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278話 エレナ姫とのデート5 -戦いに決着が付きましたね-

とりあえずロジオンは瞬殺しました

「知らない天井だな」


「なっ! なんでお前がその台詞を知っている! くそっ! 俺とした事がその台詞を忘れていたとは!」


 気を失っていたロジオンが意識を取り戻して見た事の無い天井に対して呟くと、横に居た亮二が大きな声で叫んだ。突然大声で叫ばれたロジオンが驚きながら目線を声の主に向けると、悔しさを顔全体に貼りつかせた亮二がこちらを見ており、近くには亮二がエレナと呼んでいた女性も一緒に居た。驚愕の表情のままでブツブツと呟いている亮二の横で、エレナから亮二の屋敷の客室である事を伝えられたロジオンは盛大なため息を吐いた。


「そうか、俺はアッサリと負けたようだな。なんで俺を運んでくれたんだ?」


「ああ。エレナに感謝しろよ。善戦したお前に対しての褒美と、ガムート帝国のロジオン=ザイツェフ殿下を路上で寝かせておく事は外交上も出来ないだろ?」


 亮二の言葉にロジオンがベットから飛び起きて戦闘態勢を取りながら逃げ出そうとした。その様子を眺めていた亮二は小さく「ライトニングニードル4連」と呟くと威力を弱めたライトニングニードルをロジオンの両足に撃ち放った。


「な、なにしやがる!」


「それはこっちの台詞だ。いきなり戦闘態勢で逃げ出そうとしやがって。別に暗殺したりしないから安心しろ。するつもりだったら、さっきの戦闘の時にやってる」


 突然逃げ出そうとして亮二から魔法攻撃を受けて悶絶しているロジオンに、呆れ顔になりながらツッコミを入れた。


「素性を隠しているつもりだろうが、王族の動向なんて筒抜けだと思っとけよ。それに、こっちには優秀な諜報機関があるからな。なあ、クロ」


「当然。私達が調べれば拳撃王の素性なんて丸裸」


 亮二が振り返りながら問い掛けると、エレナの背後からクロが現れた。クロは亮二にいつもより少し厚めの報告書を手渡すと、亮二の横に座りながらアイテムボックスからお菓子を取り出して食べ始めた。


「クロ。お菓子を食べるなら椅子に座って食べなさい」


「リョージ様の護衛と婚約者を兼ねてる私はお菓子を食べていても椅子に座るなんて油断はない。さっきも2人がデートしている時に私一人で拳撃王の見張りしてた。拳撃王クラスなら私一人で倒せる。だから安心して恋人止まりのエレナは休憩したら良い。今度は私の番」


 エレナの注意に床に座ったまま、珍しく饒舌に持論を述べながらお菓子を食べ始めたクロを苦笑しながら見ていた亮二だったが、痛みが引いて不貞腐れたような顔になっているロジオンに視線を移すと説明を始めるのだった。


 ◇□◇□◇□


「そこに居るのがエレナ=サンドストレムだと? 俺の情報だと今はウチノ伯爵領に赴任中で髪の色も違うようだが?」


「ああ。髪については色を変えただけだぞ」


 正体を看破されたロジオンが情報源であるエレナを胡散臭げに眺めたのを見て、亮二はエレナに近付くと髪の色を元に戻した。髪の色を元に戻されたエレナはロジオンに向かって王族に対する挨拶をしながら自己紹介を行った。


「初めまして。ロジオン=ザイツェフ殿下。私はサンドストレム王国第三王女のエレナ=サンドストレムと申します。今は、特別監査官としてウチノ伯爵領に赴任中です。今日はリョージ様とデートをするために王都にやって来ました。デートの邪魔をされたのでガムート帝国に宣戦布告するかで悩んでいるところなんです」


「私はガムート帝国第三皇子ロジオン=ザイツェフだ。私はサンドストレム王国への極秘親善大使としてやって来た。帝国と王国との変わらない良好な関係を期待している。だからデートを邪魔した事は本気で謝るから宣戦布告なんてするなよ。本当に悪かったって」


 エレナの目が座っている黒い笑顔の挨拶に、若干引き攣った顔をしながらロジオンは謝罪した。エレナからの怒りオーラで場の空気が最悪に傾きかけた瞬間にロジオンはある事に気付くとエレナに質問した。


「なあ。その指輪って婚約指輪か? 噂ではリョージ伯爵と婚約するって聞いたが?」


「ええ! そうなんです。婚約の発表はまだ先なんですが、まずは恋人として認めてもらいました。この指輪は恋人の証としてリョージ様にもらったんですよ。さっき買ってきたばっかりなんです。さすがですねロジオン殿下。この指輪に気付かれるなんて。帝国とは良好な関係を続けられそうですわ」


 先ほどの怒りのオーラが一瞬で消え去り、満面の笑みを浮かべて指輪をロジオンに見せながら購入した時の話や、購入中に亮二とどんな話をしたかや、似合うと褒めてもらった話などを延々とし始めたエレナに、軽く引きながらも宣戦布告は取り下げられた事が分かると苦笑して話を聞くロジオンだった。


 ◇□◇□◇□


「そういった事で、俺の事は商人って事にしておいてくれ」


「素性を隠す必要があるなら拳撃王だって叫んだ上に、あんな大暴れするなよ」


 ロジオンが頭を下げながら極秘でやって来た事を説明して、亮二達に理解を求めてきた。呆れながら亮二が突っ込むと頭を軽く掻きながら照れくさそうにロジオンが言い訳がましく説明を始めた。


「いや。強い奴が居るって聞いたら戦いたくなるだろ?」


「気持ちは分かるけどよ。部下の躾くらいちゃんとしろよ」


「あいつらは本当に勝手に付いて来ただけなんだよ。あれでも帝国軍人なんだぜ? 節度を持って行動しろっていったのに、王都で無理やり女性を連れ去るような暴挙に出るとはな。後でキッチリと片を付けるから許してくれ」


「いや。それ、お前が言うのか? 俺に戦いを挑んできたくせに?」


 ロジオンはエレナを無理やり連れ去ろうとした兵士に厳罰を与える事を約束した。亮二が兵士の件についてはロジオンに一任し、自分に対して戦いを挑んできた事に対して問い掛けると、ロジオンは窓の外を見ながら下手くそな口笛を吹き始めるのだった。

またベタな誤魔化しかたを!

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