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238話 事前の情報収集2 -話を聞きに行きますね-

結局、冒険者ギルドでは情報は得られませんでした。

「すいませんでした!」


 正座状態の巨躯の男が亮二達に対して謝罪をしていた。亮二に一撃でやられた後は平謝りをしていたが、クロから「ちゃんと謝る」と言われた瞬間に、青筋を立て真っ赤な顔をしながら「ガキが一端の口を聞くな!」と怒鳴りつけて掴みかかろうとした。巨躯の男の伸ばしてきた手をクロは軽く掴むと、男の勢いを利用して捻り上げて取り押さえた。


「小さいからと侮った。人の事を馬鹿にし過ぎ」


「分かった!俺が悪かったから離しやがれ!」


 巨躯の男の叫びにクロが手を離すと飛び上がって一旦距離を取ったが、間合いを詰めて再びクロに掴みかかろうとした。「やっぱり」とため息を吐きながら構えを取ったクロとの間にライラが入ると、素早い動きで足払いをして転倒させた。さらに立とうとした巨躯の男に対して亮二が頭を踏みつけながら殺気を込めた威圧を放った。


「おい。さっき俺に対してした謝罪は嘘か?あんまりフザケてると流石の俺も怒るぞ」


 巨躯の男だけでなく、周りで見学していた冒険者達も亮二が放つ威圧を受けて硬直したように動かなくなるのだった。


 ◇□◇□◇□


「本当にすいませんでした。もう二度と逆らいません。許してください。お願いします。クロ姉御もライラ姉御にもカレナリエン姉御にもメルタ様にも絶対に逆らいませんので本気で許して下さい」


 1時間後の冒険者ギルドのテーブルに頭を擦り付けるようにしながら身体を震わせて謝罪を続けている巨躯の男がいた。男が謝罪を続けているのを当然だと言わんばかりの顔で頷いている者や、「あれだけ綺麗どころを揃えていたら絡みたくもなるよな」と呟きながら同情した顔をする者も少なからずいた。


「あの。私だけ『様』付なのはなぜでしょうか?」


 メルタの問い掛けに亮二は顔を背けながら即答を避けた。亮二から顔を背けられたメルタは周りを見たが、カレナリエンも同じように顔を背け、ライラは巨躯の男と同じように身体を震わせており、クロは亮二の背中に隠れてしまった。


「リョージ様?」


「うん。分かってる!メルタに逆らわないように、こいつをちゃんと教育するから!」


 メルタから訝しげな表情で再度見つめられた亮二は「ちゃんと教育する」と真剣な顔で答えながら、美人が真顔で間違っている点を一つ一つ指摘しながら説教をすると怖いものがあると改めて思う亮二であった。


 ◇□◇□◇□


「それで、カレナリエンは情報を仕入れられたの?」


「はい。ちゃんと療養している冒険者達の場所を押さえていますよ。今から行かれますか?」


 カレナリエンの言葉に頷いて席を立つと、ギルドから療養先に行こうとする亮二に巨躯の男から恐る恐るといった感じで問い掛けられた。


「あの。俺はどうすればいいんで?」


「そう言えば名前を聞いてなかったな。“暴れてるだけの牛”なんて二つ名じゃなくて本名を教えてくれよ」


「あの。“暴れてるだけの牛”じゃなくて、“暴れ猛牛”で…いや、なんでもないです。俺の名前はベッティと言います」


 亮二から間違った二つ名を呼ばれたベッティが訂正しようとしたが、亮二の目が「分かって言ってるんだよ」と力強く訴えかけているのを理解すると、諦めた表情で名前を名乗った。


「じゃあ、ベッティは“深き迷宮”へのアタックをする時に俺達の道案内を頼むわ。パーティーメンバーが居るなら一緒に連れて来ていいぞ」


「えっ?俺達も一緒に行っても良いんですか?」


 亮二は翌日の道案内を頼まれたベッティは嬉しそうな顔で「仲間に話してきます!」と答えると全力で仲間がいる場所に走っていくのだった。


 ◇□◇□◇□


「じゃあ、ベッティ君には明日の“深き迷宮”への入り口(・・・・)までの道案内をお願いするとして、俺達は怪我をした冒険者達から状況を聞きに行こうか」


「あの。ベッティさんを連れて“深き迷宮”に潜るのですか?」


 メルタの質問に亮二は嬉しそうに頷くと、ベッティ達のパーティーを鍛えて“深き迷宮”の管理人に育てる事。魔物の素材が豊富に取れるようなら伯爵領発展のために、商品開発を目的とした研究所を作る事。などの構想を話した。


「ベッティがどこまで潜ったのかは聞いてないけど。二つ名を持っているなら大丈夫でしょ。もし、危険な状況になっても俺が対応すればいい話だしね」


 亮二は軽い感じで言いながら療養所に向かった。ギルドから10分ほどで療養所に到着した一同が院長から冒険者の症状を聞いたところ、裂傷や噛傷などはなく骨折や打撲が多い事から鈍器のようなもので殴られた事が考えられるのと事だった。8階で遭遇した冒険者達に話を聞くと、歩いていたら突然襲いかかられたパーティーメンバーは反撃する事も相手を確認することも出来ずに混乱状態のまま逃げ出したとの事だった。


「鈍器のような物を使う魔物?カレナリエン。そういった魔物に心当たりはない?」


「そうですね。鈍器を使う魔物なんて心当たりが多過ぎてなんともいえませんね。やっぱり直接調べて見る必要があるんじゃないでしょうか?」


 亮二の問い掛けにカレナリエンが答えていると、怪我をしている冒険者が思い出したかのように話し始めた。


「そう言えば、俺が逃げる時にランタンを投げつけたら一瞬ひるんだな。こんな情報がなんの役に立つかは分からねえが」


「いや、細かい情報があれば【火】属性魔法を使える武器を前もって用意出来るからな。助かったよ。ここの治療費は情報提供料として俺が持たしてもらうよ」


 亮二は冒険者に感謝すると治療費として院長に金貨3枚を渡して宿屋に戻るのだった。


 ◇□◇□◇□


「よし!念の為に武器を作っておこう」


「どんな武器を作られるのですか?」


「今まで手に入れた魔石に【火】属性魔法を付与して剣に埋め込んだ柄頭を押し込むと刀身に炎が纏う感じで!投げたら爆発する魔石も捨てがたいよね!」


「確かに今回の火を怖がる魔物でしたら効果的だと思いますが、明日に潜るのに時間がないですよね?」


「大丈夫!1日有れば剣なら5本くらいは作れるし、爆発する魔石も10個は作れると思うから!」


「聞いた事も無い武器でも、作成時間の短さも含めて『リョージ様だから』で流してしまう自分が怖いです…」

ちゃちゃっと作って明日のダンジョンに向けて早く寝よう!

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