354話 食事と魔法の練習でワンセット -みんな頑張ってますね-
ライラは混乱している
夕食も終わり、馬車に乗り込んだライラが極度の緊張状態で座っていた。後を追いかけた亮二は心配のあまり声を掛ける。
「さっきから様子が変だけど大丈夫? ライラ?」
「ふぁ! だ、だ、大丈夫りゃりょ! さあ! こい!」
「なにと戦おうとしてるんだよ?」
緊張した様子で真っ赤な顔になりながら答えてくるライラに苦笑を浮かべていると、他の婚約者達も馬車に乗り込んできた。
「ライラ? 今日はキャンプを張って宿泊ですから出発は明日ですよ?」
「ライラ。緊張しすぎ。気持ちは分かる」
呆れた表情でエレナが話しかけ、緊張のあまり固まっているライラの肩をクロが軽く叩いた。他の婚約者達も集まって優しく声を掛けていると、緊張も解れたのか、普段の表情に戻り若干頬を染めながら亮二に話しかける。
「もう大丈夫! リョージ。今日は帰るね。また明日……痛い!」
魔道具拡張の部屋へ入ろうとして頭をぶつけたライラは、先ほどと同じように顔を赤らめるとダッシュで部屋の中に入っていった。
「まだ、緊張してるみたいですね」
「前に馬車で移動した時は、あそこまで緊張してなかったのになあ」
微笑ましそうにライラの後ろ姿を眺めながら呟いたカレナリエンに、亮二も首を傾げながら答えるのだった。
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「よく寝た! さてと朝食を作るとするかね」
テントから出て伸びをしながらストレージから食材を取り出すと、亮二は調理を始めた。
「なににするかな。朝から肉は重いだろうしな。よし! 麺類にするか。うどんだったら試しに作った奴があったよな?」
調理を始めながらメインが決まらなかった亮二だったが、ストレージから試しに作ったうどんを取り出すと茹ではじめた。ゆで上がった状態のうどんを土属性魔法で作り出したどんぶりに入れると、次々とストレージに収納する。
「よし! これでのびないな」
自分の思いつきに機嫌良くなった亮二は大量のうどんをひたすら茹で始めた。三〇分ほどで朝食の用意が終わった亮二は、暇つぶしに魔法の練習を始めた。
「そういえば空って飛べるのか? 風属性魔法を最大にして……。ん? そういえば、俺って時空魔法も使えたよな? よし飛び上がった後に時空魔法で固定してみよう」
ステータスで属性魔法を確認した亮二は、風属性魔法で飛び上がると時空魔法を使って固定を始めた。
「おっ? ひょっとして上手くいく感じ……。うぉ!」
途中までは空中で固定が出来ていたが、前に進もうとするとバランスを崩して落下してしまった。しばらくブツブツと呟きながら調整をしていた亮二だったが、使い勝手の悪さに利用を諦めてなにげに周りを見渡すと護衛の兵士達とライラが見学をしていた。
「どうしたんだよ? そんなところで見学なんてしてないでこっちに来いよ。それとも先に朝食を食べるか?」
「リョ、リョージ? いま空を飛んでなかった?」
ストレージから水筒を取り出して喉を潤しながら話しかけた亮二に、見学者を代表する形でライラが話しかけてきた。亮二が風属性魔法と時空属性魔法を使って空を飛ぼうとした事を話すと一同から絶句が返ってきた。
「いや。結局は飛べなかったんだよ。空中で止まる事は出来る……。おい、みんな変な顔になってるぞ?」
「な、なんで僕でも持ってない時空属性をリョージが持ってるの? 母様だっで持ってないのに……」
「お、お、おぉ! 伝説が生まれた瞬間に立ち会ったぞ!」「人間は空を飛べるのか」「帰ったら仲間達に自慢しないと!」「お腹すきました!」
ライラが完全に落ち込んだ感じになっており、周りにいる兵士達がそれぞれに話しているのを見ていた亮二は手を叩きながら話しかける。
「まずは朝食を食べよう。その後に出発時間を少しずらして魔法の練習をしよう」
「じゃあ、僕も新しい属性が使えるようになる? カレナリエンさんやメルタさんみたいに?」
ライラの問い掛けに亮二は明るく頷きながらうどんを取り出すと、順番に手渡していくのだった。
