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閑話 -クロの楽しい日常 前編だそうですね-

ちょっと、書きたくなったので。本筋から外れていますが、たまには良いですよね?


思ったよりも長くなったので前後編に分けます。

 私の名前はクロ。今日もリョージ様にしがみついている。最初は嫌がっているように感じたけど、最近は当たり前になったのか、しがみついていていても気にせずに仕事や作業をされている。だからしがみつき放題で物凄く幸せ。私はリョージ様と出会うまでは諜報活動ばかりだったから、楽しい事はひとつもなかった。でも、リョージ様と出会ってからは本当に毎日が楽しい。その中でリョージ様と出会ってから学院での楽しい思い出を話したいと思う。


 ◇□◇□◇□


「今日は学院に行くけど一緒に来る?」


 リョージ様が振り返りながら聞いてきた。私がこくんと頷くと、リョージ様は苦笑いしながら馬車の手配をして、私を連れて学院にやってきた。


「かなり込み入った話をするけど大丈夫?暇じゃない?」


 馬車の中でリョージ様が心配そうに聞いてきたが、私が「大丈夫」と答えると「そっか」と呟いて御者に学院に向かうように伝えていた。馬車の中ではリョージ様は暇なのか、アイテムボックスから“ミスリル鉱石”を取り出すと、粘土のように捏ねて何かを作っているようだった。


 相変わらずリョージ様は非常識。“ミスリル鉱石”を手で捏ねる人なんて今まで見た事がない。これはハーロルト公爵に報告しておこう。


 しばらく楽しそうに作業をしているリョージ様を眺めていると「出来た!クロの感想を聞かせて」と私に手渡してくれた。手の中を見ると、可愛いウサギと私がいた。


「これは?」と思わず質問をした私にリョージ様は嬉しそうに説明を始めてくれた。


「これは、“ミスリル鉱石”を加工して作った像だよ。試しにウサギを作ってみたら、思ってたより上手くできたから、クロを作ってみたんだ。気に入ってくれてら嬉しいな」


 え?今の台詞だと私が貰ってもいいのかな?悩みながらリョージ様を見ていると、困った顔でこちらを見ていた。


「ごめん。気に入らなかったよね。クロはもっと可愛いもんな」


 どうやら、私が気に入らないと思ったみたい。私が慌てて「有難う」と伝えると嬉しそう「どういたしまして」と笑顔になってくれた。それにしても「可愛い」と普通に言ってくるリョージ様は女たらしの天才だと思う。


 リョージ様が“ミスリル鉱石”を手で粘土のように加工できる事は内緒にしておこう。


 ◇□◇□◇□


 学院についたリョージ様は脇目も振らずに学院長室に向かうとノックをして、中からシャルロッタ学院長が出てくるのを待っていた。扉が開くと、かなり疲れ気味のシャルロッタが扉を開けて私達を中に案内しながら話し掛けてきた。


「今日はバタバタされていると聞いていましたが、こちらに来て大丈夫だったのですか?」


「明日にしますと言っておきながら急に来てしまってすいません。ちなみに学院長はお腹空いてませんか?よろしければ食事しながら打ち合わせをしましょう。俺の国ではディナーミーティングって言って食事しながら打ち合わせをすることがあります」


 リョージ様がシャルロッタの話に、謝りながら料理と取り出し始めた。謝る必要なんて無いのに。リョージ様は、いつも忙しくしている。そんな私の気持ちを余所にリョージ様が料理を並べ始めた。え?料理?私が目を丸くしながら眺めていると机と椅子を魔法で創りだして、その上に料理を並べ始めたのだ。本当にどれも美味しそう。リョージ様が持っているアイテムボックスの凄い所は、収納している間は時間が止まるところ。今、出てきた料理も湯気が上がっていて本当に美味しそう。


「リョージ君の妹みたいですね」


 リョージ様が料理の準備をしているので、私は邪魔にならないように椅子に座って待っているとシャルロッタが微笑ましそうに、こっちを見ながら話し掛けてきた。失礼な!私はリョージ様の嫁候補。私が心外なのを前面に出して抗議すると、なぜかリョージ様が驚いていた。お父さんから説明を受けてるはずなのに変なリョージ様。


