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302話 食事を配りますね -どこでも小悪党未満は居ますね-

全員分の食事を作るなんて軽い軽い!

「並んで! 大丈夫! 全員分あるから。そこ! 順番抜かしはしない!」


 まずは3000人分の食事を用意した亮二は、王国兵士達より先に帝国民に配布を始めた。温かいスープにナンのようなパンを用意し、老若男女関係なく食べれる物にしていた。


「おい! 邪魔だ! 俺達が先に食べるんだからどけ!」


 列に並んでいた人を押しのけて五名ほどが割り込んできた。周りの非難に対して筋肉質な大男が怒鳴り声を上げて威圧すると、非難しようとしていた者達は押し黙ってしまった。


「ふん。最初から大人しく譲ればいいんだよ! それにしても食料を用意していると言っておきながらスープかよ。もっと美味いもんを用意しろよ。量も少くねえし…… 「おい! なに割り込んでるんだよ。人数分有るって言ってるだろ。列に並べ」」


 悪態をついていた五人に亮二が声を掛けた。声を掛けられた五人は、子供から正論を言われた事に激昂すると亮二の周りを取り囲んだ。


「もう一回言ってみろ。子供だろうと容赦しねえぞ! この方は帝国歴戦の傭兵団団長の……ぎゃぁ!」


「うるさい。並べって言ってるだろ! ちょっと、待っててね。このおじさん達を軽く黙らせて美味しいご飯を配ってあげるからね。それまでは飴でも食べて待っててくれるかな? お友達にも配ってくれる?」


 亮二は威嚇しながら近付いてきた男を殴りつけて黙らせると、近くで震えている幼女の目線に合わせながら話しかけると、ストレージから瓶に入った飴玉を取り出して幼女の口に放り込んだ。幼女は今まで食べた事のない甘いお菓子と、亮二に頭を撫でられた事で泣きそうな表情から満面の笑みになると、飴玉の入った瓶を受け取って周りの友達や親に配り始めた。


「ありがとう! お兄ちゃん! わるいひとをやっつけてね!」


「任せとけ! あんなやつらは一瞬でやっつけてやるからね」


「ふざけるな! 傭兵の恐ろしさを教えてやる! おい、野郎ども一斉に掛るぞ!」


 顔を真っ赤にしながら割り込みをしていた四名は亮二から馬鹿にされた事に気付くと、雄たけびを上げながら殴り掛かってきた。


「俺が今まで鍛えてきた部下よりも弱いぞ? お前ら本当に歴戦の傭兵団か?」


 亮二は前後左右から一斉に襲いかかってきた男達の動きを見ながら鼻で笑うと、目の前の男の攻撃に合わせてカウンター気味に殴りつけた。鼻血を流しながらもんどりうって転倒した男は気絶寸前で悶絶しており、亮二の攻撃の威力に怯んだ三名は動きを一瞬止めてしまった。


「ほら。隙だらけだぞ」


 亮二は軽い口調で言いながら、右に居た男に向かって無詠唱でライトニングニードルを四肢に撃ち込み、崩れ落ちる様に倒れた男には視線も向けずに、左の男の懐に潜り込むと鳩尾に拳を叩きこむのだった。


 ◇□◇□◇□


 一瞬で三名を戦闘不能にされ一対一で向き合っている男は脂汗を流しながら、目の前に居る少年の強さに怯えを滲ませるような目線を向けながら叫ぶように問いかけた。


「な、何者なんだよ! お前は!」


「えっ? 俺の事を知っていながら絡んできたんじゃないの? じゃあ、せっかくだから名乗ってやろう。俺の名前はリョージ=ウチノ。サンドストレム王国で伯爵をやったり、冒険者をしたりしているぞ? 結構有名人だから知ってるんじゃないのか?」


 男からの質問に軽い感じで返事をした亮二に、周りからどよめきが起こった。自分達を魔物から守ってくれ、あと少し失うところだった敬愛する姫騎士を救ってくれた人物だったからである。


「えっ? リョージ伯爵って身長二メートルは…… 「それはもういいから! ついでに愛人なんて居ないからな!」」


 周りに居た男性が呟こうとしたのを、亮二は鋭く止めると愛人が居ない事も強調した。亮二の事を応援していた幼女達が周りの大人に「あいじんってなに?」と聞いたようで、困った大人達は大好きな人の事を愛人と呼ぶと伝えると、不思議そうな顔をしてさらに質問をしていた。


「お兄ちゃん、だいすきなひとがいないの? だったらわたしがあいじんになってあげる!」


「わたしも!」「じゃあ僕も!」「みんなでなったらいいんだよ!」「ほんとうだ! みんなであいじんになろう!」「がんばれぇ! お兄ちゃん!」


 亮二から貰った飴玉の入った瓶を持っている幼女が叫ぶと、一緒に応援していた幼女たちが次々に叫び始め、亮二に向かって口調を揃えて熱のこもった応援を始めるのだった。


 ◇□◇□◇□


 幼女達から愛人になる宣言を応援と一緒に受け取った亮二は、天をしばらく仰いでいたが、幼女達にぎこちない笑顔を浮かべながら手を振った。


「お前ら! ゆるさん!」


「えっ? お、俺らは関係ないだろ?」


 こめかみ辺りに青筋を立て、笑顔を貼り付けたまま目が笑っていない状態で亮二が威圧を込めて残っている男に近付くと、引き攣った表情で男は後ずさりし始めた。


「安心しろ。お前の仲間は回復させてやってるぞ」


「はっ? 回復? お前ら! もう大丈夫なのか?」


「気付いたら動けるようになってました。団長は大丈夫ですか? なんか知りませんが完全復活したからにはもう大丈夫ですぜ! サクッとコイツを殴って俺達の…… ぎゃぁ!」


 質問してきた男が喋っている最中に亮二はウォータボールをぶつけた。再びもんどり打って完全に気絶した男を見ながら、亮二は目が笑っていない笑顔で団長と呼ばれた男に話しかけた。


「おい。簡単に許してもらえると思うなよ。そこに転がった奴は運良く(・・・)気絶出来たが、意識があるやつは俺の気が済むまで戦闘訓練に付き合ってもらうからな。全員連れて行け! みんなは食事を満喫してくれよ! おかわり自由だからな」


 列に割り込んだ男達は、どこからとも無く現れた黒装束の男性達に連れていかれた。亮二はその様子を眺めながら軽く頷くと、周りに居た者達には食事をするように語りかけ、連れ去られた男達の方に向かって歩いて行くのだった。

幼女は亮二を見つめている!

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