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「よし! 食事も終わったから二時間ほど魔法の練習をしようか」
「リョージ様の作ったうどん美味しすぎるだろ」「俺は三杯もお代わりしたぞ」「もう一度食べたい時はどこで食べたらいいんだ?」
亮二の問い掛けに兵士達は魔法の練習よりも、うどんがどこで食べられるかを気にしている様子だった。苦笑しながら兵士達を眺めていた亮二は、彼らがやる気を出すための提案を行う。
「うどんについては領都の料理店で売り始める予定にする! これから魔法の練習をするが、お前達のやる気を出すために褒美を用意しよう。俺が感心する内容だったら、うどんを自由に食べられる食券を一年分やろう!」
「「「うぉぉぉぉ!」」」「やるぞ!」「俺が手に入れてやる!」「俺はすでに火属性を持ってるから有利だな」
亮二の褒美を聞いた兵士達のテンションが最高潮になった。そんな様子を嬉しそうに眺めていると、ライラがためらいがちに話しかけてきた。
「ねえ。リョージ。僕はうどんはいらないから、代わりのモノをもらえるかな?」
「ん? 別に構わないぞ。なにが希望なんだ?」
いつもと違う感じのライラに首を傾げながら亮二が問い掛けると、恐る恐るな感じで話し始めた。
「首輪と尾に付けるリボンが欲しいな」
「えっ? それだったらすぐにでも用意するけど? ミスリル製でいいだろ?」
亮二はストレージからミスリルを取り出して作業を始めようとした。それを慌てて止めるとライラは真剣な面持ちで話し始める。
「僕がリョージを感心させないと駄目なんだよ。頑張るから見てて!」
「お、おぉ。分かった。楽しみにしてるから頑張ってくれよ」
ライラの真剣さに亮二は気圧されながらも笑顔を浮かべると応援するのだった。
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亮二指導の元、魔法の練習を始めたライラと兵士一同はあまりの出来事に唖然としていた。
「おい……。水属性が使えるようになったぞ」「俺も」「火属性しか使えなかったのに、水と風が使えるようになったぞ。それに詠唱破棄も出来たぞ!」
「いいか! 自分で勝手に属性を決めつけるなよ。あくまでも魔法は自分のイメージ……想像した事を魔力を使って実現する事だと思え。この国で火属性を使える者が多いのは、普段から火を使っているから想像しやすいためだ」
兵士達のざわめきに亮二はドヤ顔をしながら説明を始めた。当たり前のように説明する内容に一同は驚愕の表情で聞いていたが、その中でライラは真剣な目で亮二に問い掛ける。
「僕は時空魔法が使えるようになって驚愕してるんだけど、これはどんな想像をしたから出来る様になったの?」
ライラの質問に亮二は説明を始めた。兵士達には水と風を使った魔法を見せる事でイメージしやすくした事。魔力が少ない者にはマナポーションを渡して数をこなさせた事。
「ライラについては、付きっきりで時空魔法を教えただろ?」
「そ、それはそうだけど……」
二時間近くを付きっきりで教育を受けていたライラは、その時の事を思い出して顔を赤らめていた。その様子を見ながら、ストレージからミスリルを再度取り出して首輪とリボンを作り出した。
「はい。欲しかった首輪とリボン」
「ありがとう! これに僕の尻尾の毛を練り込む事って出来る?」
亮二はライラから尻尾の毛を受け取ると軽い感じで首輪とリボンに練り込んだ。
「うぉ! な、何事?」
亮二が作業を終えた瞬間に首輪とリボンが、いつも以上に光り始めた。光が収まった後には複雑な模様が描かれた首輪とリボンが出来上がっており、唖然としている亮二からライラは満面の笑みで受け取って装着した。
「ありがとう。これで僕はリョージのモノになったから。お母様にも報告をしないと」
「な、なに? どう言う事?」
混乱している亮二にライラが首輪と尻尾にリボンは正式な番になる手続きである事を伝えるのだった。
どう言う事?




