199話 学院の卒業式 -学院から巣立ちますね-
とうとう学院の卒業式になりました。
「では、これより、ドリュグルの英雄、牛人の天敵、学院の麒麟児、調理に目覚めし者、きのこを極めし者、試練の洞窟の解放者、初級探索者ダンジョンの攻略者、建国王アマデオ=サンドストレムの好敵手、ぷりんとアイスの伝導者、食後のでざーとの探求者、学院を正道に導く者、神に祝福された者、断罪者、女性の天敵すいーつ侯爵、エレナ姫の懐すいーつであるリョージ=ウチノ伯爵の卒業式を行います」
「うぉい! なんで最初に二つ名を入れたの! それと、よく一気に言えたね!」
大講堂に集まった王立魔術学院の生徒及び講師に教授、来賓として呼ばれたハーロルト公爵にエレナ姫や宮廷魔術師ヘルマンやラルフ枢機卿やユーハン伯爵やマルコ等が並ぶ中、大きな声で読み上げられた二つ名の一覧に亮二がツッコミを入れるとあちこちから笑いが起こった。壇上での締まらないやり取りの後にシャルロッタ学院長から卒業証書を渡され、盛大な拍手を受けた亮二は受け取った証書を高く掲げると一同に向かって語りかけた。
「今日は俺1人のために卒業式をしてくれて有難う! さっき、学院長に確認したら特別クラスの生徒は俺とオルランドとエリーザベトさんが抜けてネイハムが入って8人で、一般クラスは色々あって108人になったと聞いてる。学院の改革で2年制から3年制に変わるけど、全員が進級するとも聞いた。皆はもう一年勉強する中で、俺が開発した属性覚醒で新たな属性や詠唱短縮を身に付けて欲しい! そして『俺達の代から学院は生まれ変わった』とサンドストレム王国中に宣伝してくれ! 気が向いたら俺が治める事になった伯爵領にも訪れてくれ! 優秀な成績で卒業したら高給を払ってでも雇うぞ! もちろん、休暇中に来てくれても歓迎するからな!」
亮二が感謝の言葉の後に「いつでも来てくれ」と発言すると一同から再び盛大な拍手と共に「よし! 首席で卒業してリョージ伯爵に雇ってもらうぞ!」「私も論文を発表してリョージさんと共同研究をするわ」「俺は【雷】属性を覚醒させて剣の腕を磨いて雇ってもらうぞ!」「私は属性覚醒と詠唱短縮を身に付けて魔術師として雇ってもらうわ!」などと大歓声が上がった。亮二はやる気に満ちている生徒達と、苦笑を浮かべている講師や教授陣を見ながら嬉しそうにすると、さらに話を続けた。
「今日の卒業式のお礼に料理を用意した。皆、修練場に料理や飲み物を用意しているから卒業式が終わったら集合だ! 思う存分に飲み食いをしてくれ! もちろん、スイーツも用意してるぞ!」
亮二の声に今度は大講堂が震えるほどの大歓声が上がり、何気に来賓を見るとエレナが控えめにガッツポーズをしており、ハーロルトなどの来賓達はその様子を見て苦笑をするのだった。
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「それにしても、よくこれだけの料理を準備出来たな」
「まあね。俺の人脈があればこれくらいは簡単に用意できるんだよ。マルコ君。今日は酒も用意してるから思う存分に飲んでくれ! ユーハン伯も本日は有り難うございます。伯爵のお陰で領地持ちになる事が出来ました。これも騎士として取り立てて頂いたからだと思っています。駐屯地はお返ししますが、何か有りましたらいつでも呼んで頂ければ馳せ参じますの……。痛ぃ!」
「なんで、駐屯地を返すつもりでいるんだよ! お前が作った街だろうが! アウレリオが『今まで押し付けられた業務を金額に換算して請求してもいいですか?』って死にそうな目で言っていたぞ。これで返すなんて知ったら地の果てまでも追いかけて請求されるぞ」
「なんだよ! まだボケてないだろ! マルコのツッコミは天下無双のツッコミなんだから、簡単に伝家のハリセンを抜いたら……。痛ぃ! 最後まで喋ってないだ……。痛ぃ! ちょっと待っ……。痛ぃ!」
「うるせえよ! なにが天下無双のツッコミだよ! 伝家のハリセンだよ! マルセル王からツッコミ担当の勲章を貰ったが、お前が諸悪の根源だからな!」
「酷い! 王都で素敵なマルコの二つ名が出来たじゃないか! 王を含むサンドストレム王国全体のツッコミ担当だぞ! 俺が流したんだけどね! 今ここで明かされる衝撃の秘密! どうだマルコ……。痛ぃ! ちょ……。痛ぃ! 待って話を最後まで……。痛ぃ! 痛ぃ! 痛いって!」
「お前か! あの二つ名を広めたのは! ドリュグルで門番してると『王を含むサンドストレム王国全体のツッコミ担当のマルコさんですよね! 俺! 尊敬してます!』って冒険者から言われるようになったんだぞ! 初めて言われた時は記憶が無くなるまで飲んだわ!」
亮二とマルコの掛け合い漫才を「おぉ、あれがツッコミ担当の実力」と生徒や講師、教授達は感動の面持ちで、ハーロルトを始めとした来賓は苦笑しながら眺めているのだった。
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「ふぅ、酷い目にあった。エレナ姫はどこに?」
「あちらで一部の女子生徒達とすいーつに関して熱い討論をされてますよ」
「ぶれないね。エレナ姫は。ちなみに、さっきからミスリルの服をベタベタと触っているラルフ枢機卿は離してもらっていいですかね?」
「まあまあ。もうすぐ王都からリョージ殿が居なくなるので触り納めをしとかないと!」
「触り納めってなんですか! じゃあ、これは俺が暇つぶしに作ったミスリルのイオルス像です。これを差し上げますので離して下さい」
「ほ、本当にいいのですか? こんな物をもらったら私はどうすれば? おぉ! ミスリル装備も忠実に再現されている! もう! もう! 私はリョージ殿に人生を捧げたら良いですか?」
「捧げないで下さい! 要りませんから! 枢機卿として信徒を導いて下さい!」
「私には何も無いのですね……」
「ヘルマン様! ヘルマン様には俺が作ったポーションとマナポーションを10個ずつと秘薬を1個差し上げますから! 地面に突っ伏すのはやめて下さい!」
「おぉ……。わ、私は生涯の忠誠をリョージ伯爵に捧げれば良いですか?」
「良くないです! 忠誠はマルセル王に捧げてください! そこ! ハーロルト公! そんな目をしても拡張の部屋は上げませんからね!」
「ちっ。リョージ殿が儂にはプレゼントを渡さなかったと噂を流してやるかの」
「さらっと恐ろしい事を言わないで下さい! なにか考えて送りますから!」
「催促したみたいで悪いの」
「安心して下さい。来賓の方達と学院長や教授や講師たちにもプレゼントを用意しますから……」
気が付けば物凄い量のプレゼントになってしまいました…。