホッとしながら話を続ける。
「Sランクの魔法戦士は完璧にテンプレとして押さえたかったから嬉しいよ。他には変わった様子はなかった?」
「他には神都までの護衛も募集していましたね。実力を確認するための大会も開催されるようです」
王都がオルランドの結婚特需で盛り上がっている様子を確認した亮二は、ソフィアやライラにスイーツの開発状況を確認した。
「こちらも新作スイーツは完璧です! ライラさんと二〇種類ほど作りました!」
「当然! 僕たちにかかれば新作なんて毎日でも作れるよ!」
亮二の言葉にソフィアとライラが顔を輝かせながら、アイテムボックスから次々と新作のスイーツを取り出すのだった。
「わぁ。凄い」「おぉ! やるじゃん!」「この大きさは見る者を圧倒しますね」「これ美味しい」「帝国にもすいーつの店を作るべきですね」「これに合う紅茶はどうしましょうか」
大量の新作の中で、ひときわ目立っていたのは七段のウエディングケーキだった。一番上にはオルランドとエリーザベトを模した砂糖菓子が飾られており、ケーキ全体には果物がふんだんに使われていた。
「以前にリョージ様からお話を聞いた結婚式で使うすいーつです! 作ってすぐにアイテムボックスに入れて販売すれば日持ちします」
「なるほど。そこまで考えてるんだな。いいね! 俺から指摘する事はないから、オルランド達で使ってもらって宣伝しよう! 結婚祝いの一つはこれだな」
亮二の言葉に婚約者達は色めき立った。後の亮二での結婚式でも一人一つのウェディングケーキが用意され、王侯貴族や富裕層だけでなく一般市民も結婚する際はウェディングケーキを用意するのが基本となるのだった。
俺も実力を確認するための大会に参加しようかな?