283話 帝国への援軍準備4 -ハーロルト公爵領に到着しましたね-
アラちゃん騎士団を引き連れて出陣します!
帝国内での反乱に対して諸侯連合を組んで援軍を出す件については、マルセル王より反乱を起こした第2王子を悪と断定し、第1王子と第3王子を救うための正義の戦いであるとの布告が出されていた。
布告には皇帝の不予についても第2王子が関与してるような書かれ方をしており、亮二がアラちゃん騎士団を中心とした編成でハーロルト公爵領に向けて出立すると、立ち寄った町や村で第2王子を討伐するドリュグルの英雄を迎えるために沿道に人々が溢れかえっていた。それ以外にも志願兵の希望や食料の提供案内などが個別で多数に亮二の元に集まっており、その対応に追われ行軍スピードが上がらない状態になっていた。
「どうすんだよ。この状態。改善するために文官も連れてきた方が良かったな」
「そうですね。ですが、民衆の気持ちは分かります。ドリュグルの英雄が初めて出征するんですよ! 今度はどんな活躍をするのか楽しみにしているのだと思いますよ。なので志願兵や食料の提供が各地で行われるのでしょう。文官も呼ばれるのでしたら最低でも10名以上は呼んでくださいよ」
亮二とアラちゃんが文官を呼ぶ事を前提に話をしていると、次の街へ到着予定連絡を入れに行った兵士より、町長から志願兵の応募と食料の提供があるとの報告を受けた。亮二は軽くため息を吐きながら食料については受け入れ体制を整えるように指示を行い、志願兵については今回の作戦では数よりも質を重視しているために健康な者については食料運搬役として雇うが、それ以外は丁重に断るようにと指示を出した。
一旦、ウチノ領に戻った亮二が文官達を引き連れて食料提供対応を全権委任し、なんとか行軍スピードの遅れは解消したが、亮二達がハーロルト公爵領に到着したのは予定より2日遅れた1週間後となるのだった。
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「リョージ伯爵は大変だったようだな」
「遅くなって申し訳ありません。アンデルス王子」
亮二に声を掛けてきたのは、今回のサンドストレム王国諸侯連合総司令官となるアンデルスだった。亮二は丁寧に謝罪しながらも、今回初めて顔を合わせるアンデルスをまじまじと見ていた。
「まだ、到着していない者も居るので問題はないから気にしなくてもよい。それよりも食料の提供が多いと聞いているので感謝している。さすがはドリュグルの英雄の名声だな」
「只今、文官達に食料や人員の調整を任せておりますので、それがまとまり次第報告書を提出させて頂きます」
軽いやり取りの間中、亮二があまりにも顔を見続けている事に居心地が悪くなったアンデルスが気まずそうに話を変えてきた。
「将来の弟よ。それほど私の顔に興味があるのだろうか? 私としては貴公に見続けられると落ち着かなくてな。そちらの気は無いので勘弁して欲しい」
「こっちもないですよ! 今までお会いした事がないからマジマジと見ていた事は謝りますが、俺もそっちの気は無いですからね! マルコみたいに男女関係なくツッコむような…… 痛ぃ!」
「なんで、そこで俺の名前を出してくるんだよ! 俺もそっちの気はないわ! ナターシャと子供達以外に興味なんて持たないんだよ! 第一、アンデルス王子に対してなんて口の聞き方をしてるんだ!」
周りに居る者達、特にハーロルトにヘルマン、テオバルトなどは、王族に対する亮二の口の聞き方に対してツッコんだマルコに「今更なにを言ってるんだ」と言わんばかりの表情を向けるのだった。
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「では、食料についての護衛は私の部隊に任せてください」
「ドリュグルの英雄が率いる部隊が、補給部隊の護衛など臆病者の役目では世間も納得しないのではないのか? 貴族たる者は前線で突撃をするのが華だというのに、リョージ伯爵ともあろう者が補給の護衛な…… 痛ぃ! がはっ!」
亮二から補給部隊の護衛に付くとの提案に、会議に参加していた1人の貴族が小馬鹿にするように話をしようとするのを、亮二はストレージから銀のハリセンを取り出して3割程度の力で振り下ろした後に顎を打ち上げた。
油断していた所に銀のハリセンを振り下ろされて体勢を崩した状態で顎を打ち上げられた貴族は脳震盪を起こしたようで、崩れ落ちるように倒れこむと小刻みに震えながら白目を剥いて気絶するのだった。
「なに言ってんだよ! 補給を疎かにしたら兵士の士気も上がらないだろうが! 俺が帝国の人間だったら、遠征して補給線が伸びた所で補給部隊を強襲して食料を焼きつくして、水は泥状態にして飲めないようにするわ! そうされたらどうするんだよ! 遠い異国の地で戦いに赴いた兵士達! 明日死ぬかもしれない緊迫した状況! 唯一の楽しみは食事だけ! その食事が食べられないとなったら、俺だったら味方を焼きつくすね! それくらい食料は大事だって…… 痛ぃ! なにすんだよ! マルコ!」
「分かったから、とりあえずは落ち着け。大体、お前の事を小馬鹿にした貴族は、足元で白目剥いているだろ! 第一、なにをそこまで追い詰められてるんだよ!」
気絶している貴族に気付いていないように拳を振りかざしながら全身を使って補給の大事さと言うより、食事の大切さを力説する亮二に、マルコは呆れながらハリセンを使って軽く叩くと落ち着かせた。アンデルス王子は一連の騒動を眺めていたが、特になにも感想を言わずに一区切り付いた事を確認すると会議の続きを始めるのだった。
この話で部数が300になりました!
亮二くんの「ノリと勢い」に付き合って下さって感謝感謝です。
活動報告に感謝の小話を載せます。勢いで書いたので、キャラブレについてはご容赦下さい。
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