閑話 -正月の話をしますね-
明けましておめでとうございます!
ノリと勢いで書いている“異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている”を今年もよろしくお願いします!
元旦の掲載にギリギリ間に合いませんでした。
飲み慣れてないからと言って、お酒に負けては駄目ですよね…。
「明けましておめでとう!」
亮二からの言葉に年明けの挨拶をする習慣がない一同は戸惑いながらも返事を返した。カレナリエンやメルタ、クロ達は亮二に食堂に連れて来られると、机の上に並べられた見た事もない大量の料理に驚くのだった。
食堂には城代から文官の長なったのニコラスや、マチカタドウシンのリーダーとして北部を中心に警備をしているビトールや、領都や南部を見まわっているアライグマ騎士団の団長アラちゃんなどを始めとする亮二の家臣団が呼ばれていた。初めて会った者も多く挨拶をしながら、亮二の行動で色々と振り回されている者達としては、これから行われる内容が分からないだけに不安そうな顔をしていた。
「諸君!日頃の働きに感謝している!ここに用意した料理は俺の故郷で正月に振る舞われているおせち料理と雑煮になる。俺の国では年が明けて3日間は作っておいたおせち料理や雑煮を食べて、普段休むことが出来ない料理人に休んでもらうようにしている。それと俺は今日から、王都やストークマン辺境伯領に挨拶回りをするから必要最低限の人数を残して順番に休暇を与える。まずは領都に家族がいる者から5日間の休みを取ってくれ」
亮二から休暇を与えると聞かされた家臣団からは歓声が上がり、さらにニホン国で習慣となっているお年玉が手渡された。ぽち袋の中身を確認した一同は銀貨5枚が入っているのを確認すると大歓声を上げるのだった。
「ちなみに、俺の国では年始に1年の抱負を述べて気合を入れるって儀式があるんだけど?」
「そうなんですか?ちなみにリョージ様の抱負ってなんですか?」
お年玉を渡し終わり、それと休暇を与えられた事で満面の笑みを浮かべて料理を食べ始めたていた一同を眺めながら亮二が話しかけてきた。カレナリエンが代表して亮二の抱負を首を傾げながら聞くと「その言葉を待ってました」と言わんばかりの笑顔で亮二は抱負を述べ始めた。
「俺の今年の目標は伯爵領の経営健全化と生産力の向上だろ!それによって領民の生活水準を高める。あと、北部にあるダンジョンにもアタックしたいよね。それに調味料関係の開発をしたいし、領内で目玉となる特産品も見つけたいよね。他にも他領や他国にも行ってみたいな。それに…「ちょ、ちょっと!リョージ様!多すぎます!抱負が多すぎて覚えきれません!」」
怒涛のごとく言い始めた亮二の抱負を最初は頼もしそうに聞いていた一同だったが、だんだんと白熱していく亮二を慌てて止めるのだった。
「なんで止めるんだよ!あと30個位は細かく言いたかったのに!」
「分かりました!ちゃんと、記録に取りますから!ニコラス様、どなたかを記録係として任命して下さい」
「畏まりました。カレナリエン様。では、私が記録係としてリョージ様の抱負を全て記載させて頂きます」
亮二が口を尖らせて抱負を途中で止められた事に文句を言うと、カレナリエンが慌てて記録係を用意するようにニコラスに伝えた。ニコラスは自ら紙と筆記用具を持ちだして亮二の抱負を書き始めるのだった。
「よし!これで、今年の抱負も述べたから頑張っていかないとな。ニコラス、後はここにいる皆の抱負も書いてもらっていいか?今年の年末に抱負の内容と進捗具合や達成度で特別報酬を用意するから、しっかりと書いといてくれよな」
難しい内容を達成すればするほど、もらえる特別報酬が増えると亮二の言葉を聞いた一同は、少しでも報酬がもらえるような内容を考えて、決まった者からニコラスに告げに行く様子を確認した亮二は「後で確認するからな」と告げると、メルタやカレナリエン、クロに声を掛けて転移魔法陣で王都に向かって転移するのだった。
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「ただいま。王都の感じはどう?」
「おかえりなさいませ。リョージ様。王都は変わっておりますよ。王都から神都への街道整備が順調に進んでおり、街道整備に携わっている者達の羽振りがいいので贅沢品であるすいーつがよく売れているようですな」
転移魔法陣で王都に戻った亮二が留守を頼んでいる執事長に最近の王都の情勢を確認すると、王都が少しずつ変わっているとの報告を受けた。それ以外にも、貴族派と呼ばれていた一派が完全消滅に近いほど縮小しているとの報告があり、その原因としてはハーロルト公とマルセル王との蜜月関係や亮二とオルランド教皇との親密さ、貴族派の連続で発生した不祥事、学院における貴族派の勢力が一掃された事が原因であるとの事だった。また、エレナ姫と亮二との婚約間近との噂も王都ではお祭り騒ぎになるくらいで流れているとの事だった。
「まあ、選民思想の塊だった貴族派が大人しくなったら一般市民に使える予算が増えるから良いんじゃないかな?それにしてもエレナ姫との婚約間近ってなに?一般庶民の人達には知らない話だよね?」
「それは仕方ないですよ。ドリュグルの街でエレナの飼っている白雪を助けた話が広がってるんですよ。ご存知でした?それに、一緒にサンドストレム王国すいーつ普及研究所を立ち上げて!王家からぷりん名誉料理長あいす名誉料理長などの称号を与えられて!レーム伯爵領にエレナが特別監査官として赴任しますよね?今まで1か所に派遣された事がない姫が!エレナがですよ!リョージ様の元に派遣される!これだけ仲が良いのを見せ付けたら!誰でも!分かり!ます!よね!」
