327話 戦後処理の始まり3 -特別賞を渡しますね-
魔剣の騎士団!
「痛ぃ! なにすんだよ! マルコ!」
「なにしてくれてんだよ! 騎士団全員に魔剣を配布? お前さんは王国と帝国相手に全面戦争でもする気か!」
壇上で最後のグループに魔剣を配布し終わった所で、マルコから鋭いツッコミが入った。突然の攻撃に亮二は頭を押さえながら涙目になって反論する。
「さっきまでマルコは黙って見てたじゃん! それに活躍した者には魔剣を与えるって宣言したんだろ? それで全員が活躍したんだよ。だったら全員に魔剣を与えるしかないっしょ! セバスもいたから効率よく作れたから余裕で作れたし渡せたよ」
「身に余るお言葉で御座います。私の力が少しでもリョージ様のお役に立てたのでしたら、これに勝るものはありません」
セバスチャンは亮二に対して恭しく跪くと頭を垂れた。その様子を眺めていたマデリーネが羨ましそうに二人を見ていたが、亮二と目線が合うと顔を赤らめて下を向くのだった。
亮二の視線に顔を赤らめて下を向いているのを微笑ましそうに見ていたカレナリエンと、呆れたような顔をしたマルコの視線が亮二に集中した。
「初々しいですね。さすがは帝国で親衛隊を任せるに値する方です」
「おい。ここでも嫁を作る気じゃないだろうな? ちゃんとマルセル王に許可を取れよ? お前さんは伯爵なんだからな。魔剣の件は諦めるが周りへの報告は忘れるなよ」
「なにマルコは話を勝手に進めてるんだよ! そんなつもりはないからな! それにカレナリエンは後で親衛隊の事についてジックリと教えてもらうぞ!」
にがり顔のマルコにツッコミを入れながら、親衛隊の全体像が掴めない亮二はカレナリエンに後からしっかりと聞いていこうと思った。
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「では最後にリョージ様から特別賞が発表されます。こちらは、この戦いにおいて特別に活躍された方に送られる賞です。では、リョージ様お願いします!」
「おう! じゃあ、早速発表するぞ。これはアライグマ騎士団だけでなく、今回の戦いにおいて活躍した者に授与される。アンデルス殿下とクヌート殿下には許可はもらっているから安心してくれ。ちなみに今回の戦いは一人の魔族が暴走した結果であって、魔族全体は関わっていない事を忘れないようにして欲しい。それとアライグマ騎士団全体に魔剣を配布した事を伝えておく! いやぁ。結構大変だったよ。材料が足りなくってさ、慌ててセバスの洞窟に…… 痛ぃ! なに? 早く発表しろって? 分かったよ! 今回の特別賞はマデリーネ殿下です! さあ、壇上へ」
カレナリエンから引き継いだ亮二が嬉しそうに特別賞の説明などを始めていたが、話が長くなりそうな空気を醸し出した瞬間にマルコからツッコミが入り会場は笑いに包まれた。
亮二はマルコを軽く睨んだが、ハリセンを振り上げたマルコから無言で催促をされると、慌ててマデリーネに壇上に来るように伝えた。
「え? えっ? 私? なんで? えっ? 兄上?」
突然呼ばれた事に混乱しながら周囲を見渡していたマデリーネの頭を撫でつつ、クヌートが話しかける。
「憧れていたドリュグルの英雄殿が君の事を呼んでるよ。それにマデリーネは、いつものような笑顔を浮かべないと。君の事を大事にしていたヘルベルトも悲しむよ。さあ、早く上がっておいで」
「は、はい! 行ってきます! ありがとう兄さま!」
クヌートに軽く背中を押されたマデリーネは華が咲いたような笑顔を兄であるクヌートに向けると、小走りに壇上に向かっていくのだった。
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「実は、マデリーネ姫を特別賞に決めたのは俺じゃないんですよ」
「えっ? そ、そうなんですか……」
亮二が決めたのではないと聞かされたマデリーネが少しガッカリした顔を浮かべたのを見て、亮二はにこやかに笑うと舞台の後で控えていた者達を連れて来るように指示を出した。カレナリエンによって連れてこられたのは、亮二と出会う切っ掛けとなった守っていた帝国民達と白龍騎士団の面々だった。
「ひめきしさま! わたしたちをまもってくれてありがとう!」
「姫騎士様のお陰で死人が出ずに済みました」
「これからも姫を盛り立て、帝国の盾となって忠誠を尽くします!」
推薦者である者達から感謝の言葉を掛けられると、マデリーネは瞳を潤ませながら何度も頷いた。
「じゃあ、さっそく特別賞の授与を行おうか。まずは金貨二〇〇枚!」
亮二から告げられた金額の多さに、アンデルス以外から驚きの声が起こった。
「えっ? 金貨二〇〇枚? 一番活躍された方々で五〇枚だったので……」
「それから食料半月分! 初級ポーション二〇〇本! 衣服に布団に医療品が数多く! それに見学に来られている皆さん! 特別賞ですから、他の方からも受け付けますよ。それとアンデルス殿下からは金貨五〇〇枚をすでに受け取っています」
恩賞の金貨がさきほどより多い事にマデリーネが軽く戸惑っていたが、亮二は気にする事なく次々特別賞の内容を告げ始める。その内容が支援物質である事に一同が理解の色を浮かべ出したタイミングで、亮二が笑顔とともに他の者達にも支援の募集をおこなった。
「なるほど。殿下とリョージ殿は面白い事を考えられますな。後でハーロルト公に確認しますが、まずは金貨一〇〇枚!」「元寄り親としていいところを見せないとね。金貨三〇〇枚だしますよ」「私は資金は出せませんが食料の提供なら」「では教会からは神官団を派遣しましょう」
次々と特別賞との名で支援を名乗りでる王国の貴族達に、帝国の重鎮達で今回被害を受けなかった者達も慌てて支援を名乗り出るのだった。
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「アンデルス殿下。貴方って人は……」
「私は発案しただけですよ。後はリョージ伯爵の人徳でしょう。これからも争うことなく、王国と帝国が発展できる事を願っております。それに支援の応募は一段落つきましたが、マデリーネ姫への恩賞は終わってないようですよ」
感動した面もちでアンデルスを見てきたクヌートに苦笑しながら語りかけると、壇上で動きがある事を伝えて亮二達に視線を移した。
壇上では亮二が剣を取り出してマデリーネに手渡そうとしている最中だった。微笑ましそうな顔で壇上を眺めていたアンデルスだったが、亮二が取り出した剣が刺突剣だと気付いたアンデルスは驚きの顔で立ち上がると壇上に向かって全力で走り出すのだった。
アンデルス殿下が全力でこっちに向かって来てるけどなぜ?