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250話 迷宮探索10 -最後の敵を倒しますね-

魔法が使えないのは新鮮です。

「久し振りだな。剣だけで戦うのは 」


 亮二は“ミスリルの剣”を軽く握りながら嬉しそうな顔をすると、右後ろから襲ってきた蔓を切り落とした。完全に死角になっている場所からの攻撃が防がれるどころか切り落とされた花の魔物は、亮二を最大の脅威と受け取り、ウッドゴーレム少女への攻撃を止めて警戒しながら亮二に話しかけてきた。


「なぜ邪魔する。お前関係ない500年用意した。やっと一つになれる」


「一つになれる?」


 花の魔物がたどたどしく話す内容に、亮二が首を傾げながらウッドゴーレム少女を見ると、嫌そうな顔で盛大に首と手を振って拒絶していた。


「ほんま堪忍して!500年前に振ったやろ!『お前みたいなのと一つなんてありえへん!』って言ったセリフを覚えてへんの?」


「えっ?ひょっとし 痴話喧嘩?」


 亮二の呟きに「誰が痴話喧嘩やねん!しばくで!」とウッドゴーレム少女が背後から亮二の頭を叩くのだった。そんな2人の仲睦まじい様子を眺めていた花の魔物は身体を震わせて全身から蔓を生えさせると、蔓の先端と殺意を亮二に向けてきた。


「お前邪魔した。お前倒せば一つになれる」


「そうやで!うちの恋人を倒したら考えてもええよ」


 ウッドゴーレム少女の言葉を聞いた花の魔物は全力で攻撃を仕掛けてきた。上下左右から襲ってくる蔓の攻撃をバックステップでかわしながら「誰が恋人だよ!ウッドゴーレムを恋人にする趣味はねぇ!」と叫びながら、亮二は“ミスリルの剣”で片っ端から切り落とし始めた。


「むっ。お前強い。俺も本気出す」


「おぅ!ちょっとは本気で掛かって来ないと瞬殺するぞ!」


「リョージ!私の事をそこまで想ってくれてるなんて!」


「五月蝿い!黙って見てろ!」


 悲劇のヒロインを気取って、どこからか取り出したハンカチを噛み締めながら臭い演技をしているウッドゴーレム少女に若干うんざりしながら、しばらくは蔓の攻撃を交わしたり、切り落としたりしていた亮二だったが、花の魔物からの攻撃が衰えない事にゲンナリし始めていた。


「だぁ!際限がない!こうなったら必殺の二刀流だ!」


 亮二はストレージは問題なく動いている事を確認して“コージモの剣”を取り出すと、2つの剣を鞭のように使いながら押され気味だった攻撃を押し返し始めるのだった。


 ◇□◇□◇□


「おぉ。なんや、ほんまにリョージは強いんやな」


「もちろんです。リョージ様の強さが分かっていたから『うちの恋人を倒したら考えてもええよ』と仰ったのではないのですか?えぇっと…」


 花の魔物と互角以上の戦いを繰り広げている亮二の強さに呆然とした表情でウッドゴーレム少女が呟くと、それを聞いたメルタが話し掛けてきた。自らの名前を伝えていなかった事に気付いたウッドゴーレム少女は「うちの名前はドリュアや」と告げると、苦笑しながらメルタの質問に答えた。


「ああやって言っといたら、リョージを倒そうと躍起になるやろ?その間に、あんたらから水を分けてもらって復活したらアイツを一気に倒してやろうと思ってたんや」


「それなら気にしなくても大丈夫ですね。リョージ様に任せておけば魔物を倒して下さいますから。今回は魔法が使えない状態ですので時間が掛かられているようですが」


 メルタの言葉に亮二が花の魔物を倒す事を微塵も疑っていない様子に、ドリュアは不思議そうな顔をしながら質問を返した。


「えらいリョージの事を信用しているんやな?まだ、ちっこいガキンチョやんか?」


「ドリュアさんの目にはリョージ様が子供に見えるかもしれませんね。でも、1年近く一緒に居た私達はリョージ様の実力を『これでもか!』と言わんばかりに聞かされていますからね。実際にリョージ様が全力で戦われているのを見るのは実は初めてなんですけどね」


