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異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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26話 試練の洞窟広間の攻防3 -崩壊は突然ですね-

チームプレーは本当に大事です

 出口を2箇所に変更してから仕切り直しの戦闘が開始して30分が経過していた。ローテーションは問題なく稼働出来ており、怪我を負って中央部にやって来た駐屯軍兵士にカレナリエンを主とした回復魔法部隊の活躍ですぐに全快すると、先ほどの悲壮感は全くなく回復した兵士達は闘志を漲らせて戦線に復帰していた。


 - それにしても、この「ミスリルの腕輪」は凄いわね。全体回復魔法はいつもの倍は唱えているし、個人への回復魔法も数えられないくらい唱えているのに、さっき頭に響いたのは「残り42」だもんね。今まで唱えて来た魔法と同じ数の回復魔法をもう一回できるって事だもんね。他の人達はリョージさんから貰ったマナポーションを2回以上は飲んでるのに -


 亮二の単身突撃で中央を封鎖して出口を2つにした事で魔物が出てくるのを最初と比較すると少なく出来ており、また中央部に回復部隊を配置することで怪我人が出ても、ゆっくりと休憩しながら回復が受けられるため戦線復帰する時間も早くなり継続して戦い続ける事が出来るので士気の低下も防げていた。やはり中央部で休憩しながら敵の攻撃を気にすること無く回復魔法を受けられるのは心理的にも安心出来るようである。


「あと、100切ったよ」


 亮二から脳天気とも取れる掛け声に「気が抜けるじゃねえか!もっと張り切った声出せよ!」とマルコからツッコミが入り、周りの駐屯軍からも「そうだ!そうだ!」と苦笑混じりの掛け声が上がっていた。


「この調子でいけば無事に乗り切れそうですね。カレナリエンさんの魔力は大丈夫ですか?」


「ええ、この腕輪のお陰で全く問題有りません。私自身の魔力は少しも使ってませんから」


「その腕輪に封じ込められていた魔力だけで、あれだけの回復魔法を?それは凄いですね。彼は一体何者なんです?イオルス神の神具と言われている“ミスリルの腕輪”を簡単に貸した上に、属性付与が出来て剣技は私やマルコさんを超えてる可能性が有りますよね」


 部隊長から質問を受けたカレナリエンだが、部隊長を満足させる回答は1つも持っていなかった。


「それについては、私も分からないんですよね。異国の子爵と本人が言っているくらいで。まだ彼に会って1週間も経ってないんですよ」


「彼のお陰で戦況が圧倒的なのは間違いないので、私としては彼が何者であろうと問題ないんですけどね。カレナリエンさんも早目に唾を付けとかないと誰かに持ってかれますよ。この戦いが終われば彼は一躍有名人ですからね」


 不意を付いた部隊長のからかい気味の言葉に若干顔を赤くすると「知りません!」とそっぽを向くのだった。


 □◇□◇□◇


 - あと80体くらいか。油断しないように皆には多めに報告してみたけど士気も落ちてないから関係無かったみたいだな。この部隊はかなり士気も高いし、この調子で行けばあと少しで殲滅できそうだな。それにしても何でここまで数を減らされているのに逃げないんだ?指揮官がいないとそんなもんか? -


 亮二は一旦後衛に下がって休憩がてら水を飲みながら検索モードで残りの数を表示させていた。駐屯軍やマルコ、カレナリエン達には残りの敵が100と報告していたが、亮二自身は正確な数字を把握しているためメンバーの中で一番油断(・・・・)をしていたかもしれなかった。


「ん?なんで1体だけ、中央部分の閉じた出口付近に居るんだ?」


 亮二が呟いた瞬間に正面のバリケードが轟音を響かせて倒壊した。


「なっ!」


 誰の叫び声かは分からなかったが、突然の倒壊に混乱しながらも左右の出口から溢れてくる魔物の対応を問題なく行えているのは、流石に常日頃から訓練を積んでいる駐屯軍だからこそだろう。


「あ、あれは牛人!」


 倒壊したバリケードから顔を覗かせているのはかなり大柄な魔物だった。牛の頭に斧を担いだ筋肉質な上半身は隠すこと無く力強さを誇示しているようにも見える。牛人は自分を追い抜かして先に行こうとした豚人を見つけると斧を振りかざして両断した。敵味方関係無いように暴れだした牛人に対処しようと駐屯軍の兵士の1人が死角から剣で斬りかかったが、ほとんど傷をつけることが出来ずに逆に左拳を肩に受けてもんどり打って吹っ飛ばされていた。


「魔物の対応をしている小隊はそのまま戦闘を継続!後衛として待機している2小隊は牛人を半円状に囲め!」


 部隊長の指示の下、半円状に包囲した駐屯軍に対して牛人は煩わしそうに斧を振りかざして上段から打ち下ろした。大きな動きで隙だらけに見えた2名ほどが側面と背後から斬り掛かろうとしたが、牛人は右手を大きく振り払うように動かして2人を殴り飛ばした。牛人の攻撃は致命傷にはならなかったが、1人は右腕が折れ曲がっており、もう1人は体勢が悪く地面に激突した際に頭部を強打して気絶していた。追い打ちをかけようとした牛人だが、自分に対して横から大きく振るわれてきた剣を斧で受け止めると思った以上の衝撃が有り斧を構えなおして体勢を整えた。


「俺が相手をする!俺なら属性付与が出来るから十分に戦える!部隊長は包囲を解いて左右の応援及び倒壊した正面のバリケードから出てくる魔物の対応をするように指示を頼む!」


「分かった!密集したら逆に邪魔になりそうだから任せる!」


 部隊長は亮二の叫びに頷くと包囲を解くように指示を出して配置し直すのであった。


◇□◇□◇□


 - あれってどう見てもミノタウロスだよね?みんな「牛人」って言ってるけど、ちょっとかっこ悪くない?それに牛人って!まんまじゃん!見たまんまじゃん!それにしても敵味方関係なしで攻撃してるよな。あの馬鹿力が乗った斧で攻撃されたらやばいよな。さっきの人も拳だったから気絶で済んでるけど、斧で攻撃だったらさっきの豚人の様に真っ二つだよね -


 回復部隊に回収されて治療を受けている男を目の隅で確認しながら牛人の意識をさらに自分に向けさせるために【火】の属性をミスリルの剣に纏わせて斬りかかった。斬りかかられた牛人は亮二の予想に反して素早く飛び退ると斧を握り返して上段から大きく振り下ろした。斧の大きさから受け止める事はせずにサイドステップで躱すとその勢いのまま横に胴を薙ぐように切り返した。牛人は亮二の技量を認めたかのように軽く引いて腰を落とすと亮二と自分との間合いを確認しだした。その様子に亮二は一騎打ちに持ち込めた事に安堵するのだった。

牛の頭なら手には斧です

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