表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/435

208話 自領訪問7 -殺陣が始まりますね-

殺陣は心が踊りますね。

「うらぁ!」


 男が振り下ろした剣を亮二は打ち払うと、軽くバックステップをして鼻歌を歌い始めた。


「ふ~んふんふん、ふふふ、ふふふ、ふ~んふんふ~ん。って感じだよね!」


「ふざけるんじゃねえ!やっちまえ!」


 亮二が鼻歌を口ずさみ始めたのを聞いた一同は怒りが頂点になり、亮二の周りを取り囲むと1人が斬りかかってきた。迫りくる剣を躱して懐に入り込んだ亮二は、膝蹴りを鳩尾に叩き込んで斬りかかってきた男を悶絶させると、そのまま包囲網を飛び出して振り返りざまに後頭部に一撃を入れて気絶させた。


「おい!相手は“ドリュグルの英雄”を騙る偽物じゃねえか!さっさと囲んでケリを付けるぞ!」


「そんな簡単に囲まれるわけ無いだろ!【雷】属性三重掛け!」


 リーダー格の男の声で再び包囲網を築こうとした男達を嘲笑うかのように、亮二は“ミスリルの剣”に【雷】属性を三重で付与するのと同時に“ファイアアロー”を3連で撃ち出した。


 男達は剣だけで対応が出来ると踏んで包囲網を作ろとしていたが、亮二が詠唱無しで魔法を唱えた事で混乱状態に陥るのだった。


 ◇□◇□◇□


「隙あり!」


 亮二の3連“ファイアアロー”で統率が取れなくなった男達に大きな隙ができたのを確認すると、亮二は端にいた男の剣を刀身の半ばくらいで切断した。


 驚愕の視線が折れた剣に集中した瞬間に、別の男に威力を落とした“アースボール”をぶつけて昏倒させると、刀身を折られた男に対して【雷】属性をまとわせた拳で殴りつけて気絶させた。縦横無尽に動き回る亮二を見て、ブラートが男たちに向かって怒声を発した。


「ええい!なにをしている!お前達は武闘派じゃないのか!散々偉そうに言って高い金を払わせながら、子供相手になにを手こずっている!」


 リーダー格の男は離れた場所で叫んでいるブラートを睨みつけて舌打ちすると、部下に向かって指示を飛ばした。


「おい!取り敢えず2人でかかれ!魔法を撃たす暇を与えるな!子供と思って油断するんじゃねえ!あと、剣に属性付与をしているからまともに剣で受けるな!ロッソのように剣を叩き折られるぞ!武闘派と言われた俺達の底力を見せてやれ」


「やるね。さすがに武闘派って言うだけはある。的確な指示だと思うよ。俺が相手じゃなかったらね!」


 リーダー格の男に賛辞を送ると、亮二は頭上に“ウォーターボール”を停止状態で5つ作ると、背後に回ろうとしていた男達に向かって撃ち放った。


「ぎゃあ!」「ぐっ!」「なっ!」突然現れた“ウォーターボール”が自分達に向かって飛んできた男達は、直撃する者や直撃は避けたが、痛みで身動きができない者などで混乱状態になった。亮二は背後を確認する事なくリーダー格の男の左右に居た男達に“ライトニングニードル”を四肢にぶつけて行動力を奪って叫んだ。


「これで、お前だけになったぞ!ブラートの為に忠誠を尽くすのか?」


「いや、ブラートなんてどうでもいい。確認だが、お前は本当に“ドリュグルの英雄”のリョージ=ウチノ伯爵だよな?」


「ああ、そうだよ。そう言ってるだろ」


 亮二の言葉にリーダー格の男は大笑いをすると、まだ、気絶していないが動けない部下に向かって話しかけた。


「お前らは、逃げるか投降しろ。俺は最後の華を咲かせる為に"ドリュグルの英雄"と戦う!」


「その心意気やよし!"ドリュグルの英雄"リョージが受けて立つ!それと、お前の名前は?」


 リーダー格の男が剣を構えて亮二に向き合い静かに「ビトール」と答えた。亮二は展開していた魔法を全てキャンセルして、剣を正眼に構えて「来い!ビトール」と叫ぶと、ビトールは満面の笑みで剣を上段から振り下ろした。


「おぉ!鋭い一撃だな。武闘派に嘘はないな!」


 亮二が笑顔で回避したのを確認したビトールは、反撃を恐れない勢いで間合いを詰めて横薙ぎの一撃を放った。ビトールの横薙ぎの一撃を亮二は"ミスリルの剣"で受け止め、手首を使って剣を絡め取るように動かしたが、一瞬早くビトールは剣を引いて態勢を整えようとした。


「それだけの強さがあるのに、勿体無い人生を送ってるな!」


 亮二は相手が体勢を整える暇を許さず間合いを詰めると、ビトールの剣を叩き落とそうとした。それに対してビトールは剣から手を放して虚を付かれた亮二の体勢を崩すと、強烈な蹴りを放つのだった。


 ◇□◇□◇□


 一進一退の攻防を繰り広げながらも、ビトールは亮二には勝てないことが明確に分かってきた。若かりし頃に頂点を極めようと学んできた剣術も、剣術を極める事が出来ないと悟った後に冒険者となって培った経験も、一つの失敗でパーティーが壊滅した後に裏稼業へと手を染めて学んだ(ずる)さも。目の前で剣を振るっている“ドリュグルの英雄”には届かなかった。


「ちくしょう!なんで俺はお前みたいに英雄になれなかったんだよ!なんで、お前だけ全てを持ってるんだよ!俺は!俺は!」


 ビトールは叫びながら【火】属性を剣に付与すると、最後の勝負を決める為に体を回転させながら下から(すく)い上げるように亮二に向かって斬り上げた。亮二はビトールの下からの攻撃に【氷】属性付与をした“ミスリルの剣”で受け止めると、そのまま剣を弾き飛ばして喉元に剣先を突き付けた。


「はっ!俺の冒険者時代の最高の技でも、かすりもしないのかよ。さすがは“ドリュグルの英雄”だな」


「いや、ビトールもよくやったぞ。俺が今まで戦った中で一番苦戦したかもな。ドラゴンを除いてだけど」


 亮二からドラゴンを除くと最高の相手だったと言われたビトールは、嬉しそうな顔をすると覚悟を決めたかのように膝を付いて頭を垂れて「止めを」と亮二に伝えるのだった。


「ビトール。お前は俺に負けたってことだよな?」


「ああ、“ドリュグルの英雄”に『苦戦した』と言わせたのを土産にあの世に行くさ」


 すっきりとした表情で答えたビトールは亮二を見て首を傾げた。亮二はすでに“ミスリルの剣”をストレージに収納しており、跪いているビトールと目線を合わせてなにかを考えているからである。ビトールが怪訝な表情で質問しようとするのを片手で制すると、ストレージから剣を取り出して「1回生まれ変わってこい」と告げて上段から大きく剣を振り下ろすのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