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閑話 バレンタインが無かった世界の話

ちょっと、本編からは外れています。時間軸も登場人物も適当です。本来なら閑話に出てくるキャラクターが数名いたはずですが、諸事情(作者の力不足)により出てきませんでした…。


ごめんなさい。エレナ姫やシーヴ達…。

「“ばれんたいん”ですか?」


「そう!俺の国では2月14日に女性から好きな男性に、チョコレートや花とかを送る行事があったんだよ。折角だから、王都や俺の領地で流行らそうと思ってね」


 メルタの問い掛けに亮二は机の上に置いたサンプルを見ながら机に肘を置いて考え込んでいた。久しぶりに王都の屋敷に戻って来ていた。亮二は転生前では貰う経験が少なかったバレンタインを流行させ、今度こそは大量にチョコを貰ってリア充を満喫したいのだった。


「“ちょこれいと”ってなんですか?“ばれんたいん”と関係のあるアイテムですか?」


「そうだよね。こっちの世界にはチョコレートが無いんだよね。俺も現物を持ってないんだけど…」


 亮二が机の上に置いたサンプルを手に取って眺めながらカレナリエンが質問してきた。亮二は何気にストレージの中を確認しながら呟いていたが、ふと何かに気付いたようで眉をしかめながら考え込み始めた。あまりに長く考えこんでいる亮二にカレナリエンとメルタが心配そうな顔をしていたが、その気配に気付いた亮二がストレージから何かを取り出すと机の上に置いた。


「あの、リョージ様。これは?」


「ああ、これがチョコレートだよ。美味しいから食べてみてよ。あぁ!懐かしいなあ。もう食べなくなって1年になるのか」


 亮二がストレージから取り出したチョコレートを手に取ると口に入れて嬉しそうな顔になった。そんな様子を眺めていたカレナリエンとメルタも、チョコレートを恐る恐るな感じで食べて溶けるような甘みと、ほのかな苦味を口の中に感じて感嘆の声を上げた。


「な、なんですか!この“ちょこれいと”の美味しさは。苦味の中に甘みが広がる感覚。この色合はステロの種に似ていますね」


「えぇ!同じ種があるの?どこに!どれくらい?いつ取れるの?価格は?すぐに用意できる?」


 チョコレートを食べながら感想を何気に呟いたカレナリエンの言葉に亮二が喰い付いた。あまりの勢いに若干引き気味になりながらも。ステロの種は使い道が無いために捨てている事。実は一般的な家庭料理で使われており、1回の料理で10粒は種を廃棄している事。収穫するまでの日数は30日程で成長速度の早い植物である事を亮二に伝えた。


「よし!メルタはステロの種を30個銅貨1枚でギルドに依頼。持ち込み個数の制限は無しで。但し、俺が依頼を出している事は表に出さないように。他で買い占めが行われても困るからね。それと、カレナリエンは“サンドストレム王国すいーつ普及研究所”のソフィアに連絡して、屋敷に来てもらってくれ」


 亮二の依頼にカレナリエンはソフィアを呼ぶために研究所に向かった。その場に留まって考え事をしているメルタに軽く首を傾げながら「なにか疑問点でも有るの?」と質問すると、慌てて首を振って理由の説明を始めた。


「いえ。特にリョージ様の依頼に疑問点はありません。リョージ様の名前を出さないで、王都とドリュグルと北部の街にある冒険者ギルドに依頼を出しておきます。それで、お願いがあるのですが、今回の依頼は期限は無制限で必要ランクは【H】とさせて頂いても構いませんか?」


 亮二は「登録したての冒険者の救済処置って事だね」とメルタの提案について了承すると、依頼についての詳細は任せると伝えるのだった。


 ◇□◇□◇□


「それにしても集まったね。依頼を出して1週間も経ってないけど」


 呆れた口調で倉庫を見上げる亮二にメルタが苦笑をしながら理由の説明を始めた。


「そうですね。初日は10件ほどだったのですが、私が【H】ランクと設定したので一般市民の方から『種を集めるだけなら私達でも構わないか?』と連絡があったそうです。ギルドとしても特に問題ないとの事で了承をしたのですが、翌日には200件、次の日には400件と増えていきまして、今日の時点では1,000件を超えています」


