254話 久しぶりの学院訪問 -ライナルトに会いに行きますね-
ドリュアが物凄くキレてます。
「なんなん! 自分ほんまなんなん! ちょっと自分の方がイケてるからって自慢なん? 自慢なんやろ! はいはい。うちはリョージみたいに物凄い事は出来ませんわ! 凄いですねぇ! リョージの旦那は」
「そ、そんなに怒る事ないじゃん。ごめんって。ちょっとした子供のお茶目じゃないかよ。ドリュアのドヤ顔が面白かったから、ちょっとだけビックリさせてやろうと思っただけじゃん…… ごめん! 本当にごめんなさい! もうしません」
ドリュアの剣幕に、亮二もやり過ぎた感があったようで両手を合わせて「本当にゴメン!」と謝り続けた。ドリュアの顔は全身真っ赤じゃないのかと思うくらいに赤面しており、亮二がどれだけ謝っても「しらん! ゆるさへん!」としか答えず、そっぽを向いて亮二の顔をまともに見ようとしないのだった。さすがの亮二もこれはマズイと感じたのか、慌ててストレージから"超美味しい巨大な水筒”を取り出すとドリュアに手渡しながら謝り始めた。
「じゃあお詫びの印に、この超美味しい巨大な水筒をプレゼントするから許してよ。ドラゴンの魔石も2つ付けるから! これは、さっき渡した巨大な水筒よりも美味しい水が大量に飲めるよ! 迷われている貴方に朗報です! 今、受け取ってくれたらさらにドラゴンの魔石をもう1個プレゼント!」
「しらん! リョージはもっと反省したらええねん! そやけど超美味しい巨大な水筒はもらっとく! ここにドラゴンの魔石を入れこんだらいいんやろ? こんなんでうちの機嫌が直るって思ったら大間違…… えっ? なにこれ? さっきの水も美味しかったけど、この水は比べ物にならへんやん! さっき飲んだ水が魔道具が作り出せる最高の水だったとしたら、こっちの水は神が作りし水と言ってもいいんとちゃうの?」
超美味しい巨大な水筒の作り出した水の美味しさにドリュアはさっきまで怒っていたことを忘れたかのように、超美味しい巨大な水筒の作り方や水筒に入れる魔石について亮二に色々と質問をするのだった。
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「なるほどなぁ。ここの魔法陣を使って水の美味しさを引き出してるんやね。これを設計したのって誰なん? リョージが考えたん?」
「いや。基本設計は俺の可愛い下ぼ…… ん! 友達のライナルトが設計したんだよ」
ドリュアの質問に亮二が答えた。「今、下僕って言おうとしたやろ?」とドリュアは苦笑しながら、水筒に書かれている魔法陣を見て感心したように頷きながらライナルトと会えないかと亮二に相談してきた。
「ライナルトと会いたい?別に今からでも会えるぞ。転移魔法陣を使って学院に行くか。クロ、ライラ。ちょっと、ドリュアと一緒にライナルトに会ってくるから、研究所か喫茶店に行って適当にスイーツを買ってきてよ。お金は渡しておくから」
「分かった。リョージ様の代わりに頑張って買ってくる」
クロが握り拳を作って決意表明するとライラも同じく両手で拳を作って「任せて」と真剣な顔で言ってきた。2人の力の入りように微笑みを浮かべながら金貨袋を手渡して「頼んだよ」と伝えると、ドリュアを連れて転移魔法陣に乗って学院へと向かうのだった。
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「よっ! ライナルト久しぶり! 元気にしてた? ちょっと、話を聞きたい人が居るから連れて来たんだけ…… って、取り込み中だった?」
「「ええ。ちょっとだけ取り込み中です。せっかく久しぶりの再会ですがリョージ君は少し座って待っててもらえます?」」
亮二がライナルトの主任教授室に入ると修羅場状態だった。青い顔をしているライナルトを挟んでシャルロッタとロサが向き合っていた。亮二が入ってきた事に気付いたライナルトが救いの神を見付けたかのような顔をしていたが、シャルロッタとロサはひと睨みしてライナルトの行動を押さえつけると、亮二に対して異口同音に椅子に座って待つようにと告げてくるのだった。
「なんで、そんな長い台詞を異口同音に言えるんや? 2人は仲が良いんか?」
「「初めましてですよね? 挨拶は後でさせていただきますが、私達は仲はいいですよ。今はちょっとだけ意見が合わなくて話し合おうとしている最中ですが! リョージ君と一緒にそちらの椅子で座って待っていて下さい」」
ドリュアの呟きにシャルロッタとロサが再び異口同音に答えた。あまりの息の合いっぷりにドリュアはコクコクと頷くと亮二と一緒に椅子に座って小さな声で話し掛けてきた。
「なんなん? あの2人は? あっちで青い顔してる兄ちゃんの恋人なん?」
「シャルロッタ学院長はそうなんだけど、ロサもそうだったんだ」
亮二がストレージから飲み物とお菓子を取り出してくつろぎ始めると、ドリュアも超美味しい巨大な水筒を取り出して水を飲み始めた。目の前で行われている修羅場を楽しそうに眺めていたが、ドリュアが水筒に直接口をつけて飲んでいるのを見て何かを思い付くと土属性魔法でコップを作って表面に魔法陣を書き込み始めた。
「なにしてるん? その魔法陣って見た事ないやつやな」
「ああ、ちょっと暇だったからドリュアのコップでも作ろうかと思ってね。この魔方陣は氷属性魔法を組み込んでいて、このコップに水を注いだら冷たい水が飲めるって感じだよ。それだけじゃなくて、この後に周りを覆って空気層を作る事で保冷効果も抜群になるんだよ。もちろん覆う方の内側にも魔法陣を書く……「軍曹。それは覆う側の内側にも魔法陣を書くと魔石の消費量が増えるのでは?」」
ドリュアの質問に亮二が魔法陣の説明をしていると背後から声が掛かった。2人がそちらに顔を向けるとメモを片手に目をキラキラさせたライナルトの姿があるのだった。
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「むしろ逆だよ。両方から氷属性魔法が発動されるわけだから冷えるのも早くなる。それに空気層が有って周りの冷気が逃げないから少ない魔力でも保冷効果が高くなる」
「なるほど。興味深いですね。では逆に火属性魔法を使って温かいコップを作る事も可能ですよね。待ってっください!もし両方書き込んで切り替え出来るように出来ればもっと凄いんじゃないですか? どう思われます軍曹? 他にもコップだけではなくて大きな容器にすれば……「「私達の事を無視してリョージ君と魔道具開発議論ですか? そうなんですね。貴方の過労を心配して私達は言い争いをしているのに? 大体、リョージ君はなにをしにここに来たんですか?主任の仕事を増やすためだったら容赦しませんよ?」」」
ライナルトと亮二が保冷保温コップについて議論していると怒りのオーラを纏わせたシャルロッタとロサが背後に立って威圧を掛けてきた。あまりの2人の形相にライナルトは顔面蒼白に亮二も小さく震えながら全身全霊で謝罪するのだった。
2人の迫力が半端ないです……。