285話 帝国への進軍前の一コマ -剣を修理してみますね-
2016/05/15記載
大剣が軽くなる事で、威力が弱くなったり使い勝手が変わってアマンドゥスが戸惑うとの感想も有りましたので加筆修正しています。これで、違和感が少なくなると良いのですが……。
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楽しいイベントの始まりです。
「よし! 1時間も有れば色々と試せるな」
「なにするつもりなんだよ? あまり無茶するなよ。その大剣はアマンドゥス騎士団長の愛剣だと言う事を忘れるなよ」
マルコが不安そうな顔をしながら注意をすると、亮二は心外そうな顔をして土属性魔法で10畳ほどの小屋を作ると、中に入ってストレージから鍛冶道具を取り出してセッティングを始めた。
「最初に大剣を柔らかくしてミスリルを混ぜ込むか。それにドラゴンの魔石に属性を付与させて…… 痛ぃ! なにすんだよ! マルコ!」
「おい! お前はなにを作ろうとしてんだよ! 魔剣でも作る気か!」
マルコにミスリルのハリセンで後頭部を叩かれた亮二は頭を擦りながら、大剣の刀身部分に魔力を通して柔らかくすると、ストレージから何かを取り出して混ぜあわせ始めた。
「おい! ちょっと待て! なにをしてる?」
「えっ? 別に大剣の刀身部分に魔力を通して柔らかくしてミスリルを混ぜただけだぞ?」
亮二の行動に驚いたマルコが思わず止めようとしたが、その時にはすでに大剣は柔らかくなっており、驚いていて硬直しているマルコを尻目に亮二はミスリルを混ぜて成形を始め、ストレージから魔石を取り出して属性を付与させて組み込みながら1時間ほどで大剣の修復を完成させた。
「せっかく、修復するんだったら自重無しで振り切ってやった方が俺らしいだろ? でも、安心してくれマルコ! 刀身の形状は魔力を流しやすいように考えてデザインをしたし、鞘自体にも工夫してるんだよ! それに、色々と組み込んだからアマンドゥス騎士団長も喜んでくれるはず!」
「どんな工夫を大剣と鞘に施したのか、それ以外にもなにを工夫したのか軽く聞いてみてもいいか? 嫌な予感しかしないが」
マルコの悟りきった表情に亮二は首を傾げながらも、大剣に対して施した内容の説明を始めた。大剣の修復をする際にミスリルを練りこんで、強度と魔力を通しやすくした事。刀身に模様を施して属性付与を簡単に長時間出来るようにした事。鞘には魔石を散りばめておりキーワードを唱えると不可視の盾形ガントレットと同じような防御壁が出る事。
「それに、まだあるんだよ!」
「まだあるのかよ……」
マルコの盛大なため息を聞きながら亮二はさらに説明を続けた。
「まず、大剣に俺の持っている属性の雷、水、火、風、氷を付与した魔石を埋め込んだ」
「ほう、それだけ属性が付いてると国宝レベルだな。素材にミスリルも使われているからアマンドゥス騎士団長に渡したら賊などに狙われるんじゃないか?」
「そんな心配をされている貴方に朗報です!」
大剣のあまりの性能の高さを聞いたマルコが驚き過ぎて無表情になりながら感想を述べると、その台詞を待っていたとばかりに亮二は力強くセキュリティ対策についても話し始めた。
「この大剣は所有者登録が出来るんだよ。例えば俺が持つと……『管理者であるリョージ=ウチノ様であると認証しました』」
「なっ! その大剣はしゃべるのか?」
突然、大剣から声が聞こえたのにマルコが驚いていると、亮二が大剣の握りの部分をマルコに向けて持ってみるように伝えると、恐る恐るな感じで握ったマルコに大剣から声が聞こえてきた。
『ツッコミ神であるマルコ=ストークス様である事を認証しま……痛ぃ!』
「誰がツッコミ神なんだよ! 無機物でも容赦しねぇぞ!」
「お、おぉ! まさか大剣にツッコむとは。流石はマルコ! それに大剣も『痛ぃ!』って言うんだ…… 痛ぃ!」
大剣にミスリルのハリセンでツッコんだマルコに感心しながらメモを取って頷きつつ分析している亮二に、マルコはミスリルのハリセンで全力でツッコむのだった。
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「どうだ、リョージ伯爵。剣の修理は済んだかね?」
「もちろん! アマンドゥス騎士団長に相応しいように修理したよ!」
アマンドゥスの声に亮二は嬉しそうにするとストレージから大剣を取り出した。預けた時より明らかに豪華に装飾されている鞘を見て、不思議に思いながらも感謝の言葉を述べて受け取るとあまりの軽さに驚いた。
「これは儂の大剣か? 半分くらいの重さしか無いように感じるんだが?」
「ああ。軽く感じるのはミスリルを混ぜ込んだからだよ。鍔の部分に魔石が並べられてるでしょ? それは身体向上の魔法が埋め込んであって、アマンドゥス騎士団長の身体に流れている魔力に反応して発動するようにしてあるんだよ。慣れるまでは大変だと思うから素振りをして感覚を掴んでくれる?」
「ミスリルが混ぜ込んである? 魔石が使われている?」
亮二の軽い説明にアマンドゥスは修理からは、かけ離れている内容に唖然としながら呟いていた。
「そうだよ。全体の比率で言ったらミスリル8で鉄は2かな?」
大剣の8割がミスリルになったとの説明に、アマンドゥスの頭には使われたミスリルの量と金貨に換算した費用が一瞬で弾き出されていた。
「リョージ伯爵? ミ、ミスリルを8割ですと? そ、その、それ程にミスリルを使われると儂には支払える能力が…… 「大丈夫! 俺からのプレゼントだから気にしないで。で! これからが本番なんだけど、ちょっと持って構えてくれる?」」
戸惑っているアマンドゥスの台詞にかぶせるように亮二は伝えると、有無を言わせずに大剣を抜剣するように伝えた。
「剣を抜いて構えろと? 『所有者であるアマンドゥス= レフラー様と認識しました。これからもよろしくお願いします。マスター』なっ! け、剣が喋った!」
「で、その剣だけど。所有者は5名までは登録が出来るよ。だけど俺とツッコミ神のマルコだけは…… 痛ぃ!」
「そこで、俺の名前を出すな! それに俺はツッコミ神じゃねえ! 人を勝手に神様にしてんじゃねぇぞ!」
亮二の説明を隣で大人しく聞いていたマルコだったが、登録者説明の時に自分の名前が出た瞬間にアイテムボックスからミスリルのハリセンを取り出すと全力で亮二に叩きこむのだった。
亮二が修理との名でおこなった魔改造によって蘇った大剣は、アマンドゥスの名とともに歴史書にも載るような活躍をし、歴代の騎士団長が装備する剣として受け継がれていくのだった。
自重しないで色々やると楽しいですね。