 ◇□◇□◇□


「と、取り敢えずクロの話は置いといて、学院の話をしましょうか。家に帰ったらカレナリエンとメルタになんて説明しよう」


 私の言葉にリョージ様が頭を抱えて困った顔をしていた。ここは内助の功で「大丈夫。私が付いてる。リョージ様は安心すればいい」と伝えたのに、「それが一番の問題の種なんだけどね…」とリョージ様は困った顔をしていた。そんな様子を見ていたシャルロッタが嬉しそうに「私も立候補しようかしら」なんて話に乗ってくるから「学院長はライナルト主任教授を狙っているのは把握済み」と正義の鉄槌の言葉を伝えると、急にあたふたとしだした。私は持っているシャルロッタがライナルト主任教授を狙っている情報を立て続けに話し出すと「もう、いいです。降参です」と言ってきた。やっぱり正義は必ず勝つのだと思う。


◇□◇□◇□


「じ、じゃあ、話が進まないので打ち合わせをしましょう。リョージ君が提案してくれている3年制度に移行するタイミングについてですが…」


 私の正義の鉄拳から逃げるようにシャルロッタが学院の今後について話をし始めた。リョージ様もそれに乗って真面目な話をしだした。私はリョージ様から預かっている、お菓子専用のアイテムボックスから色々なお菓子を出して食べていたが、さすがにお腹が膨れてきたので「お腹もいっぱいで暇だから散歩してくる」と伝えると学院長室から抜けだした。


 もっとお菓子を食べるために散歩をしていると、リョージ様の教室にたどり着いた。なにげに中を覗いてみると、女の子が溜息を吐きながら教科書をめくっていた。私のリョージ様交友関係帳では、あの子の名前はルシアのはず。リョージ様の嫁候補になるかもしれないから早目に牽制しといたほうが良い。私が無警戒を装ってルシアに近付くと、彼女はビックリした顔で私に話し掛けてきた。


「ねえ。どっから来たの?お父さんとお母さんは?迷子かな?」


 私の目線に合わせて優しく話し掛けてきたのは高評価。さすがはリョージ様の嫁候補補欠。私はルシアを油断させるためにアイテムボックスからクッキーを取り出すと、手渡しながら「さっきの溜息はなに?」と聞いた。お菓子で心を開かせる壮大な作戦!


 案の定、ルシアはクッキーを嬉しそうに受け取って、私の頭を撫でるとクッキーを食べながらため息の理由を話してくれた。最近、気になる男の子が居るが、その子と会うと高飛車な言い方になってしまうらしい。良かった。リョージ様じゃないみたい。誰が気になると直接言わなかったが「学院を卒業したらリョージ君の所で働く」なんてマテオしか居ない。


「どうしたら良いと思う?素直になりたいな。って、私はなんで小さな子供にこんな事を話してるんだろう」


 ルシアが苦笑しながら呟いていた。私のクッキー作戦で見事に敗北したルシアに「私に任せて」と胸を叩いて手助けをする事を伝えたのに、ルシアは「ありがとうね」と真剣に取り合ってくれない。どうしようかと悩んでいると、ちょうどマテオが教室に入ってきた。


「やあ、ルシア。どうしたの、その子供?ルシアの妹さん?」


 私がルシアの妹と勘違いしているマテオがルシアに質問をしていた。ルシアは、さっきまでマテオの話しで盛り上がっていたので、本人が突然に登場したのでパニックなってるみたいで「そうよ!悪い?」と意味の分からない事を言っていた。


「い、いや。わ、悪いとかじゃなく…「お姉ちゃんが好きって言っていた人ってこの人だよね?」」


 ルシアの言葉に言い訳を発しようとしたマテオに被せて私は大きな声で言った。私の言葉を聞いてルシアが「ちょ、ちょっと!」と叫ぼうとしたが、「この人の事が好きだって溜息を吐いていた」と重ねて告げるとマテオが慌てたように「本当に?」と聞いていた。


「そうよ!悪い!あんたはどうなのよ!」


 あ、ルシアが開き直った。そんなルシアの様子を見ていたマテオはあたふたしてたけど、覚悟を決めたようにルシアに向き合うと「僕も君の事好きだよ」と熱い口調で言っていた。見つめ合っている2人は私の事は目に入らないみたいだから、このまま気配を消して教室から出ていこうっと。

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