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276話 エレナ姫とのデート3 -邪魔が入りましたね-

料理は実に美味しかったです。

「本当に美味しかったです。うちの料理長と変わらないくらいじゃないですかね? またリョージ様と一緒に来させてもらいますね」


「ああ。そうだな。また来ような。そのためにも仕事を頑張って空き時間を作らないと。店主! 料理美味しかったぞ。彼女も気に入ったみたいだから、また来させてもらうよ。美味しさに敬意を表して、これをプレゼントするから店に飾っといてくれ」


 半年ほど前までは屋台で料理を作りながら少しずつお金を貯めており10年かけて店を出すのが夢だった。そんな店主が亮二とエレナから料理を絶賛され、涙目になりながら2人の賛辞に感動していた。


「リョージ様から褒めてもらえるのが一番うれしいです!」


 店主は自分の幸運を振り返っていた。亮二が王都に来た時に偶然近くで店を開いており、売上勝負に参加して亮二から味の評価だけでなく出資までしてもらった。それだけでなく新しい料理の提供や店内レイアウトのアドバイスまでもらったりしており、オープン当初から人気店の仲間入りをしたのである。


「俺、もっと頑張ります! 本当に有難うございます! ちなみにこれって何ですか? 俺の作った料理ソックリなんですけど?」


「ああ。それは俺が認めた店に渡すアイテムの最新版だと思ってくれたらいいよ。今度、そのアイテムを新聞で宣伝する予定なんだよ」


 亮二から手渡されたアイテムは食品サンプルだった。少し暗い場所に置けば本物と見分けが付かないほどかなり精巧に作られており、店主は興奮した面持ちで自分の料理と瓜二つの食品サンプルを眺めていた。


「す、凄い! リョージ様から認めてもらったアイテムを玄関先に置くだけで明日から恐ろしいことになるぞ! しかも『美味しかったからプレゼント』と言ってもらって渡されたんだ! あのリョージ様のお墨付きだぞ! 新しい従業員を補充して食材の追加購入もしとかないと!」


 目の前で楽しそうに料理の話をしている人生の恩人と連れの美少女を眺めながら、店主は食品サンプルの効果を凄さをイメージしながら身震いを起こすのだった。


 店主の予想通り、店内に居た客達が店主と亮二とのやり取りを王都中で話をし、そこから始まった口コミと新聞報道で彼の店に予約客が殺到するのだった。


 ◇□◇□◇□


「本当に美味しかったですね。あの料理はリョージ様も一緒に考えられたと聞きましたが?」


「ああ。そうだよ。でも、俺はヒントを与えたくらいで、最後の仕上げまで持って行ったのは店主自身の力だからね。それに食品サンプルを渡したのも……「おい。俺の舎弟が世話になったようだな」」


 店を出て楽しげに食事の余韻に浸りながら歩き始めた2人の前に、大勢の男達が包囲するかのように立ち塞がった。会話を中断された亮二は不満そうに男達の方に視線を向けると、ひときわ体格のいい男が前に出た話し始めた。


「お前が俺の舎弟を可愛がった奴か。どう見ても完全に子供だな。こんな子供にやられたのか?」


「本当です! こいつは卑怯にも突然殴りかかってきたんですよ!」


 体格の良い男が振り返りながら胡散臭げに問い掛けると、先ほど亮二が殴り倒した大柄な男が亮二を睨みながら主張した。


「ああ。さっきのテンプレやられキャラか。自分では太刀打ちできないから、親分を連れてきたって話か。これまたテンプレな展開だな」


「意味の分からない事を言ってんじゃねえ! この方にかかればお前なんて一撃だぞ! この方はガムート帝国の拳撃王との二つ名を持たれるロジオン=ザイツェフ様なんだからな」


 やられキャラと言われた男が亮二の言葉に怒り顔で怒鳴ってきた。あまりにもテンプレな台詞に亮二は残念そうな顔で肩をすたが、後半の話には嬉しそうにしながらロジオンに話しかけた。


「拳撃王さん。そっちのやられキャラが、俺の恋人に絡んできたから撃退したのに大勢で襲いかかるの?」


「ん? こいつらは勝手に付いて来ただけだぞ。強い奴が居るって聞いたからやってきたのに子供とはな。まったく無駄足だったぜ。俺はドリュグルの英雄と戦いに来たんだよ!」


 突然のドリュグルの英雄との戦いを希望すると叫んだロジオンの発言に集まっていた王国民達が微妙な顔になって亮二に視線を集中させた。当の亮二は満面の笑みを浮かべながらロジオンに少し近付くと再び話しかけた。


「なあ。ドリュグルの英雄と戦いたいんだよな?」


「ああ。牛人3体相手に無傷で勝ったって噂だろ。それに迷宮攻略でも名を上げているって話だ。冒険者ランクもBだと聞いている。俺も帝国で名を鳴らした者として、一度手合わせをしたくなったんだよ。確か、ドリュグルの英雄は身長2m近くで、笑顔で3m近い大剣を振りかざしながら魔法を息を吐くように連発して、一度敵対した相手は灰になるか土下座するまで追い込むらしいと聞いてる」


「誰だよ! そんな奴が居るかよ! 帝国でもドリュグルの英雄が独り歩きをしてるじゃねえか!」


 ロジオンが語る亮二像に思いっきり突っ込むと周りからも失笑が起こった。


「なんだ? ひょっとして、お前はドリュグルの英雄と知り合いか? 紹介してくれたら金をやるぞ」


「悪いが金は俺の方が持ってると思うぞ。それに金ならいらないよ。それでロジオンと戦うのはここでいいのか?」


 ロジオンは大爆笑しながら亮二の肩を大きく叩いた。


「はっはっは! 面白ことを言う坊主だな。まるでお前がドリュグルの英雄みたいじゃないか」


「ああ。俺がドリュグルの英雄のリョージ=ウチノ伯爵だ。わざわざ帝国からやられに来た拳撃王ロジオンの負け台詞を聞いておこうか?」


 亮二がロジオンに向けて軽く威圧を放つと、拳撃王とまで言われているロジオンは亮二が本物である事を確認すると、嬉しそうに目を細めながら臨戦態勢に入っていくのだった。

恋人と散策中に絡まれるのはテンプレPart2です。

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