「まあ、別にこっちとしては問題ないんだけど、駆け出し冒険者の救済処置としてはどうなの?」


 あまりの結果に対して、流石の亮二も呆れ気味に呟くとギルドの職員からも『依頼の7割は冒険者ですので問題ない』と連絡が来ているとメルタから報告があるのだった。亮二としてはステロの種が集まれば問題ないために引き続きギルドに依頼を出すように伝えて、袋から種を取り出した。


「まだ、実が付いてるね。ちょっと綺麗にしてから使いたいな」


 そう呟きながら、実が若干残ったままのステロの種を【土】属性魔法でボールを創りだすと【水】属性魔法で綺麗にして【風】属性魔法で乾燥させた。その後は焙煎、分離、粉砕などの工程を経てカカオバターになると砂糖やミルクを入れてかき混ぜるなどを行った。通常の工程ならかなりの時間が掛かるが、亮二は時間の掛かる工程を魔法ですっ飛ばしてチョコレートを完成させていくのだった。


 ◇□◇□◇□


「リョージ様。この“ちょこれいと”を使った“すいーつ”はどうでしょうか?あと“ちょこれいと”の残りが少なくなってきましたので新しい“ちょこれいと”を用意して頂いてもよろしいでしょうか?」


「さすがソフィア!俺からのアドバイスだけで、ここまでの物を仕上げてくるなんて。俺の持っている“すいーつ伯爵”の称号を譲ってもいいくらいだよ。それに完璧なお約束もしてくれてるしね!」


 ソフィアが机の上に並べてるスイーツを眺めながら亮二は最大限の賞賛の言葉を贈った。ソフィアが考案したスイーツはチョコクッキーにスタンダードな板チョコ。チョコレートケーキに生チョコタルトなど多岐にわたっていた。


「リョージ様からご提供頂いた“ちょこれいと”は素敵ですね!ここまで、想像力をかき立てられる素材に出会ったのは初めてです!」


 お約束として、ほっぺにチョコレートが付いたままのソフィアに笑いかけると、亮二は指先で頬についたチョコレートを拭い取って食べた。頬にチョコレートが付いたまま亮二に話し掛けた事と、頬に付いたチョコレートを拭って食べた行動に顔を真っ赤にして口の中で何かを呟いた後に「失礼します!」と全力ダッシュで部屋を出ていこうとして、扉に頭をぶつけて「あぅぅ」と手で押さえながら涙目で亮二を見上げると部屋から出て行くのだった。


「よし!ソフィアのお陰でバレンタインの目処が立ったな。後は量産体制を整えて14日の3日前から王都、ドリュグル、俺の領地と同時販売していくか」


 亮二はステロの種がカカオを同じように使える事をイオルスに感謝しながらソフィアの試作品を片っ端から食べていくのだった。その後、亮二が提案したバレンタインは王都やドリュグなどの女性に受け入れられ、2年後にはセーフィリア全体にバレンタインが定着していき、本命、義理と大量のチョコレートをもらった亮二はホクホクした顔になるのだった。貰えない男性の怨嗟の声も同時に引受けながら…。


 ◇□◇□◇□


「ちなみに、俺のストレージに入っていたチョコってイオルスからだったのかな?ん?そう言えばフォルダ名が『イオルス神からのハッピーバレンタイン』になってるんだったな。この大量のチョコはどうすれば良いんだろうか?」


「あの、ベッティさん達が『もてない俺達に救いの手を!リョージ伯爵には制裁を!』と屋敷の外で叫んでいますが?」


「分かった。カレナリエンはベッティだけにチョコレートを配ってきてくれ。それで全て静かになる」


「鬼ですね。リョージ様は」

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