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240話 “深き迷宮”の入り口で -そろそろ潜りますね-

やっぱり正座になりました。

「「ごめんなさい」」


「2人とも反省してくださいね。ダンジョンがある周辺で大きな音を立てるのは、魔物がダンジョンから出てくる可能性があるため禁止されています。リョージ様が貴族で領主じゃなかったら捕縛されても文句は言えませんよ?確認せずに投げたカレナリエンも悪いから同罪です」


 正座中の亮二とカレナリエンに対してメルタが説教をしていた。“火炎玉”がぶつかった岩は木っ端微塵となり大小の石となって周辺に散らばっており、見物に来た冒険者達に“火炎玉”の破壊力を全力で見せつけていた。


「知らなかったんだよ。ダンジョンの周辺で大きな音を立てるのが禁止されてるなんて。カレナリエンも教えてくれたら良いのに!」


「私も知らなかったのよ。リョージ様が作った“火炎玉”の威力があんなに凄いなんて。リョージ様も教えて下さいよ!岩をも砕く破壊力だって!」


 責任のなすりつけ合いを始めた亮二とカレナリエンはヒートアップしながら、最後はつかみ合いになりそうな勢いになっていた。


「なんだよ!ちょっと可愛いくて、髪と瞳が綺麗で、性格が良くて、面倒見が良くて、一緒にいると幸せな気持ちになって、俺の婚約者になってくれたからって、なに言ってもいいわけじゃないからな!」


「なんですか!ちょっと、かっこ良くて、頼もしくて、剣の扱いが上手くて、魔法も使えて、魔道具やすいーつの開発も出来て、お金持ちで、伯爵で、一緒にいると頼もしくて安心できて、私を婚約者にしてくれたからって、なにしてもいいわけじゃないんですよ!」


 最初は亮二とカレナリエンの言い合いを楽しそうに聞いていた冒険者達だったが、最後の方は惚気話になっており「なんだこれ?」と呆れたような白けたような空気が漂い始め、全員の視線がメルタに集中するのだった。


 ◇□◇□◇□


「2人とも!取り敢えず、イチャつくのは後にしてくれますか?人前でイチャつくなんて羨まし…じゃなかった。ちょっと、リョージ様に質問なんですが、“火炎玉”の威力が凄すぎるからダンジョンの中では使えませんよね?最悪、壁が崩れて生き埋めになる可能性がありませんか?」


 メルタの言葉に暫く考えていた亮二は、ハッとした顔になって周りを見た後にポンと擬音が付きそうな感じで手を打つと「ほんとだ!」と叫んだ。亮二の様子を見たメルタは呆れたように軽くため息を吐きながら話し掛けた。


「気付いてなかったんですか?」


「威力を上げる事と投げる人間の安全性しか考えてなかったよ」


 亮二とメルタのやり取りを聞いていた冒険者達は心の中で「「「「今頃、気付いたのかよ!」」」」と一斉にツッコミを入れるのだった。2人の正座は30分ほどで終了し、集まった冒険者達に亮二とカレナリエンが謝罪して一連の騒動は終了した。


「いやぁ。それにしても失敗、失敗。火力をもう少しだけ下げないと駄目だね。やっぱり【火】属性魔法に【風】属性魔法と【雷】属性魔法を掛け合わせたのが失敗の要因だったんだろうな」


「まだ、諦めてなかったんですね」


 亮二が“火炎玉”をストレージから取り出して、ブツブツと呟きながら微調整をおこなっていた。そんな様子を眺めていたカレナリエンは「もう、私は投げませんからね!」と言いながらダンジョンに潜るための最終調整をしていた。


 “深き迷宮”の入り口に設置されている建物はダンジョンに潜る前に、突入時間と人数に代表者の名前を記入する場所になっており、それ以外にも道具屋や鍛冶屋、救護室も兼ねていた。


 また、冒険者ギルドの出張所にもなっており、クエストを貼り出す掲示板もあるが、現在は正体不明の魔物が8層辺りにいるために「現在、ダンジョンへのアタック制限中!」と張り紙があるのみだった。


「ここの責任者は?」


「はい、今日の責任者は私になります。リョージ=ウチノ伯爵様ですよね?私は冒険者ギルド副ギルド長のオーベと申します。先程は素晴らしい正座を見せていただきました。今日はどのようなご予定で?やはり、正体不明の魔物の討伐ですか?」


 亮二が問い掛けた男性が責任者だったようで、正座騒動の感想と訪問目的を聞いてきた。亮二は“火炎玉”を使用した件の謝罪と、視察と攻略を兼ねてダンジョンに来たこと。噂になっている正体不明の魔物の調査することを伝えた。


「“火炎玉”ですか?あれはダンジョンの壁が崩れますので利用しないでくださいね。調査については、こちらとしても“ドルュグルの英雄”にして頂けると助かります。正体不明の魔物に有力なパーティーがやられてますので調査依頼を出せなくて困っていたんですよ」


「ああ。彼らなら療養所で話を聞いたよ。怪我が治ったら、ここの管理を依頼したいと思ってるんだけど大丈夫かな?」


 亮二の言葉にオーベは嬉しそうに「彼らはこの街を拠点に活動しているパーティーなので、喜ぶと思いますよ」と頷くのだった。


 ◇□◇□◇□


「じゃあ、早速潜ろうと思うんだけど、パーティー編成を…。ん?どうしたのカレナリエン。なにか意見でも?」


「リョージ様。人数も多いですし、二手に分かれませんか?リョージ様はベッティさんのパーティーに入ってもらって」


 亮二の出発前のパーティー編成を話そうとしたところ、カレナリエンから提案があった。10名いるので全員で行動するよりも分かれた方が効率も良いとのことだった。


「えっ?でも、それだと俺がむさ苦しい5人の面倒を見るの?」


「彼らは物理攻撃のみのパーティーですし、話を聞いたところ、8層までは潜ってないみたいです。リョージ様がいれば、より安全でしょ?それとも魔法を使えるのは私しかいませんが、か弱い女性を男性5人の中に放り込むのですか?」


 カレナリエンの言葉に亮二は「カレナリエンに手を出したら相手を消し炭にするけどね」と苦笑しながら提案を受け入れるのだった。

準備万端!ダンジョンアタック!

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