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295話 帝都に向けて -出発しますね-

準備が整いましたので出発します。

「帝都に向けて全軍出発! ユーハン伯爵! 補給については頼んだ!」


「はっ! 任されました。安心して行軍をお続けください。殿下がリョージ伯爵の食事を満喫出来るように全力を尽くします」


 アンデルスの号令に行軍する部隊からは鬨の声が、ユーハンからは笑いながら返事が返ってきた。ユーハンの台詞に苦笑を浮かべながら亮二は力強く頷くと、全軍に聞こえるように叫んだ!


「ユーハン伯爵が間違いなく食料を持って来てくれる! 今日の夕食から飛ばして作るぞ! 期待して待ってろよ!」


 亮二の気合の入った宣言に、行軍を始めた兵士達から歓声や気合を入れる声が溢れかえった。


「おぉ! リョージ伯爵が気合を入れて料理を作るってよ!」


「私は神官団として合流したばかりなんだが、それほどリョージ伯爵の料理は凄いのか?」


 亮二の料理を食べた事の無い神官の一人が隣りにいた兵士に問い掛けると、周りに居た兵士や騎士達が熱く語り始めた。


「あったりまえだよ! これだけ素晴らしい料理を食べたら、王都に戻ったらどこで飯を食えば良いのか悩んでるんだよ」「馬鹿かお前は! 王都だったら、屋台時代にリョージ伯爵に認められて店まで出したのがあるじゃないか! 俺なんてハーロルト公爵の領地なんだぞ。どうしたらいいんだよ!」


 周りから亮二の料理に対する感想が勢い良く飛んできた事に神官は驚きながらも、それほど評価される亮二の料理が夕方には食べられるのを考えると、普段は苦になる行軍の足取りも軽くなるのだった。


 ◇□◇□◇□


「よし。これで、兵士達のやる気も上がっただろう。俺はどうしたら良いの? アマンドゥス騎士団長」


「ん? 伯爵は好きにしてもらって構いませんぞ。むしろ命令をする方がなにをしてもらったらいいのか判断に悩みますからな」


 兵士達の士気を鼓舞した亮二が、帝都への行軍責任者のアマンドゥスに指示をもらおうとすると、好きにして欲しいとの要請があった。周りの高級士官達を眺めた亮二だったが、一同からも信頼し切った目で見られており、あまりの信頼ぶりに若干照れが入った亮二は、そっぽを向きながら呟いた。


「そ、そこまで信頼されているなら頑張ろうかな。とりあえず、マルコからツッコミを貰う方法を教えてあ…… 痛ぃ! なにすんだよ! マルコ! 俺とみんなの友好を深める時間の邪魔をするなよ!」


「うるせぇ! なにが友好を深めるだ! 俺からツッコミを貰う方法なんて全員に教えられたら、俺の私生活に影響が出るわ!」


 爽やかにツッコミを貰う方法を高級士官やアンデルスに伝えようとした亮二に対して、全力でツッコミを入れたマルコを見ながら亮二はニヤリと笑うと一同に向けて両手を広げて説明を始めた。


「これが第一段階のツッコミを貰う方法です! 基本はマルコがツッコミを入れたくなるような…… 痛ぃ! 痛ぃ! 見ましたか? これが中級の方法で…… 痛ぃ! ちょ! マルコ! 銀のハリセンは…… 痛ぃ! 本気で痛ぃ!」


「よし! リョージはそこを動くな。この作戦に対して好きにして良いのだったら、俺の金のハリセンを全力で受け止めろ。冗談でお前がくれたハリセンだ。最初に受けるんだったら本望だろう?」


 マルコがアイテムボックスから取り出したのは、アマンドゥスに魔剣を作ったついで(・・・)に一緒に作成した金のハリセンだった。マルコがスナップを軽やかにきかせながら近付いて来るのをみて、ネタアイテムとして渡したつもりだった亮二は青ざめながら、上ずった口調で首を振りながら、後ずさっていた。


「マ、マルコ。金のハリセンは重さが半端無くあるから、銀のハリセンなんて比じゃないくらいにダメージが有ると思うんだよ」


「しるか。お前はいっぺん懲りろ!」


 手首のスナップだけで打ち下ろされた金のハリセンに生命の危機を感じた亮二は、不可視の盾形ガントレットを頭上にかざして受け止めた。


「がっ! お、重い。そして衝撃が……」


 想定した以上に衝撃がきた事に驚愕の表情を浮かべた亮二だったが、再度振り上げられたハリセンとマルコの無表情の笑顔を見て絶望に彩られるのだった。


 ◇□◇□◇□


「本気で痛い……」


「痛いのが嫌だったら少しは懲りるんだな」


 左腕に残っている衝撃を誤魔化すように腕を振りながら呟いている亮二と、冷静な表情で話しているマルコを見ながら見学していた一同は驚愕の表情を浮かべながらヒソヒソと話をしていた。


「あの金のハリセンだが、五度目の攻撃をリョージ伯爵は避けたよな?」「ああ。イオルス神の神具と言われている不可視の盾形ガントレットをもってしても受け切れないとは」


 高級士官達が眺めているのは亮二とマルコの掛け合い漫才ではなく、マルコが五度目に振り下ろした金のハリセンの跡だった。どういった効果が金のハリセンに付与されているかは分からなかったが、亮二が避けた後には直径一メートル程で深さ三十センチのクレーターが出来上がっていた。


「と、とりあえず、上級編としてはマルコ殿に最終兵器である金のハリセンまでは出さすなって事でいいのか?」


 絞り出すように呟いたアンデルスに、周りの貴族達も青ざめた顔をしながら頷くのだった。

金のハリセン五連撃は洒落にならない……。

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