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異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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289話 初戦の前奏曲3 -マルコとユーハンの登場ですね-

アンデルスは殿(しんがり)を務めているアマンドゥス達を気にしながら街道を30分ほど走らせていた。


「私は何のためにここまで来たのだ」


全軍が潰走状態で拠点に向かって逃げている中、アンデルスは暗い気持ちになっていた。父マルセル王から今回の援軍の総指揮官に任命された時には心が踊った事。リョージ伯爵と初めて喋った時に浮かれていた事。アマンドゥスが魔剣をリョージ伯爵に作ってもらったのを見て羨ましく思った事。敵軍が現れて動揺して焦っていた事。様々な事を思い出しながら鬱積とした気持ちがアンデルスの心を締め付けるようだった。


「結局、守られて逃げるのが役目なのか」


自分の代わりにアマンドゥスが殿を買ってでた時は止めはしたが、心の奥底では安堵した事にアンデルスは気付いていた。高貴なる者の義務として意気込んでいたにもかかわらず、結局はなにもする事が出来なかった。悔しさの涙で前方の景色が見えにくくなりながら疾走していたアンデルスの耳に、先頭を走っていた兵士の声が聞こえてきた。


「前方から武装した集団がやって来ます! かなりの速度です!」


「なに! 敵兵か!」


突然、前方から武装した集団がやって来ると告げられた一同は混乱状態になった。ドリュグルの英雄である亮二は居らず、マルコも補給部隊の指揮で一時離れており、全軍を実質的に率いていたアマンドゥスは殿として戦場に残り命令できる人間が現場には誰も居なかった。


「こんな時に指揮を出来る人材が誰も居ないとは……」


自分も含めて指揮が出来ない状態に愕然となっていたアンデルスの声に、前方から馬で駆けつけたマルコから声が掛かった。


「早馬で情報をもらいました! ご無事ですか! 殿下!」


「私は大丈夫だ! それよりもアマンドゥスが殿として残ってくれている! どうすればいい?」


マルコの言葉に対して、安堵と焦りの声が入った声で答えたアンデルスの表情を見て想定以上に切羽詰まった状況であると判断したマルコは、潰走中の兵士達は止めずに主だったものだけを残して作戦会議を始めるのだった。


◇□◇□◇□


「では、私とマルコでアマンドゥス騎士団長の援軍に行きます」


「なっ! そ、それは……」


事情を聞いて、アマンドゥスへの救援に向かうと平然と述べたユーハンと、隣で気楽に頷いているマルコに作戦会議に出席していた潰走組の貴族達やアンデルスは唖然とした表情を浮かべていた。


「どうされたのですか? そんな顔をされて? 当然ですよ。殿下は我々の事をお忘れではないのでしょうか? リョージには敵いませんが、弟のユーハンと共に王国最強の盾と言われ牛人を追い払った兄弟ですよ」


「そうですよ。私も最強の辺境伯と言われ、兄のマルコもドリュグルの守護者やツッコミ魔神と…… 痛ぃ!」


マルコの自信に満ちた獰猛な笑みを見て、ユーハンも一緒に力強く頷きながらアンデルスを安心させるために話し始めたが、途中でマルコからミスリルのハリセンで全力でツッコミを受けた。


「誰がツッコミ魔神だよ! せっかくリョージが居ない間に真剣な感じで話しているのに、ツッコミをさせるんじゃねえよ!」


「なるほど。これが、貴族どころかマルセル王や枢機卿達も会合を持って受ける順番を決めたツッコミか。兄弟特権が適応されずに会合に参加して48番目だったが、ここで順番飛ばしを受けられたのは僥倖か。我が兄ながら素晴らし…… 痛ぃ! まさか2連続で…… 痛ぃ!」


マルコのツッコミを受けたユーハンは王都で開催された特別会議の内容の説明や、冷静にツッコミに対しての感想を述べる度にマルコからツッコミを受けるのだった。


◇□◇□◇□


「では、締まらない感じなりましたが、アマンドゥス騎士団長は我々が必ずや救ってみせますので安心して最初の拠点でお待ち下さい。もし、ゾンビ化した別の部隊が襲ってきた場合は避難をお願いします。早馬で王都に神官団の要請は済ませていますので、合流して指示に従って下さい」


マルコのゲンナリとした表情に10分も掛かっていない内容の濃い作戦会議を思い出して、苦笑を浮かべていたアンデルスだったが、真剣な顔になると2人と騎士達に向けて激励を行った。


「分かった。ユーハン伯爵もマルコも皆も十分に気を付けてくれ」


「かしこまりました。では! 行くぞ! アマンドゥス騎士団長達を救いに! 上手くすれば偵察中のリョージ伯爵と合流出来る! その時は全力を出しきってくれ! リョージ伯爵に良いところを持っていかれるなよ」


「「「おぉ!」」」


ユーハンの掛け声に騎士達が声を上げて応えながら一斉に馬に乗ると、アンデルスに一礼してアマンドゥス達が殿を務めている場所に向かっていくのだった。


「それにしても、リョージ伯爵はどこまで偵察に行かれているのでしょうな」


「第1王子のクヌート殿下が居る街とは違う場所に偵察に行くと言っていたからな。リョージ伯爵が愛されているイオルス神の加護でアマンドゥスに幸福が訪れるといいのだが」


ユーハンとマルコ達を見送りながら呟いた貴族の言葉に、アンデルスも同意するように頷きながら全員の無事をイオルス神に祈るのだった。


◇□◇□◇□


「ところで、ユーハンよ。その会合ってのはいつの間に行われたんだ?」


「ん? 最近だぞ。ロジオン殿下が来られた時の秘密会議の場所でリョージとマルコがテオバルト殿を呼びに行った時にクジ引きで決まったぞ。公平にクジ引きと言ったラルフ枢機卿は号泣していたな」


「あの時か。そんな会議を最高秘密の部屋でするなよ。で、ラルフ枢機卿はなにやってんだよ……」

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