 メルタが軽く微笑みながら話す内容を聞きながら、ドリュアは亮二の戦い振りを眺めつつ考えていた。“深き迷宮”のダンジョンマスターとして意識が無いまま契約に縛られ、500年が経って目を覚ました時には意識朦朧で身体も衰弱しており、近くにいたウッドゴーレムに水を取りに行かせる命令しか出せなかった。


「水の力を感じたから、最後の力を振り絞って魔物を向かわせたら全滅するし、様子を見に行ったら面白い子が居るし、完全に力を取り戻してるアイツ相手に押し気味やし、ほんまにリョージってのは何者(なにもん)なんや?」


 メルタとの会話中には伝えなかったが、ドリュアとしてはダンジョンマスターとしての契約が弱まっている、今の状態はチャンスであり、亮二が戦っている間に逃げ出すつもりだった。だが、亮二の桁外れの強さに思わず興味が出てしまい、そのまま戦いを見続けるのだった。


 ◇□◇□◇□


「あっ!あかん!そろそろ魔道具の効果時間が消えるで!」


「えっ?なら魔法を使えるようになるリョージ様にとっては有利になりますね」


 ドリュアの焦った声にカレナリエンが明るい顔で応えると「リョージ様!魔道具の効果が切れるとドリュアさんが仰ってますよ」と亮二に伝えた。二刀流で戦いを有利に運んでいた亮二は花の魔物を全力で蹴り飛ばして間合いを強引に空けると勢い良くカレナリエンの方を見て問い掛けた。


「ドリュアって誰?」


「うちのことや」


「えぇっ!木の魔物で“木の子”じゃないの?」


「誰が“木の子”やねん!うちをその辺の菌糸類と一緒にしんといてくれるか!これでも由緒正しき木の王族種やで!」


 亮二のとぼけた発言に思わず全力で突っ込んだドリュアに、亮二は親指を立てて「やれば出来るじゃん!突っ込み四天王の1人に任命だ!」と笑いながら任命すると、真面目な顔になって魔道具の効果時間が切れるタイミングを確認するのだった。


「よし!じゃあ、魔道具の効果が切れた瞬間にとどめを刺してこよう」


「ちょっ!人の話は最後まで聞きや!魔道具の効果が切れたら間違いなくアイツから腐食の息がくるんやで!能力全開のうちやったらともかく、人間のリョージなんてひとたまりもないんやで!」


 とどめを刺すと簡単に言ってのけた亮二にドリュアが焦った表情で訴えかけてきた。必死になって腐敗の息の恐ろしさを力説するドリュアに対して「まあ見てろよ」と亮二は軽く笑いながら片目を瞑るとカウントダウンを始めるのだった。


「…5、4、3、2、1、ゼロ!おぉ!確かに魔法が使えるようになった」


「なに感心してるん!早くとどめを刺さんと!」


 “ミスリルの剣”に【雷】属性を二重で付与させて光っている剣を眺めて感心している亮二に対して、焦った表情でドリュアが叫んだ。ドリュアの叫ぶタイミングに合わせるかのように花の魔物から腐食の息が吐き出され、紫色の雲に見える息が亮二を包み込んだ。花の魔物からは短期間で宿敵と認定した亮二を倒した歓喜の声が、ドリュアからは「あかんかったやん!」と悲鳴が、カレナリエン達も流石に青ざめた顔で武器を構えて攻撃しようとし始めた。


「それは残念ながら残像だぞ!」


 亮二の声が天井付近から聞こえてきた。一同が一斉に声の方を見上げると天井に上下逆で立っている亮二がいた。亮二は軽く天井を蹴って一気に花の魔物との間合いを詰めて“ミスリルの剣”を振り下ろして両断すると、返す刀で更に横に両断してとどめを刺すのだった。

魔法が使えると楽に倒せるのがよく分かりました。

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