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248話 迷宮探索8 -話が分かりにくいですね-

小さなウッドゴーレムが「なんでやねん!」と地団駄を踏んでます。

「なんでやねん!どう考えてもおかしいやろ!なんで自分ら、ラスボス部屋の前で漫才してるん!ウドの大木を部屋の中央に置いて、『ふははははぁ!それは偽物だ!どこを見ている!』って言うはずやったうちの作戦はどうしてくれるん!」


 高さ30cmの小さなウッドゴーレムが地団駄を踏みながら亮二達に抗議をしてきた。亮二以外の一同は、あまりの出来事に硬直していたが、ウッドゴーレムからの抗議で我に返ると武器を構えて、いつでも攻撃できる態勢になった。


「やめとけ。このウッドゴーレムを攻撃しても討伐した事にはならないぞ」


「ほぅ。そこのあんちゃんは気付いてるみたいやな。どこから気付いてたん?」


 亮二は攻撃態勢に入った一同に対して片手を上げて止めると、小さなウッドゴーレムは遠隔で操作されている事を伝えた。それを聞いたカレナリエンは不思議そうな顔で小さなウッドゴーレムを眺めながら突っつきながら亮二に質問した。


「でも、リョージ様。このウッドゴーレムですが、物凄く精密に動いていますよ?ここまで精密に動かす命令をするのは難しいのでは?」


「いや、そうでも無いんじゃないかな。このウッドゴーレムの見た目に騙されてるけど、思ったより動いてないよ。口が達者なのは、どこかに居る本体が喋ってるだけだからね。動く原理は、そこに有るウドの大木と呼ばれていたウッドゴーレムと同じだろうね」


 カレナリエンが小さなウッドゴーレムを突っつきながら質問したのに同調するように、亮二も小突きながら自分の推測を披露した。2人から小突かれていた小さなウッドゴーレムは最初は大人しく、されるがままになっていたが、だんだんと力が強くなってくると「やめんか!酔うわ!」と腕を振り回して止めるのだった。


 ◇□◇□◇□


「で、うちの質問にはいつ答えてくれるん?」


「部屋に入ってウドの大木と言っていたウッドゴーレムが、手に持っていたはずの桶が無い事に違和感を感じたんだよ。それに小さなウッドゴーレムの動きはウドの大木から俺達を離そうとしているみたいだったからな。桶の水が重要な物なのは明白なのに、それ自体が無いって異常だろ?だから、ウドの大木の下にある階段を降りたら全てが分かるんじゃないかな?」


 小さなウッドゴーレムの質問に亮二が軽く笑って答えると、ため息を吐きながら小さなウッドゴーレムは両手を上げるジェスチャーをして降参である事を伝えてきた。


「降参や。兄ちゃんが誰か知らんけど、そこまでの洞察力を見せられたらどうしようもないわ。確かに、この身体は別の場所から操ってるし小さいから細かな動きが出来るねん。それでどうする?そこのウドの大木を壊して下に降りて、うちを討伐するん?」


「悩ましいところなんだけど。君ってダンジョンマスターだよね?討伐したらどうなるの?」


 小さなウッドゴーレムの言葉に亮二が答えながら質問すると「そうやで。うちが“深き迷宮”のダンジョンマスターや」との答えが返ってきた。メルタが目の前の小さなウッドゴーレムがダンジョンマスターである事に驚愕しながらも、ダンジョンマスターの情報に付いて説明を始めた。


「それなら、私が知っている範囲でお話しますね。迷宮の最深部の部屋に核となる魔石が嵌め込まれていて、それを守るのがダンジョンマスターです。ダンジョンマスターを倒して魔石を取り出すと、ダンジョン自体の機能も停止して最終的には廃墟となり、崩れ去っていきます」


「おぉ。そこの特定箇所が大きな姉ちゃんは分かってるな!そう、この下が本当の最下層で“深き迷宮”の最深部になるんやで。うちはその部屋で魔石を守ってるんや」


 メルタの情報に小さなウッドゴーレムは腕を組んで頷きながら肯定すると、本体の自分は最深部の部屋に居ることを認めるのだった。


 ◇□◇□◇□


「じゃあ、なんでここにうちが居るか気になるやろ?それは、うちが…「まさか『それは、うちがウッドゴーレムやからやで。木になるって感じやろ!』とか言わないよな?今まで、おもしろい事をしてくれようとしてたんだから」」


 小さなウッドゴーレムが嬉しそうに話している途中で台詞を奪って話をした亮二に対して、口をパクパクさせながら小さなウッドゴーレムは徐々に怒りだした。


「なあ!自分は絶対にやったらアカン事をしたんやで!人がボケようとするのを途中で取るなんて、芸人としてやったらアカンやろ!」


「なんでやねん!これくらいのボケ封じで困るなや!そんなんで世界を取れる芸人になれへんで!」


 小さなウッドゴーレムからの抗議に亮二は全力で関西弁で答えると、衝撃が走ったかのようによろめきながら膝と手を付いてうなだれた。


「そうやな。今のはうちが悪かったわ。芸人が素人にボケを封じられたからって動揺してどうなるねん。世界を取るために頑張らんと」


「そうだよ。その意気だよ!俺も金銭的な援助も含めて応援するから芸人として世界を獲ろうぜ!」


「ほんまか!これからは兄ちゃんの事を旦那はんと呼ばせて…「「痛ぃ!」」」


 亮二と小さなウッドゴーレムが手を取り合って芸人として世界を獲る話で盛り上がっていると、2人に対してカレナリエンとメルタから軽く攻撃が入った。亮二に対しては“銀のハリセン”が、小さなウッドゴーレムにはショートソードが10cmほど食い込んでいた。


「おぉ…。ちょ、自分これはアカンで。うちじゃなかったら死んでるで?」


「カレナリエンも“銀のハリセン”は本気で痛いから全力では止めようね」


 亮二と小さなウッドゴーレムの弱々しい抗議の声に「「だったら、話を進めて下さい」」と一刀両断にされるのだった。


 ◇□◇□◇□


「ちなみに、桶は最深部の部屋に持って行ったのか?」


「そうやで。久しぶりに目覚めたら枯れかけてて、水を汲みにウドの大木に行かせたら、なにを間違えたのか魔物の血を持って帰ってくるから難儀したんやで。こっちも衰弱しているから明確な命令も出せへんかったし。ホンマにさっきやで。ここまで意識をハッキリさせて喋れるようになったんは」


 最深部にある部屋に案内されながら亮二が質問すると、小さなウッドゴーレムは半分に斬られた頭を擦りながら答えた。小さなウッドゴーレムは、それ以外にも【水】属性を感じた為に10層の大部屋に魔物とウッドゴーレムを向かわせた事などの話をした。亮二達が大部屋の戦闘では危険だった事を話したが「うちも死に物狂いやったから勘弁してな」とさらりと言われてしまうのだった。


「他にも8層で鞭のような攻撃をしてきたのは?」


「はっ?なんの話?うちはウッドゴーレムに関係する魔物やから鞭なんて使わへんよ?それって、ひょっとし…」


 亮二の質問に首を傾げながら小さなウッドゴーレムが答えようとした瞬間に、地響きが最深部の部屋から聞こえてくるのだった。

ラスボスと仲良くなったと思ったらもう一波乱ありそうです。

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