「ちょ、ちょっと?カレナさん?語尾が力強すぎますが怒ってます?それにメルタとクロの目線も怖いんだけど?」
亮二がエレナとの婚約話について呟くと、カレナリエンが最初は優しい口調で徐々に満面の笑顔になりながら、徐々に大きな声を出しながら、徐々に亮二に近付いてきた。一緒にメルタとクロも近付いて来ており、部屋の隅に追い詰められた亮二が助けを求めるように執事長を見ると、理解したように恭しく頭を下げて追加の情報を伝えてきた。
「リョージ様の奥様候補といえばサンドストレム王国すいーつ普及研究所2代目所長のソフィア様やドリュグルの街と駐屯地でリョージ様の屋敷を切り盛りしているシーヴ様も王都では噂になっておりますね」
「執事長!」
新たな燃料を追加された事に亮二は目を剥いて執事長を睨んだが「早目に対応されたほうがよろしいかと」と涼しい顔で頭を下げられるのだった。
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「はっはっは。それは災難だったな。リョージよ」
「災難なんてもんじゃないですよ。エレナ姫の件はマルセル王にも責任があるんですからね」
「なんじゃと!儂のエレナが気に入らんと言うのか!」
亮二の話を聞いたマルセル王は愉快そうに笑ったが、自分にも責任があると言われると血相を変えて亮二に食って掛かろうとしたが、「王がエレナ姫に決闘で負けるからですよ」と言われると、悔しそうにしながら目線を逸らして亮二が用意した料理を食べに行くのだった。
「それにしても、リョージ伯爵からこのような素晴らしい物を貰ってもよろしかったのでしょうか?私は生涯の忠誠をリョージ伯爵に捧げました。これ以上のものを捧げる事が出来な…「いや!ヘルマン様!初めての子にも出来るポーション作成キットをお年賀で渡しただけですから!俺になにも捧げないで下さい!」」
「ミスリルのイオルス神像を貰って人生をリョージ殿に捧げたのに、レプリカの神具装備一式まで貰ったら信徒達の人生も一緒に捧げて亮二殿を崇めればいいでしょうか?」
「ラルフ枢機卿!お願いですから!イオルス神を崇めて下さい!それに、信徒を巻き込むのは止めてあげて!」
「おい!リョージ!戦おうぜ!このコージモの剣でよ!」
「王国騎士団長となんて戦いませんからね!その剣で満足して下さい!」
「リョージよ。儂にはなにもないのか?」
「ハーロルト公には果物を使った酒を用意しました。おつまみも色々と用意しましたので、楽しんでください!」
リョージの屋敷に集まったマルセル王や重鎮達にお年賀を渡すと、それぞれから様々な反応が返ってきたのをツッコみながら接待を続ける亮二だった。ちなみに、年始の行事が気に入ったマルセル王によって、年明けは祝日となり王家から酒や食料が王都の住民へも振舞われるようになるのだった。
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「なるほど。世話になった年上にはお年賀を渡すのが、リョージの国では一般的なんだな?」
「そうなんだよ!だからマルコにもお世話になってるから渡さないと」
屋敷でくつろぎながら酒を飲んでいたマルコの元にやって来た亮二から挨拶を受け、お年賀を受け取ったマルコは嬉しそうにしていた。
「開けてもいいか?」
「もちろん!マルコを思いながら作ったから喜んでくれると思ってるんだよ。もうすぐ産まれてくる子供のための服と知育玩具だろ。それに奥さんの滋養強壮に俺が開発した栄養剤だろ!後はベビーバスに綺麗なタオルなんかも用意したぞ」
「お、おう。有難うな。リョージにそこまで気を使ってもらうと気恥ずかしいな」
大きな箱でお年賀を受け取ったマルコは気恥ずかしそうに亮二にお礼を言うと、妻のナターシャと共に箱を開けて中を確認した。ナターシャは中に入っていた子供用の服やタオルを嬉しそうに見ていたが、特にベビーバスを気に入ったようで亮二に何度もお礼を伝えるのだった。
「このベビーバスってのは高いんじゃないのか?」
「気にするなよ!ちょっと【火】属性の魔石を埋め込めば赤ちゃんの適温になるように設定した魔道具なだけだから」
「おい。これはなんだ?」
気楽な感じで答える亮二にマルコは感動の面持ちでベビーバスを眺めると、箱の中に残っている知育玩具を取り出して固まった表情のまま質問すると、満面の笑みを浮かべた亮二から説明が返ってくるのだった。。
「あぁ!やっと気付いてくれた。これは生まれてくるマルコの子供に英才教育を施すために必要な道具なんだよ。名付けて!ツッコミ養成マシーン!この魔道具に小型版のハリセンでツッコミを入れると『痛ぃ!』と叫ぶ人形なんだよ。これで世襲制のツッコミ職を早急に極めてくれれば、マルコの二つ名も襲名出来…痛ぃ!なにすんだよ!俺がせっかく金貨20枚も注ぎ込んで開発し…痛ぃ!痛ぃ!ハリセンで連続で叩くのは…痛ぃ!ってば!」
「うるせぇ!せっかく感動した俺の気持ちを返しやがれ!なんだよ!世襲制のツッコミ職ってのは!俺は子供にまでリョージのツッコミを担当させる気はないぞ!」
アイテムボックスからミスリルのハリセンを取りだして亮二を叩きながらツッコミを入れたマルコと、「喜ぶと思ったのに!」と逃げ回りながら叫ぶ亮二達を見ながらナターシャは「仲が良いわよね」とお腹の赤ちゃんに笑顔で話しかけるのだった。
最初はマルコとの話を書きたかっただけなのに4000文字を超えるとは思いませんでした…。