242話 迷宮探索2 -ちょっと、戦いますね-
探索は順調です。
亮二とベッティ達の探索は順調に進んでおり4層まで到着していた。亮二は一旦休憩を入れる事を告げるて、【土】属性魔法で椅子とテーブルを作り出してスープの入った鍋を中央に置くと、スープを碗に注いでベッティ達に手渡し始めた。碗を受け取ったままの状態で硬直しているベッティ達に亮二は不思議そうな顔をしながら話し掛けた。
「おい。どうした?食べないのか?パンが欲しいなら出すぞ?肉も必要か?あっ!飲み物もいるよな」
亮二がストレージから白パンに串焼きになっている肉や果実水などを取り出してテーブルに置き始めると同時にベッティ達が我に返ったように動き始めた。
「いやいやいや!なんで、こんなダンジョンの真ん中で優雅にランチをしようとしてるんですか!第一、魔物に襲われたらどうするんですか!」
「ん?周りに魔物は居ないぞ。俺が索敵してる間に早く食べろよ。冷えたら不味くなるじゃないかよ。スープは熱い方が美味いんだぞ!おかわりも自由だから、さっさと食べろ!」
亮二の声にベッティ達は慌てたように椅子に座ると用意されたスープやパン、肉を食べ始め、スープの温かさや肉の旨さに驚愕した表情を浮かべながらも奪い合うように食べ始めるのだった。
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ベッティ達は索敵をしながら、先ほどの亮二の戦闘を語り合っていた。
「それにしても、リョージ伯爵の食に対する執念は恐ろしいよな。ダンジョンで美味い飯が食べられるのは思わなかったよ」
「ああ、まさか食事の邪魔をされたからって襲ってきた魔物を一瞬で倒すとは思わなかったよな」
ベッティ達の食事が終わり交代で食事をしていた亮二が突然立ち上がると、ストレージから“ミスリルの杖”を取り出して歩き出した。
「どうされたんですか?伯爵?」
「せっかく人が食事をしているのに邪魔が入った。倒すから回収しといてくれ」
亮二の言葉が終わると同時に通路の奥から巨人が現れた。天井ギリギリの3m弱の高さが有る巨人で、その身体は蔓や枝のようなもので構成されていた。
「ウッドゴーレム?」
「ウッドゴーレムかどうかは後で調べるから、取り敢えずは俺の食事を邪魔するな!」
ベッティ達が4層でウッドゴーレムが出てきた事に驚愕している中、亮二は“ミスリルの杖”を構えると軽く前方に向けて振った。
「「「「「えぇ!」」」」」
ベッティ達の声がダンジョンに響き渡った。亮二が軽く杖を振るとウッドゴーレムの頭上に雨が降るように光が降り注いだのである。10秒ほどで光の雨が止んだ後には元ウッドゴーレムであろう木材が散らばっていた。亮二は倒したウッドゴーレムを見もせずにインタフェースを起動して索敵モードで周りに敵が居ないことを確認すると、「うん。周りに敵は居ないな」と呟いて席に戻ると食事を再開しながら感想を述べ始めた。
「やっぱり、スープは熱々の方がいいよな。閃いた!鍋の底に【火】属性を付与した魔石を入れて、温める鍋なんてどうだろう?温めるだけだから小さな魔石でも対応できるはずだしな。これもライナルトに押し付け…調査してもらおう!」
食事をしながら呟いている亮二の声を聞いたベッティ達は「間違いなく『押し付ける』って言ったよな?」と目線で話し合いながら、会った事もない有名なライナルト主任教授に同情を感じつつ、食事が終わった亮二に声を掛けた。
「伯爵。ウッドゴーレムが4層に現れるなんて、やっぱり異常事態ですよ。そろそろ帰りませんか?今までは7層辺りで現れると言われていたウッドゴーレムが4層で出たりしてますし、俺達は4層までしか来た事がないので、この先は案内できませんよ?」
「ベッティ達には5層までの管理を今後任せる予定だから、次の階層までは把握してくれないと困るから頑張ってくれ。それにしても本来居ないはずのウッドゴーレムが居るって事は、全体的に魔物が強くなってるって事か?それとも正体不明の魔物の影響か?俺達より先に進んでるカレナリエン達は大丈夫かな?」
ベッティ達が不安げな報告をするのを聞いた亮二は、これからは管理人として雇うことを伝えてやる気を出せると、下の階層に進むために食事を兼ねた休憩を終了するのだった。
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「よし!順調だね。それにしてもリョージ様が作ったアイテムボックスって凄いよね」
「確かにそうね。ダンジョンに潜ってから倒した魔物が全て入ってるのよね」
戦闘が終わり周辺を警戒していたカレナリエンの呟きを聞いたメルタが、同意するように頷きながら返事をしてきた。
「どうする?正体不明の魔物に遭遇するまで進む?」
「当然!リョージ様に私達の成長を見てもらいましょうよ!」
現在、カレナリエン達が居るのは第7層であり、正体不明の魔物が現れたと言われる階層の直前にまで到達していた。2人がこれからの進路を検討していると、ライラとクロが苦情を入れてきた。
「メルタさんの弓攻撃が強力すぎて、私達の活躍する場面が殆ど無いんだけど?」
「メルタさん。ちょっとやり過ぎ。私達の存在意義が危うくなる」
これまでの戦闘はメルタの弓攻撃でほぼ終了しており、残りもカレナリエンが魔法で倒していた。当然ながら剣を振るうチャンスは無く、戦うことが出来ない前衛のライラとクロの欲求不満がここに来て爆発したようであった。
「ごめんなさい。メルタの攻撃が有効だから頼ってしまっていたようね。それにメルタはリョージ様から貰ったアイテムボックスにマナポーションを入れていたから魔力切れも起らなかったのよ」
「でも、そろそろマナポーションが無くなりそうだから、これからは抑え気味に行くから許してね」
メルタとカレナリエンの謝罪に、ライラとクロは自分達も言い過ぎた事を謝った。次の戦闘から前衛の攻撃を中心に行う事を決めた一同が先に進もうとすると、前方から敵がやって来る気配に気付いた。
「よし!じゃあ、さっそくライラとクロは攻撃をお願い。メルタは様子を見ながら通常の弓攻撃!私も魔力を温存するから弓攻撃に切り替えるね」
カレナリエンの号令に一同は「「「はい!」」」と返事をすると魔物に向かって攻撃を始めるのだった。
早くカレナリエン達に追いつかないとね。