244話 迷宮探索4 -仕切り直しますね-
カレナリエン達から情報収集します。
カレナリエン達が収集した情報を元に亮二達は大部屋への突入を検討をおこなっていた。亮二がインタフェースの索敵モードで確認すると、大部屋の中央と亮二達が居る場所とは反対側の通路に掛けて魔物は集中しており、数にすると200匹近くが大部屋辺りに集中していた。
「カレナリエン達が倒した魔物ってどうしたの?」
「えっ?倒した魔物ですか?最初は後で邪魔になるのと回収する為に横に動かしていたんですが、魔物が大量発生してからは倒したままで放置していましたが、それがどうかしたのですか?」
唐突な亮二の質問にカレナリエンが首を傾げながら返事をした。疑問を感じた亮二が少し考え込み、なにかに気付いたように顔を上げると、その場にいる全員の視線が自分に集中している事に気付いた。
「あぁ、ごめん。カレナリエン達から魔物を大量に倒したと聞いたけどさ、あの大部屋には魔物の死体が全くないなと思って。どこに行ったんだろうね?」
亮二の言葉に一同の視線が大部屋がある方向に向いた。メルタの魔法で焦げ付いた地面は見えるが、確かに魔物の死体は転がっておらず不自然な風景となっていた。
「俺の索敵だと大部屋の中央と奥の通路に魔物が大量に居るんだけど、一部分の魔物がゆっくりとしたペースで11層に降りられる階段に向かっているようなんだよ。死んだ魔物が11層にいる正体不明の魔物の元に行こうと思ってるのかな?」
「死霊使いが居るとか?冗談ですけどね」
亮二の冗談交じりの言葉にベッティが「死霊使いが居る?」と冗談めかして呟いた。その言葉に亮二とライラを除いた一同は、恐ろしい話を聞いたかのような顔になり、何人かはベッティを非難するような視線で睨みつけた。死霊使いは死んだ魔物や倒した相手も操って仲間を無限に増やしていく大昔に居た魔物であり、子供の頃に「悪い事をすると死霊使いに連れて行かれるよ!」と大人から聞かされていたからである。
「おい!ベッティ!怖い事を言うなよ!死霊使いなんて大昔に居た魔物なんだから、こんな“深き迷宮”に居るわけないじゃないか!」
「そ、そうだよな。すまん。俺とした事が昔に居た魔物の話をするなんてな。絶対に居るわけないのにな。もう、この話は止めておこう」
「そ、そうだぞ。そんな話をするなら俺は帰るぞ!」
ベッティの言葉に仲間の一人が不自然なほど大きな声で非難すると、ベッティも震える声で死霊使いについての話を打ち切るのだった。唯一、死霊使いについての知識が全く無い亮二と死霊使いの話を聞かされた事のないライラは特に怖がることもなく周りの会話を聞いていた。
「まあ、テンプレと言うよりはどう考えても見事なフラグを立ててくれたって感じだけどな」
亮二の呟きは誰にも聞かれなかったようで、一同は周りを警戒しながら今後の方針を話し合うのだった。
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「じゃあ、大部屋に突入したら俺が広範囲魔法で殲滅するって感じで!」
「却下です!」
亮二の提案を聞いた瞬間にメルタが迅速に却下した。あまりの早い回答に呆気に取られた亮二の顔を珍しそうに眺めていたカレナリエンだったが、メルタに対して理由を尋ねた。
「却下するのはいいんだけど、一応理由を聞いても良い?」
「リョージ様に一瞬で殲滅されると、次に同じような事になった時に、必要な戦力の把握が出来なくなるでしょ。それに、これから上層階の管理を任せる予定のベッティさん達の戦力も確認しておきたいの。他には冒険者としての自信が木っ端微塵に砕け散るから、一瞬で殲滅して欲しくないってのもあります」
カレナリエンに対して亮二が無双する事を否定した理由を説明しながら、最後は悪戯っぽい笑顔を浮かべながら亮二に視線を向けた。メルタのおどけた感じの最後の内容に苦笑を浮かべた亮二は「分かったよ」と肩をすくめながら改善案を出すのだった。
「じゃあ、大部屋に突入したら俺が右翼を受け持つから、正面をベッティ達が対応して、左翼をカレナリエン達に任せるって感じなら良いかな?おい!これで、お前達の将来が決まると思って戦えよ!生き残るのも評価だからな。無理はするなよ!」
「リョージ様が1人で右翼を受け持たれるのは若干違うような気もしますが、今いる戦力なら仕方ないですよね。ベッティさん達には正面を担当してもらうんですから、しっかりとお願いしますね。右翼と左翼から敵が来る事はないと思って、持てる力を全て使い果たすくらいに頑張って下さいね!」
妥協した表情の亮二からの提案にカレナリエンが頷きながらベッティ達に満面の笑顔を向けた。亮二からは将来を、カレナリエン達からは笑顔を餌に気合を入れられたベッティ達は自分達が到達したこともない10層に居る事を忘れて「よし!俺達の力を見せ付けてやるぞ!」と気合を入れるのだった。
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「突入!」
「「おう!」」
亮二の掛け声にカレナリエンとベッティが反応し、残りのメンバーも鬨の声を上げながら大部屋に突入した。亮二達が大部屋に突入したのを確認した魔物たちは一斉に動き出して迎撃の体勢に入った。先ほどのカレナリエン達との戦闘のように半包囲網を築こうとした魔物たちだったが、右翼に対しての攻撃が激しすぎて包囲網を築くどころでは無くなっていた。
「おらぁ!」
亮二の気合の入った一撃は正面に居た魔物を一刀両断した。“ミスリルの剣”に【雷】属性魔法を付与させると正面の敵を斬り倒し、魔物の注意が自分に向いた瞬間に援護のために正面と左翼の後方に“ファイアボール”を2発ずつ撃ち込んだ。
「リョージ様!作戦無視をしないでください!」
カレナリエンの言葉に亮二は「ごめんね!」と謝ると“ミスリルの剣”を縦横無尽に振るいながら敵を斬り伏せていき、剣が届かない範囲の敵には“ライトニングボール”や“ウォーターボール”を撃ちまくって魔物の数を確実に減らして行くのだった。
これから超無双を始めましょうかね!